太陽の約60億倍もの質量がある巨大ブラックホールから「ジェット」と呼ばれる高エネルギーのプラズマの流れが光速に近い速さで激しく噴き出しているのを日本と韓国の共同観測チームが観測した、と国立天文台が15日、東京都内で開かれた日本天文学会で発表した。これまで宇宙の謎とされていたブラックホールから噴出するジェットの仕組み解明につながる成果という。

写真.米航空宇宙局(NASA)のハッブル宇宙望遠鏡が1998年に撮影したM87銀河から噴出するジェット。撮影時には噴出するジェットの速さなど詳細は不明だった(J. A. Biretta/Hubble Heritage Team/NASA提供)

共同観測チームは、国立天文台水沢VLBI観測所を中心に日本国内4台と韓国内3台の計7台の電波望遠鏡による「日韓合同VLBI観測網」の研究者で構成。同チームの秦和弘(はた かずひろ)助教らは、解像度に優れるこの観測網を駆使、地球から5,440万光年離れた「M87(おとめ座A)銀河」の中心にある巨大ブラックホールから噴出するジェットを観測した。データの解析などから、巨大ブラックホールに極めて近いジェットの根元部分の速度は、これまで考えられていた「光速の10∼30%以下」ではなく、「光速の80%以上」であることが分かった。

重力の強いブラックホールには、周囲からブラックホールに落ち込まなかったガスが超高温、超高速になって噴き出してジェットが形成される。長さは5千光年もある、とされる。 ジェットの流れの速度については、初めは比較的ゆっくりでその後、加速するとこれまで考えられていた。国立天文台の研究チームによると「巨大ブックホールからのジェットの生成や加速のメカニズムは現代天文学の最難問の一つ」という。

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