リアル人生ゲームが変えたもの
いつの日からか、大型店ばかりに足が向き、接客するのは馴染みの客ばかり。見過ごされてきた地元の商店。家電屋とはわかっていても、どんな商品が並ぶのかはわからない。入店すれば、何か買わないと申し訳ない。だったら行かないほうがいい。これが活気を失った商店街に抱く消費者の気持ちだ。
リアル人生ゲームはこうした心理的な障壁を乗り越える。強制的に店舗に立ち寄り、中を見る。何も買わなくても、どんな商品が店舗に揃っているのかがわかるようになる。これは大きな進歩だろう。イベントの実施により「イベントをきっかけに、普段使っている化粧品があることを知って、平田本町商店街で買うようになったという人もいる」(田中氏)とのことだ。
店側の意識も変わった。イベント当初は、積極的ではなかった店も、回数を重ねることで、陳列する商品にもこだわりを持たせた店舗が出てきたという。
イベント終了後もこうした効果の持続が課題となるが、田中氏は「イベント開催の1カ月前から、商店街で一定額の買い物をした場合に、仮想通貨を渡すなど、イベントに有利に働く仕組みも取り入れるなどのアイデアを取り込んでいきたい」と話す。課題は見えつつも、地元民、店舗の双方が前向きになったのは、大きく評価すべきだろう。
双六じゃだめなのか
さて、誰もが抱きそうな素朴な疑問についても触れておこう。それは「別のゲームじゃだめなのか」ということだ。たとえば、双六に人生ゲームの要素を入れれば、あまり変わらないように思える。商店街活性化のために、あえて"人生ゲーム"と銘打つ必要はなさそうだ。
しかし、田中氏は、人生ゲームの必要性を2つ挙げる。ひとつは、イベントの開催にあたって、ルールの説明が不要なことだ。人生ゲームの認知率は9割に達しており、「イベント開催にあたってルール説明をしたことがない」という。
もうひとつは、参加者が地元に限らないことだ。平田本町でのイベントで5%、出雲大社近くの神門通りおもてなし商店街で10%が遠方からの参加者。北海道、佐賀から参加する人もいるという。いずれも、リアル人生ゲームを出雲観光とセットで考えれば、「地域活性化」という意味合いからも、効果ありと見てよさそうだ。
実際、リアル人生ゲームは、地域活性化の事例として、多くの商工会議所が注目しており、田中氏には、講演依頼が多数寄せられているという。