なぜ「夜」だったのか

明治座があるのは東京都中央区。日本橋駅まで約2kmの距離はあるものの、日本橋エリアに属する。日本橋エリアといえば、日本橋三井タワーやコレド日本橋、コレド室町など三井不動産が意欲的に再開発を行う地域だ。

日本橋エリアに限った話ではないが、実は夜間に外国人観光客が楽しめるような取り組みはまだまだ少ない。明治座 代表取締役社長 三田芳裕氏は「20時を過ぎると、日本橋の一帯は人通りが寂しくなってしまう」と話す。

明治座はもともと「夜の時間帯を使って新しい取り組みをしたい」と構想していた。というのも、「来場者は50代以上のシニア層が多い」「団体客と個人客の割合がおよそ7:3である」「ひとつの興行の回転数が落ちてきている」といった事情があるから。そこで、20時30分以降の「第3部」を行い、インバウンドを夜の時間帯に呼び込もうという作戦へ打って出た。

公演自体は9月7日からスタートするが、それに先がけて6月に内覧会を開催した。前列左から2番めがイープラス 取締役副社長の倉見尚也氏、3番めが明治座 代表取締役社長 三田芳裕氏、4番めが三井不動産 日本橋街づくり推進部長 上田隆康氏

エグゼクティブプロデューサーを務めた福原秀己氏

そのコンテンツとして今回お披露目されたのがSAKURAだ。「日本橋ナイトプログラム」と表現していることからもわかるように、日本橋から発信する夜間市場活性化のための催しとなる。伝統的な"日本らしさ"を詰め込みつつ、アニメやプロジェクションマッピングの手法を用いた観客参加型のプログラム。内覧会に参加した三田氏は「インバウンドだけでなく、日本の若い層を呼び込むキッカケになったら」と期待を寄せる。

エグゼクティブプロデューサーを務めた福原秀己氏は、クールジャパン戦略推進会議有識者メンバーでもある。「昼の時間帯はもはやトレードオフの状態。一方で、夜の時間帯は+αにしかならない。東京を観光都市にするには、夜も楽しめるショーが必要だ。SAKURA以外にも"夜間市場"を盛り上げてくれる取り組みが今後出てくることを期待している」と福原氏はいう。