ガートナージャパンは、2016年2月に実施した日本企業のクラウド・コンピューティングへの取り組みに関する調査結果を発表した。調査の結果、日本におけるクラウド・コンピューティングの全体の採用率は16.1%であり、2015年の15.8%から1.3%の微増となった。

日本におけるクラウド・コンピューティングの採用状況

この結果について、ガートナージャパンのバイスプレジデント兼最上級アナリストの亦賀忠明氏は、「クラウド・コンピューティングの採用率は2012年には10.3%であったことから、この5年間で6ポイント近く上昇しました。平均すると1年間でおよそ1ポイントの上昇であり、すなわち、日本におけるクラウドの採用スピードは、相当緩やかなものであるといえます」とコメントしている。

また、2016年の採用率がそれほど伸びていないことについて同氏は「日本では、どのクラウドを選んだらよいか、コストはどうなるか、どの業務システムをクラウドに移行できるか、セキュリティは大丈夫か、といった『基本の確認』フェーズが続いています。クラウド・コンピューティングというキーワードが世の中に登場したのは2006年ですが多くの企業はこの10年間、同様の議論を続けています」と述べている。

さらに、この状況が今後どうなるかについて亦賀氏は「2015年頃から、クラウド上では、モバイル・アプリケーション開発、IoT、機械学習、ブロックチェーン、クラウド・アクセス・セキュリティ・ブローカ(CASB)といった新しいサービスが急速に登場しつつあります。こうした新しいサービスは、デジタル・ビジネスやクラウド・ファーストの考え方を、ガートナーが提唱するバイモーダルITのモード2アプローチの中で加速させるきっかけをもたらしており、企業のクラウドに対する取り組み全般を次のステージに推し進める可能性があります。企業は、企業情報システムのクラウド化だけではなく、こうした新しいサービスの可能性とインパクトにも早期に注目すべきです」と指摘した。

なお、同調査は国内のIT部門の中でも特にITインフラストラクチャにかかわるマネージャー向けのアンケート調査を通して、日本における企業ユーザーのさまざまなITのニーズや課題を分析することを目的としており、有効回答数はいずれも515件で、日本全国の従業員数500人以上のITユーザー企業を対象にしている。