9月にドイツ・ベルリンで開催されたIFA 2015にて電撃的に発表されたソニー「CAS-1」。フルデジタルアンプを内蔵したセンターユニットと左右の2ウェイバスレフ型スピーカーからなる、ハイレゾ対応のコンパクトオーディオシステムだ。

CAS-1は机の上、PCの横に設置して聴く「ニアフィールドリスニング」に特化すると同時に、スマートフォンやウォークマンと簡単に接続できる「Bluetoothスピーカー」としても、さらには高音質なヘッドホンアンプとしても活用できる。本稿では、そんな欲張りなCAS-1を自宅で聴き込んでみた感想をお届けしたい。

ソニー「CAS-1」。ホワイトモデルは日本限定。このほかブラックモデルがある。ソニーストアにおける価格は税別79,880円

実は筆者、ここ1年半ほどソニーの一体型ワイヤレススピ―カー「SRS-X7」を愛用している。SRS-X7はBluetoothとWi-Fiの両方が使え、アップルのAirPlayをサポートしているのが便利なのだが、使うにつれ一体型の宿命とも言える「ステレオ感の不足」が気になり出していた。そんなタイミングで現れたCAS-1には当然興味深々、大きな期待を寄せている。

デスクトップリスニングを試す

CAS-1の開発背景を語るキーワードに「ニアフィールドリスニング」という潮流がある。実際にCAS-1は、75cm~2mの距離がリスニングに最適なポジションとなるよう設計されている。パソコンの脇にセンターユニットとスピーカーを置いてオーディオシステムを完結し、机の上で音楽を鳴らす。これがCAS-1活用の基本スタイルと言えるだろう。

14型液晶を搭載したノートPCと並べてみた。デザインは極めてシンプルなので、部屋に違和感なくなじみそうだ。執筆時、Winodws 10ではプラグ&プレイが利かず、手動でドライバーをインストールする必要があった

ということで、上の写真のようにセッティングを完了させ、ハイレゾからストリーミングまで様々な音源を鳴らしてみた。パソコンのOSはWindows 10、プレーヤーソフトはソニー純正の「Hi-Res Audio Player」を使用した。第一印象としてまず感じたのは、当たり前のことだが一体型スピーカーでは味わえない定位の良さだ。スピーカーユニットをネットやグリルで覆わず丸見えにしたデザインも (傷つけたり汚したりしないかと心配ながら)、「よし、いい音で音楽を聴いているぞ」という気分をアゲてくれる。ついつい、音量を大きくして聴き込んでしまうような存在感がCAS-1にはある。

その一方で、低音を過度に盛り上げていないのは好印象だが、全体の迫力に物足りなさを感じないわけではない。そこで特筆したいのがCAS-1が持つ「Low Volume Mode (L.V.M.)」の存在だ。L.V.M.は簡単に言うと、小音量時に聴こえにくくなる低域と高域を補完する "賢いラウドネス" 機能。ボリュームに応じて32段階、CAS-1に最適な調整を自動的に行ってくれる。しかも、低域・高域とも下品な強調はしておらず、腰パンをだらしなく履いているような印象は受けない。

とくに、レベッカ「RASPBERRY DREAM-revive-」(96kHz/24bit)のようにパンチのある曲では、CAS-1とL.V.M.の威力を実感できる。L.V.M.をオンにすると、イントロ初っ端、バスドラとスネアの反響音からしてから迫力が段違い! まるで、半切りレモンの果汁が弾けてスプラッシュしているかようなみずみずしさとスピード感だ。結構ボリュームを上げても、その違いは明らかに実感できるので、筆者であれば迷いなくL.V.M.を常時オンで使う。

大きなボリュームノブを中心に据えた前面。接続系統を示すインジケーター、USB A端子、ステレオミニ端子を用意している。現在の音量やL.V.M.の有効/無効が視覚的にわかりにくい

背面にはスピーカー接続端子、PCと接続するためのUSB B端子、ヘッドホンのゲイン切り替えスイッチ、Bluetoothのペアリングスイッチなどを配置

付属するリモコン。ソースを切り替えたり、LDACやL.V.M.を有効にするといった操作も可能だ