2013年発売の「PRW-3000」では、新開発のトリプルセンサー Ver.3を搭載。1m単位の高度計測など、センサー性能が格段に進化を遂げた。そして、そのトリプルセンサー Ver.3を使ってアナログモデルをリニューアルしたのが、2014年発売の「PRW-6000Y」だ。

PROTREKコンビネーションモデルとしては最薄の12.8mmを実現した「PRW-6000Y」。2014年発売

竹内氏「PRW-6000Yはとても気に入っていて、さまざまな山で使いました。何よりも高度計測が5m単位から1m単位になったことは、登山にとっては大きな意味があります。

私がやっているような8000m峰の高所登山においては、酸素が少ない中で行動しなければならないため、たとえば5歩進んでは息を整えるために止まり、また5歩進んでは止まり……と、5mの高さを登るだけでも大変な時間と労力がかかるわけです。

そんなとき、高度計測が5m単位だと、いつまでたっても表示が変わらず、そのうちに『この時計は壊れているんじゃないか』と疑心暗鬼にさえなってしまう。1m単位で細かく表示してくれることは、高所登山をする人間にとって画期的な進化なんです」

このPRW-6000Yをもとに、竹内氏がデザイン監修を行ったのが「PRW-6014H」である。時刻の視認性を高めるため、針とインデックスを白くして、そのほかのロゴや都市コードは黒く目立たせないようにするなど、大胆なアレンジを加えている。

「PRW-6000Y」をもとに、竹内氏がデザイン監修を行った「PRW-6014H」。テュルク語で「黒い砂礫」を意味するカラコルム山脈をイメージした。2014年発売

竹内氏「日常生活で使っている分には、時刻の読み違えってほとんどないと思います。しかし、山での行動中、吹雪でホワイトアウトして手もとさえはっきり見えないときや、低酸素で視力が落ちているときなどにぱっと見ると、一瞬12時位置の把握がずれてしまい、時刻を読み間違えることがあるんです。登山、特に高所で使用する場合、視認性の高さはとても重要です」

牛山氏によれば、「CASIO」という社名や「PRO TREK」という商品名さえも黒く目立たなくさせるデザインは、「会社としても大きな挑戦だった」という。

牛山氏「PRO TREKにとっては、この時計は突然変異のような進化だったと思います。しかし、視認性を徹底的に追求するDNAが、次の開発の指針となりました。PRW-6014Hのデザインこそが、最新モデル「PRX-8000T」に受け継がれ、その礎となったと言っても過言ではないのです」