三菱電機は1月21日、第5世代移動通信方式(5G)基地局向けに、高周波数帯で大容量通信を可能にする超多素子アクティブ・フェーズド・アレイ・アンテナ(APAA)と複数アンテナを組み合わせてデータを並列伝送するプリコーディング技術の連携による、新しい「マルチビーム多重技術」を開発したと発表した。

新技術では現行比約60倍の伝送速度20Gbpsを実現

5Gで用いる高周波数帯(4GHz以上)では、電波の伝搬減衰を補償するために数百素子以上のアンテナを用いるMassive MIMO(Multiple-Input Multiple-Output:複数のアンテナを組み合わせて大容量通信を実現する技術)技術が注目されている。この信号処理をすべてデジタル処理で実現する場合、デジタル回路の規模や消費電力が膨大になるが、その解決策の1つとして、アナログ処理とデジタル処理を組み合わせるハイブリッド構成が有望視されている。

同社は、人工衛星などで実績があるアナログ処理による超多素子APAA技術とデジタル処理によるプリコーディング技術を連携させたマルチビーム多重技術を開発し、計算機シミュレーションで現行比(2016年1月21日時点での最新第4世代携帯基地局比)約60倍となる伝送速度20Gbpsが得られることを確認した。

これにより、5Gで用いる高周波数帯でも電波の伝搬減衰を補償して各端末へ信号電力を届け、大容量通信が可能だという。現在の第 4 世代携帯基地局では2ビームで並列にデータ送信しているが、16ビームまで拡大して並列に大量のデータ送信を可能にすることで、今後急増するトラフィックの収容にも貢献するとしている。

また、従来のプリコーディング技術の1つである「対角化プリコーディング」は端末に対し、ビームを重ならないように配置することにより大容量伝送が可能としていたものの、端末が近接する環境ではビームが重なり干渉が発生する。従来のプリコーディングでは干渉となる信号電力を下げることにより干渉を低減していたが、その影響で通信速度が低下するという課題があった。

今回、近接する端末に対してビームの干渉を許容する「多重対角化プリコーディング」と、その干渉を除去する「非線形演算」を組み合わせた「非線形多重対角化プリコーディング技術」により、少ない演算量で柔軟にビームを形成する技術を開発した。これにより、近接する端末のビームを干渉させず、かつ通信速度を低下させずに20Gbpsの大容量通信を実現するという。