米国では、長年にわたって同国で常態化していた「2年契約縛りを条件に、無料または100~200ドル程度の価格で携帯端末をバラ撒く」というビジネス手法が改められ、2016年現在では米大手携帯キャリア4社ともに「多額の販売奨励金(Subsidy)の拠出による端末割り引き」に依存しない戦略が進められている。これは、やはり長年このビジネス手法の恩恵に預かっていたAppleも例外ではなく、昨年2015年9月の「iPhone 6s/6s Plus」発表時に「iPhone Upgrade Program」を発表し、買い控えをメーカー自ら抑止する方向性を示した。そして今回、Apple Retail Storeのみで可能だった同プログラムの契約を拡大し、Apple Online Store経由での利用ができるようになった。
同件は9 to 5 Macが報じている。実際に米国のAppleのWebサイトにアクセスしてiPhoneの商品ページを参照して「Buy」ボタンを押すとメニューが表示される。購入時のモデル選択が終わると最後に支払いオプションが表示され、一括購入または毎月定額支払いによるiPhone Upgrade Programを使った購入かの選択が可能になっている。これは従来までリアル店舗であるApple Retail Storeで購入した場合にのみ選択できるオプションとして用意されていたものだが、提供開始から半年以上が経過したこのタイミングで、オンラインのApple Online Storeにおいてもオプションの1つとして選択できるようになった。
冒頭の説明のように、iPhone Upgrade Programは昨年2015年9月の「iPhone 6s/6s Plus」発表時に初めて紹介されたもので、ユーザーは「AppleCare+」に加入して毎月32.41ドル(iPhone 6s 16GBモデルの場合)を支払うだけで、1年後には新しいiPhoneを入手することが可能になる。実質的にはiPhoneの最新モデルのSIMフリー版を24カ月分割払いする販売プログラムではあるが、「2年縛りにより2年後まで端末が買い換えられない」という状況を解消してユーザーにメリットを与えつつ、2年分割払いながら1年ごとに更新タイミングがくるという形でユーザーを継続的に縛って買い換えを促していくことで、携帯キャリアでの販売奨励金終了後の端末販売台数減少を自ら克服していこうというAppleの野心的な試みでもある。
iPhone Upgrade Program発表時に同件を報じた9 to 5 Macの記事によれば、Appleとしては同プログラムを世界展開していきたい構えのようだ。実際、日本では0円販売が実質的に禁止されて端末の価格が上昇傾向にあり、国内でのシェア拡大の恩恵を最大限に受けていたAppleにとっても大きな問題となっている。すでに世界のiPhone販売台数が減少傾向に入ったことが話題となっているが、Appleの次なる一手は製品ラインナップのさらなる拡充による需要の獲得とともに、このiPhone Upgrade Program提供による既存ユーザーのつなぎ止めが主軸になっていくものと思われる。