今回はFire HD 10でプライム・ビデオを利用してみたわけだが、実際に使ってみるとかなり便利だ。作品のラインナップもどんどん増えており、サービス開始直後に感じた物足りなさはだいぶ解消されている。アプリの使い勝手に多少の不満はあるものの、Amazonがその気になればソフトウェアのアップデートで対応はできるだろう。今後このペースで作品が増え続ければ、トンデモなく利用価値の高いサービスとなる可能性がある。
「Hulu」や「Netflix」といった有料の動画配信サービスは、利用に1,000円程度の月額料金がかかる。それに対してプライム・ビデオは、Amazonプライムの年会費3,900円を単純に12ヵ月ぶんで割れば、ひと月あたりの料金は325円だ。作品のラインナップや画質を考慮すれば一概にプライム・ビデオに軍配が上がるとは言えないものの、既存の有料サービスと比べてかなり強烈なインパクトがある。また電子書籍が毎月1冊無料で読める「Kindleオーナー ライブラリー」や、通常配送よりも商品が早く到着する「お急ぎ便」などのサービスも料金に含まれていることを考えれば、もはやダンピング的なサービスだと言っていいかもしれない。
もっともAmazon自体は、Amazonプライムの年会費で収益を上げようと考えているわけではないはずだ。Amazonが狙っているのはあくまでも、ユーザーを囲い込むことで有料の商品やコンテンツへの導線を確保すること。その考えは、商品を手軽に購入できるFire OS 5のインタフェースからも見て取れる。格安デバイスやお得なサービスは、そのための手段であるにすぎない。
筆者としては、そうした動きを否定したいわけではない。むしろ、Amazonを日常的に利用する筆者にとっては非常に快適だ。ただほかのサービスやECサイトが駆逐されAmazonだけ生き残った場合、果たしてどんな世界になっているのか不安に感じることがある。杞憂にすぎないとは思うのだが、国内外の定額制動画配信サービスによる対抗策に期待したいところだ。