―― デスクトップPCでもCortanaは便利に使えますか。

Ash氏「もちろん! 例えば、妻に連絡するのを忘れていたとしましょう。そのとき仕事の手を止めるよりも、Cortanaに話しかけてメッセージを作成した方が簡単です。

これまでのCortanaは音声認識に注目が集まっていましたが、本来は『プロアクティブな(先を見越した)情報提供』が核となります。具体的には、ユーザーが関心を持つニュースや天気を、プロアクティブに提供するようなPC環境はなかったと思います。Cortanaを介してこのような情報提供を行うのは、新しいサービスといえるでしょう。

Cortanaに対しては、ユーザーが行動パターンの学習許可を与えることが前提となりますが、自分が特定分野を繰り返し検索している場合、Cortanaが学習して、あるとき突然『自分では思いも寄らなかったような情報』が送られてくるようになります」

―― Cortanaが成長すると将来的に秘書がいらなくなりそうですね。訴訟されたらどうしましょう(笑)

Ash氏「困りますね(笑)。昔から、AIが発達すると人間の仕事が奪われるのではないか、という懸念が付いて回っています。しかしCortanaは、人間に取って代わるものではなく、人々の生産性や能力をサポートする方向性を目指しています。決して秘書の仕事を奪うようなことは考えていません」

―― CortanaはNUI(ナチュラルユーザーインタフェース)と同等の存在になりますか。

Ash氏「我々はCortanaをPCに限らずWindows PhoneやXboxなど、さまざまなデバイス上で動かすことを想定しています。その意味では、Cortana=NUIという考え方も間違いではありません。ただ、繰り返しになりますが、プロアクティブな部分を主軸に置いています」

ヤマモト氏「NUIに関しては、年配のユーザーさんが楽に使っているように感じています。ユーザーサイドの準備も整いつつあり、今後は普及していくのではないでしょうか」

―― 日本語のCortanaは、音声合成がまだまだ不自然です。今後はどのように改良していくのでしょうか。

こういう駄洒落は、どうやってCortanaのデータベースに登録されていくのか興味深い

藤原氏「確かに、英語版は比較的スムーズな発音ですが、日本語版は不自然ですよね。ただ現在、日本語の音声合成で細かい品質調整をするのではなく、声優さんなどにお願いして特定のクオリティを高める方法を優先しました。

理由として、音声合成の数を増して不自然な部分が残ったり増えたりするよりも、まずはCortanaをユーザーの皆さまに使っていただくために、今回の方針を選択しています」

石坂氏「音声合成に関してはMSR(Microsoft Research)が開発し、(他の言語に比べて日本語版は)かなり良いものが出せるという確信を持っています。ただ、今回のタイミングに間に合わせるのは、難しい部分があったのも事実です。ユーザーの皆さまに1年待っていただいて、精度の高いものを提供するという選択肢もありましたが、今の時代にはそぐわないと我々は考えています」

―― 先行するライバル(Siri、Google Now)に対してご感想は。

Ash氏「目指している方向性が違うと考えています。Cortanaは真のパーソナルアシスタントを目指して、検討を繰り返してきました。もっとも多かったのが最初に述べた『検索』です。また、料理中など手が離せない場面でメールを送るために、自然言語への対応も重要と考えました。

しかし、何でも自然言語で対応すると生産性を損ないかねません。自然言語を用いて行うべきシナリオを熟慮し、提供するのがCortanaの目標でもあります」

―― 先日、MSRA(Microsoft Research Asia)の洪氏は、Cortanaを「無限の可能性がある」と語っていました。Ash氏から見た「Cortanaの可能性」は?

Ash氏「確かにCortanaの可能性は無限大です。Cortanaは個人を把握し、生産性の向上をサポートしますが、ユーザーによって求めるものは異なるでしょう。あくまでも、ユーザーごとに異なるシナリオに沿った情報提供を行う『パーソナルアシスタントとしての可能性』を模索したいと考えています。それが最大のチャレンジです」

―― 本日はありがとうございました。

阿久津良和(Cactus)