グッジョバ!!開業効果で来園者数は前年比3割増

新エリア開業前は値上げの影響を考えて「ドキドキした」と語る曽原氏だが、グッジョバ!!開業後の客入りについては上々の手応えを得ているようだ。2016年3月18日の開業以来、来園者数は前年比3割増で推移。よみうりランドは17%増を見込んでいたというから、出足は好調とみてよいだろう。ゴールデンウィークの客入りについては、年によって平日の数が違うので単純な比較は難しいが、4月29日から5月8日までの10日間を切り出して比べると、今年の来園者数は前年比で46%の増加になったという。

新エリア開業の効果をみる場合、グッジョバ!!が屋内型の施設であることも見逃せないポイントだ。屋外型アトラクションが中心だったよみうりランドでは、繁忙期に雨が降ると「ゼロの数が2つ違う」(曽原氏)こともあるほど、天候が来園者数に与える影響が大きかった。グッジョバ!!を目当てとする来園者が増えれば、悪天候時の客入りが改善するという効果も期待できるのだ。

気になるのは今後の展開だが、よみうりランドは今回のグッジョバ!!を「第1期計画」と位置づけ、第2期以降の拡張にも取り組みたいと意欲をみせる。具体的な拡張計画はまだ検討段階のようだが、方向性としてはグッジョバ!!の業種を増やしていくのがメインになる模様。拡張用地については周辺の土地や、既存遊園地エリア内の組み換えで対応することになるようだ。

異業種コラボの場にもなりうるグッジョバ!!

日産自動車と日清食品。似た響きの社名を持つ両社は、今年のエイプリルフール企画として「日産焼そばU.S.O.」を製造し、CAR factoryで配布した。よみうりランドを舞台とする異業種コラボの一例だ

大幅な値上げを伴ったにも関わらず、新エリアの開業効果は順調な集客につながっている様子。モノづくりという遊園地としては異色のテーマ設定だが、グッジョバ!!開業後の客入りをみると、この方向性は現時点で来園者に受け入れられているようだ。投資回収のためにも、肝心なのは新エリアを含めて更なるリピーターを獲得し、好調な客入りを継続していくことだろう。

グッジョバ!!は、よみうりランドが民間企業と組んで様々なイベントを仕掛けられる場所でもある。よみうりランドのイベント企画に関する知見が、企業との連携でどのような取り組みに結びつくかにも注目したいところだ。グッジョバ!!を舞台に、企業間での異業種コラボレーションが進展する可能性もある。

異色のテーマ設定を可能とした「物語」不在の自由度

考えてみると、ハード面への大型投資に際してテーマ設定を行い、そのテーマを表現する施設を構築するというのは遊園地ならではのチャレンジだ。示唆に富む「物語」と、その物語に登場する有名なキャラクターを施設に落とし込めるテーマパークであれば、ある物語をコンセプトとする新エリアを整備する際、テーマを強力に打ち出す必要はない。テーマやメッセージは物語が語ってくれるからだ。物語を持たない遊園地がテーマを獲得するには、全てをゼロから作り上げる必要がある。

物語はテーマパークが持つ決定的な優位性だが、一方で発想の自由度を縛る側面もあるように感じる。物語には濃密な世界観が付いて回るため、施設に落とし込む場合には世界観を崩さないよう注意する必要があるからだ。よみうりランドによる異色のテーマ設定は、物語に縛られない遊園地ならではの決断だったのかもしれない。この挑戦が、よみうりランドの“成長物語”として結実するかどうか、今後の動向に注目したい。