東京都・駒込の東洋文庫は、古代から近代にいたる日本の「医」の確かな歩みを振り返る"解体新書展-ニッポンの「医」のあゆみ1500年"を開催している。会期は4月10日まで(火曜休館、ただし火曜が祝日の場合は次の平日休館)。開館時間は10:00~19:00。入館料は一般900円、65歳以上800円、大学生700円、中・高校生600円、小学生290円。

「解体新書展-ニッポンの「医」のあゆみ1500年」

同展は、古代から近代にいたる日本の「医」の確かな歩み、約1500年を振り返り、曲直瀬道三、貝原益軒、華岡青洲、北里柴三郎など日本の医学史上の巨人たちの足跡をたどるもの。1774年、杉田玄白らはオランダ語の解剖図「ターヘル・アナトミア」の翻訳を成し遂げ、「解体新書」を刊行した。同書が日本の医学・医療の発展に多大な貢献を果たしたことはよく知られているが、この一大翻訳事業は同時代の日本の医師と学者に相応の知識があったからこそ実現を見たという。

同展では、日本で最初に西洋の解剖書を翻訳・刊行したことで日本の医学史上に多大な影響を与えた「解体新書」の初版本と、「解体新書」の原典にあたる「ターヘル・アナトミア」を並べて展示している。また、杉田玄白が開いた医塾「天真楼」の塾生が記録した貴重な玄白関係資料も初めて公開される。また、江戸のプラントハンターとよばれる小野蘭山によるメモ書きが残る本草書、華岡青洲が行った乳ガン手術の症例集など、日本の医療発展に従事した人々が手書きで残し、現代に伝えられた数々の医学史資料コレクションに光をあて、日本の「医」の歩み約1500年を振り返る。

また、関連企画として「『解体新書』その魅力と注目すべきこと(順天堂大学名誉教授・酒井シヅ)」が1月31日14:00~、「日中医学交流秘話―1950年代の医学者の相互訪問をめぐって(青山学院大学教授・飯島渉)」が2月20日14:00~、「絶学の人―解体新書の画家・小田野直武と秋田蘭画(学習院女子大学教授・今橋理子)」が3月5日14:00~開催される。いずれも参加無料、ただし、ミュージアムの入館料が別途必要。参加に際しては申込が必要となる。詳細は同ミュージアムWebサイトにて。

「解体新書」杉田玄白ほか訳 1774年(安永3)

「ターヘル・アナトミア」ヨハン・アダム・クルムス著 1734年 アムステルダム刊

「はしかのまもり」歌川芳艶 1862年

そのほか、医学者・北里柴三郎が医学・医療分野のさらなる発展を目指して、1914年設立した北里研究所の共催により、「北里柴三郎記念展示」が同時開催される。北里愛用の顕微鏡など、同研究所が所蔵する資料やパネルの展示をとおして、北里柴三郎から野口英世、志賀潔、そして2015年ノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智氏へと連綿とつながる、近代日本の「医」の系譜が紹介される。また、幕末の日本に訪れたイギリス人外交官アーネスト・サトウ旧蔵のシーボルト著作などが展示される「シーボルト没後150年記念展示」も同時開催される。