背景3:Apple Payを本格的な収益源へと成長させる

iPhone SEは、HD対応ディスプレイと3D Touchの2点以外は、性能の妥協なく最新のiPhoneの機能を盛り込んだ。4インチを好んで使い続けているユーザー、そして低価格のiPhoneを求めるユーザーに対しても、最新のiPhoneの機能を提供できるようになる。

この点で特に影響が大きいと見られるのが、クレジットカード決済をiPhoneのNFCチップと指紋認証で実現するApple Payだ。

Apple Payの利用者増加がアップルの収益増につながる

Apple Payは、現在、米国、英国、オーストラリア、カナダ、そして中国でサービスを開始している。特に中国は2016年2月にサービスを開始したが、既に300万枚のクレジットカードが登録された。

Apple Payの決済によって、アップルは決済金額の0.15%を手数料として得られる。日々の決済にアップル Payを利用すると、アップルにとって新たな収益源となり得るのだ。

特に人口の多い中国でApple Payを開始した意義は大きい。彼らが国内で、あるいは対応国への旅行でApple Payを利用すれば、Apple Payにとって大きな成長を遂げる原動力となる。

4インチの低価格iPhoneのApple Payのサポートは、特に中国のユーザーのApple Pay利用を増加させる点で、デバイス販売以外の収益を大きく伸ばせるだろう。

アップルのビジネス全体に成長余地を与える

iPhone SEは、既存のiPhone 6以降のユーザーにとっては、さほど魅力的には映らないかもしれない。しかし、iPhoneの販売が中心のアップルのビジネスにとって、iPhone SEは成長余地を確保する重要なデバイスとなる。アップルはiPhone SEの発売によって、第2四半期もしくは第3四半期の、セールスが最も落ち込む期間に、新たな販売のピークを作ることができるだろう。iPhone SEによって、iPhoneのセールスは、年間で1000万台から1500万台の上乗せ効果を見込む予測もある。

実際、iPhone 5sが2015年に2000万台販売されたことを考えると、これより価格が安く、高い性能となるiPhone SEは、 古い4インチデバイスの買い換えと新興国の開拓によって、さらに多くの台数を売り上げるだろう。

少なくとも、iPhone 5cのような「失敗」の烙印は、押されないどころか、アップル自体の成長を助ける役割を担っていくことになる。

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