東京にエンターテインメントを
チケット販売という"流通"を担うのはイープラス。共催というかたちで名を連ねる。舛添要一元都知事が「ブロードウェイのような劇場街を東京に作りたい」と表明したことは記憶に新しいが、イープラス 取締役副社長の倉見尚也氏は「ニューヨークを訪れる外国人観光客の目的は、ほとんどがブロードウェイでの演劇鑑賞。その経済効果は年間1兆円ともいわれている。現在、東京を訪れる外国人観光客は食事や買い物目的が多く、演劇鑑賞などのエンターテインメント目的はきわめて少ない」と指摘する。
本稿冒頭でインバウンド消費がモノからコトへ移行している、という視点を紹介したが、明治座がSAKURAという"コト"で狙うのはファン作り、さらにはリピーターの獲得である。
ファン作りはともかく、リピーターの獲得に向けてキラーコンテンツとなりうると考えているのがアニメだ。SAKURAでは、サクラ役をオーディションで決定し、「2.5次元」コンテンツとする。
2.5次元とは、2次元と3次元の間のこと。紙面や画面上のマンガやアニメといった2次元コンテンツを原作とし、実在の人物が演じるミュージカルといった3次元へ持ち込んだ形式のものだ。SAKURAの主人公であるサクラも、アニメとリアルが融合したかたちで登場する。
最近では『KING OF PRISM by PrettyRhythm』、通称「キンプリ」の応援上映が話題だが、SAKURAも観客参加型を謳う。参加型のプログラムが受け入れられている現状を鑑みると、日本の若い層へもアプローチできるかもしれない。
外国人の反応は?
内覧会でSAKURAのダイジェスト版を筆者も観てきたが、日本の四季折々の風景を、音楽とダンス、プロジェクションマッピングを駆使して表現していた。日本に生まれ育った筆者からすると、少し"お腹いっぱい"な感じもしたが、琴や和太鼓、篳篥(ひちりき)の生演奏は臨場感たっぷり。外国人の参加者数名に感想を聞いたところ、「着物や浴衣、忍者のコスチュームなど衣装がかっこいい」「ブレイクダンスやプロジェクションマッピングといった新しい要素を採り入れているのがおもしろい」「桜吹雪は自国にない演出で、驚いたけど楽しかった」と総じて好評だった。一方で、長いこと日本に滞在している外国人参加者は「日本の伝統芸能はゆっくりしたテンポで魅せるものが多い。今回のSAKURAは少しスピード感がありすぎたかも」と、また違った感想を持ったようだ。
日本といえば桜、というイメージは根強いらしく、桜が咲いていない時期にあたる2016年9月7日から2017年3月31日という公演日程はちょうどいいかもしれない(2017年度以降の予定については調整中とのこと)。
相乗効果を狙う
三田氏によれば、今後は旅行代理店などを通じて現地でもPRしていく。そのほかにも、国内の鉄道会社などと協業していく話も出ているそうだ。SAKURAが軌道に乗れば、開演前に近くで食事をする観光客なども増え、地域一帯の活性化につながる。
空白の夜間市場に挑戦する明治座。他社に先がけて成功するか、まずは7月12日正午(国内外問わず)のチケット予約開始に注目したい。