KDDI(au)が次の3年間に向けた中期目標として「au経済圏の最大化」を挙げている。これはauの顧客基盤の上でさまざまなサービスを提供し、1人当たりの売上を最大化する試みだが、なぜ大手携帯電話キャリアの一角を占めるKDDIが、こうした取り組みを実施するに至ったのだろうか。

au経済圏拡大に向けたKDDIの取り組み

KDDIは5月12日、2016年3月期決算を発表した。決算内容自体は、3年連続2桁増益の好調さを示すものとなっているが、携帯電話市場を巡る環境は大きく変化しつつある。そうしたことを受けてか、KDDI代表取締役社長の田中孝司氏は、次の3年間、持続的な成長を続けるための向けた中期計画の1つとして、「au経済圏の最大化」を挙げている。

そもそもau経済圏とは何かというと、auの携帯電話を利用している顧客の基盤を活用し、その上でさまざまなサービスを提供することにより、独自の経済圏を構築する取り組みである。端末や通信といった携帯電話に関連するサービスだけでなく、生活に根差した多くのサービスやデバイスを提供することで、auユーザー1人当たりの売上を高めようというのが、au経済圏を構築する大きな狙いとなっている。

KDDIはauの顧客基盤の上で、オンラインからオフラインに至るまでさまざまなサービスを提供する「au経済圏」の拡大によって、ユーザー1人当たりの売上を高めようとしている

KDDIは、au経済圏の構築に向けた取り組みを、以前から段階を踏んで実施してきている。最初の取り組みとなるのは、固定・携帯の同時契約によって通信料が割り引かれる「auスマートバリュー」と、月額372円で有料アプリや割引クーポンの利用など、さまざまなサービスが受けられる定額制サービス「auスマートパス」の2つ。auスマートバリューの提供によって短期間での離脱を防ぎ、顧客基盤を確固なものにするとともに、auスマートパスで多彩なサービスを総合的に提供することで、有料でユーザーの付加価値を高めるサービスの基礎を作り上げたのである。

次の取り組みとなるのは、プリペイド方式の電子マネーサービス「au WALLET」による決済分野への進出だ。au WALLETはマスターカードの基盤を用いた磁気カードを使うことで、オフラインでの決済にも活用できる仕組みを整えたほか、「au WALLETポイント」との連携によって利用する上でのユーザーメリットを打ち出し、利用を加速させている。この取り組みはさらに、auショップを活用した物販サービス「au WALLET Market」へとつながっている。

そして現在auが力を入れているのは、電力や住宅ローン、保険などをまとめて提供する「auライフデザイン」だ。これまでの取り組みで、契約だけでなく決済に至るまで確固なau顧客基盤を構築したことから、次のステップとしてユーザーの生活に関連するサービスを、auの中に取り込みまとめて提供することにより、1人当たりのauサービス利用を増やして顧客単価を高めているのである。

au経済圏の拡大に向けた直近の取り組みとして注目される「auライフデザイン」。auの顧客に電力や保険、住宅ローンなどをまとめて提供する取り組みだ