背景1:iPhone・スマホ成長の減速

アップルのビジネスで最も収益を上げているのは、紛れもなくiPhoneだ。全体の収益の68%を占め、2015年は、2億3122万台を販売。前年よりも6200万台多く販売することができた。これは、iPhone 6シリーズによる大画面化の恩恵だ。

しかし、2016年第1四半期の販売台数は、7480万台と、前年同期と比較してたった30万台の増加だった。iPhoneセールスの成長に急ブレーキが掛かり、2016年第2四半期は、前年同期割れを見込んでいる。

iPhone販売台数の推移。図表内の2015年度第1四半期と2016年度第1四半期がほぼ同等の数値で伸び悩んでいる(アップル決算資料をもとに作成)

スマートフォンの販売台数の成長鈍化は、アップルに限ったことではない。台湾の調査会社Trend Forceによると、世界の2015年のスマートフォン販売台数は、12億9270万台で、前年と比較して10.3%の伸びに留まった。

この数字は、それまでの成長率が25%を超えていたことと比較すると、大きな減速となる。2016年は、さらに低成長になると予測されている。

アップルはスマートフォンメーカーの中ではシェアを微増させているが、スマートフォン市場全体の販売減少のトレンドは、iPhoneのセールスにも影響を与えることになる。iPhoneの売り上げが鈍化すれば、iPhoneを主力製品としているアップルの成長鈍化になることは明らかだ。

背景2:2つの取りこぼしの穴を埋める

iPhone SEは、これまでアップルが得意としてきたハイエンド、先進ユーザーの囲い込みとは異なる、新たな層へのリーチを拡げる点がポイントだ。その層とは、「小型のiPhoneへのニーズ」、そして「より低価格のiPhoneへのニーズ」の2つだ。

アップルによると、2015年に4インチiPhoneとなるiPhone 5sを3000万台販売したという。現在の世界でのiPhoneユーザーの約4割が、4インチを初めてのiPhoneに選んでいる。また調査によると、米国では20%のユーザーが4インチのiPhoneを好むという。

iPhone 6以降の4.7インチ、もしくは5.5インチのスマートフォンは、片手の操作で全画面をカバーすることは難しく、また手に馴染むサイズとは言いがたい。例えば女性や若年層のユーザー、あるいはiPadと併用しているユーザーにとっては、よりコンパクトなiPhoneへのニーズがある。

また、低価格のiPhoneは、中国を始めとした途上国でのiPhoneのエントリーモデルとしての役割もある。中国市場においてはユーザーの約6割が、初めてのiPhoneとして4インチモデルを選んでいる。これは、4インチのiPhone 5sが、iPhone 6シリーズよりも低価格である点が挙げられる。

小型のiPhoneを好む先進国ユーザー、そしてより低価格のiPhoneを求める新興国ユーザーの2つのニーズが、4インチモデルのiPhone SEを用意する主たる理由と言えるだろう。