2016年4月6日、新しいWebブラウザ「Vivaldi」が誕生した。開発したのは、「Opera」の創業者、Jon von Tetzchner氏が率いるVivaldi Technologies(ノルウェー)だ。そのvon Tetzchner氏が来日し4月25日、都内で開催したイベント「Vivaldi Reboot in Tokyo 2016 April」で挨拶をした。
von Tetzchner氏はWebの黎明期である1992年よりTelenor ResearchでWebに関与し、その3年後となる1995年にWebブラウザ「Opera(MultiTorg Opera 1.0)」を公開。以来、創業したOpera SoftwareをCEOとして率いてきた。その後、Operaの方針変換により2011年にOperaを去り、2015年1月末、新しいWebブラウザとしてVivaldiプレビュー版を発表した。そして約1年強の期間を経て、Vivaldiは2016年4月6日に「Vivaldi 1.0」として正式版が公開された。
Vivaldiを開発するに至った背景としてvon Tetzchner氏は、「Operaでの17年間は毎日楽しかったが、辞めた時には新しいブラウザの会社を作ろうとは考えていなかった。ただ何か新しいことをしようとだけ考えていた。ところが2年間で何かが変わった」と語る。
Appleの「Safari」、Microsoftの「Edge」「Internet Explorer(IE)」、Googleの「Chrome」などを挙げながら、現在のブラウザ市場は機能を簡素化し、ディストリビューション(SafariならiOSやMac OS X、ChromeならChrome OSやAndroid、EdgeやIEならWindows)で競争するトレンドが席巻していると指摘する。「これらのブラウザはユーザーのために開発しているのではない。自分が欲しがっているブラウザがないことに気がついた」という。
こうしてスタートしたVivaldiだが、「他のブラウザが灰色とすれば、Vivaldiはとてもカラフル」とvon Tetzchner氏は形容する(実際、Vivaldiでは、インタフェースの色が閲覧しているサイトと同じ色へ自動的に統一されるという機能がある)。
Vivaldiは、ユーザーの声を反映させることにフォーカスする。von Tetzchner氏は、開いている複数のタブを一つのスタックとしてまとめられる「タブスタッキング」機能や、タブ表示場所が選択できる機能、ひとつのタブを閉じた後に移行するタブが設定できる機能などを備え、カスタマイズ性があるとVivaldiの特徴を紹介した。
また、Webサイトを横に並べて表示することで作業効率を改善できる「Webパネル」機能、Webサイトからメモ、URL、スクリーンショットなどを記録できる「ノート」などを紹介した。スピードダイアルなどOperaユーザーが慣れ親しんだ機能も多くあり、パワーユーザーやOperaユーザー向けといえる。ベースはオープンソースのブラウザエンジン「Blink」を採用する。
「ユーザーはそれぞれ異なるニーズを持つ、ということに気をつけている」とvon Tetzchner氏は述べ、上記のユーザーインタフェースに加えて、操作性についてはテキストコマンドの「クイックコマンド」などキーボードメインのユーザー、マウスメインのユーザーで異なるオプションを提供し、効率的な使い方ができるよう気を配った。
このように多彩な機能を提供することは、簡素化というブラウザのトレンドに反するものとなるが、「ユーザーがブラウザベンダーにあわせるのではなく、我々はユーザーの声を大切にしている」とvon Tetzchner氏は強調する。そして、「リクエストをどう提供するかの作業は時間がかかるものだが」と付け加えた。
Vivaldiは、間もなくバージョン1.1の公開を予定しているという。モバイルについては、「最初のフォーカスはデスクトップ版をリリースすること」として、直近のリリースは予定していないが、並行して開発を進めているとした。Web技術をブラウザのUIでも利用することで、容易に実現できるとのこと。「時間は少しかかるが、リリース予定」という。
1.0のダウンロード数などは公開しなかったが、コミュニティは順調に育っており、重要な後押しとなっているようだ。毎週スナップショット版として公開するビルドは数万回のダウンロードがあり、多くのユーザーからフィードバックを得ているという。翻訳も既に50言語以上に対応しているが、全て数百人に上るボランティアベースの作業とのことだ。
von Tetzchner氏は最後に、「まだVivaldiを使ったことが無い人は、ぜひ試してみてほしい。他のブラウザとすぐに違うとわかるだろう。慣れるのに時間がかかるかもしれないが、きっと気に入っていただけると確信している」とアピールした。