HTC NIPPONは7日、同社のヘッドマウントディスプレイ「HTC Vive」の店頭販売を全国36店舗で開始した。正規販売パートナーはドスパラ、ツクモ、ユニットコムの3社で、販売店舗には店頭に体験ブースを設ける。

同日開催された発表会では、HTC CORPORATION北アジア統括代表取締役のジャック・トン氏やVR新技術部門担当VPのレイモンド・パオ氏、HTC NIPPON代表取締役社長の玉野浩氏ら関係者が登壇し、「HTC Vive」の特徴や販売戦略を語った。

HTC Vive

「HTC Vive」は頭部にヘルメットのように装着するHMDで、頭のモーションをトラッキングするセンサーを搭載し、頭の動きに沿った映像を表示。合わせて、両手に持つ2つのコントローラでVR映像を操作できるVR HMDだ。ディスプレイ解像度は2,160×1,200ドット(両目)、90fps。

VR動画の再生処理はPC側で行う。PCの推奨スペックは、グラフィックスがNVIDIA GeForce GTX 970 / AMD Radeon R9 290と同等クラス以上、プロセッサがIntel i5-4590 / AMD FX 8350と同等クラス以上、メモリが4GB以上と、それなりに高いスペックが必要。国内では2016年6月1日にVive専用の日本語Webサイトが開設され、DEGICAによるWeb販売が開始されていた。

HTC NIPPON代表取締役社長の玉野浩氏。「HTC Vive」には無限の可能性があり、引いては無限のビジネスチャンスがある」とVR市場の可能性を強調した

今回開始した店頭販売チャネルは、スタート時点ではドスパラ、ツクモ、ユニットコムの3社が担当する。日本におけるVIVEの販売戦略を紹介した玉野氏は、今回の店頭販売にあたり店舗で体験スペースを用意することを重視したという。「VRという言葉が浸透してきている。言葉は知っているが、試したことがない人は多く、体験スペースを用意しないと、安心して購入できないだろう」と、その背景を述べた。なお、販売する店舗は今後拡大していく予定。

コンシューマ向け販売の考え方

販売チャネル

販売時点の店舗

販売開始時点の店舗数

店頭での体験スペースは混み合うことも予想されるため、ViveのWeb販売を担当しているDEGICAは、体験スペースを提供する店舗の検索システム(www.vivedemo.jp)を新提供する。名前とメールアドレス、行きたい体験スペースの場所をプルダウンで選択することで、予約が空いている日付・時間が自動的に表示され、体験スペースを予約することができる。

日本のオフィシャルパートナーは、業務提携がDEGICA、プロセッサ・パートナーがエヌビディア・ジャパン、日本AMDの2社。開発ツール・パートナーがエピックゲームズ ジャパン、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンの2社。正規販売パートナーがドスパラ、ツクモ、ユニットコムの3社となる。コンテンツは、現在250以上のVive用ゲームタイトルが公開されているSteam上で提供していく。

販売価格は「最後まで調整した」として、希望小売価格99,800円(税別)で発売する。従来販売していたWebサイトの価格は107,800円(税込)となり、十数円ほど安くなるなる見込み。

VR検索予約システム

Viveの価格

HTC CORPORATION北アジア統括代表取締役のジャック・トン氏は、Viveは無限にアイデアが膨らませられ、「現実と仮想世界の境界をなくす製品」だと位置付ける。例えば車の販売ではVRで乗車し内装を確認したり、家具の販売では購入したい家具の素材や配置をVRで体験でき、医療では手術用アプリを使い脳内の血管や神経を見られる。発表会では、「自動車や建築、家具、デザイン、医療など、さまざまな分野で活用できる」と、ビジネス用途を紹介する一方で、Viveはコンシューマ向けのものでもあると日本市場に言及。日本はゲーム市場のリーダー的存在であり、VR市場をデバイスメーカー、コンテンツメーカーらによる「エコシステム」で強力に推進すると強調した。

HTC CORPORATION北アジア統括代表取締役のジャック・トン氏

HTC Viveの三角形マークの頂点にはそれぞれ意味があり、ロゴの中央には「新たなアイデアが生まれてくる」という卵が象徴的にデザインされている

HTC CORPORATION VR新技術部門担当VPのレイモンド・パオ氏は、「HTC Vive」の特徴やエコシステムを紹介。「HTV Vive」を使うことで、「教育が変わる。月や地球の関係もより分りやすくなる。小売店も変わる。ショッピングの体験が、写真だけでなく、実物と同じものを見ることになる。旅行も変わり、デザインや建築も変わるだろう」と具体的なメリットを紹介。映画やライブ、イベントにも使われていく市場の広がりを想定。

また、エコシステムとしてVRのスタートアップを多角的に支援するプログラム「Vive X」や、VR業界の成長を促進するスタートアップ向けの投資プログラムVRVCA(バーチャル・リアリティ・ベンチャーキャピタル・アライアンス)などを紹介。「VRの新しい世界にぜひ参加してください」と締めくくった。

HTC CORPORATION VR新技術部門担当VPのレイモンド・パオ氏

中国で行った調査によると、コンシューマにおけるVR利用法は男女差があった。男性ではゲーム、360度映像、360度映像ライブ映像。女性では360度映像、ゲーム、教育コンテンツという結果に

Viveを活用してVR体験を提供する、ナムコのエンターテインメント施設「VR ZONE Project i Can」の小山順一朗氏(コヤ所長)は、「装甲騎兵ボトムズ」をモチーフとしたロボットバトル「装甲騎兵ボトムズ バトリング野郎」、約2,000人の観客を前にしたステージ体験を楽しめる「MAX VOLTAGE」という2種類の新アクティビティを追加したことを発表

大日本印刷(DNP) デジタルアーカイブビジネス開発部長の久永一郎氏。大日本印刷では美術品などのデジタルアーカイブを進めているが、フランス国立図書館でデジタルアーカイブした地球儀・天球儀のデータが興味深く、天球儀の中に頭を入れ、昔の人が想像していた360度の星の配置を3Dデジタルデータで再現、Viveで閲覧できるコンテンツを作成したという

HTCおよびパートナー関係者

VRで視聴している映像は、基本的に他の人とは共有できないものだが、今回会場には、VRの世界を撮影できる"Mixed Realityシステム"を展示。ブルーバックで覆われたブース内で「HTC Vive」を利用し、実際に体験している映像と、利用者を撮影した映像をリアルタイムで合成することで、VRの世界を客観的に見られるようになっていた

会場内ではVR体験ブースが設けられていた。写真左はパナソニックの乗馬フィットネス機器と連動したVRで、竜の背中に乗って飛んでくる悪魔を倒すという面白いVR。実際に試してみたが、竜の背に乗っている感覚と乗馬フィットネスの揺れがマッチした、運動にもなりそうなVR体験だった。自分でバランスを取るつもりで揺れていたら、終了後に「だいぶ揺れてましたね」との一言が