そして、iPad Proを快適に使えるツールに仕立て上げるのに活躍しているのがiOS 9です。iOS 9の出来も、もの凄く良いです。僕は「Slide Over」「Split View」「Picture in Picture」というiPad向けのマルチタスク機能を高く評価していているのですが、特に「Split View」は重宝しています。Macを使って作業しているとき、Pro Toolsを使いながら、更なるインスピレーションを得ようと写真を見たり、Safariを起動してリサーチするといったことをしていたのですが、これで同じことが出来るようになりました。iPad Airの画面二枚分がいっぺんに使えてしまうので、作業領域も広々としています。音楽制作は、3D的な部分があり、音楽、ビジュアルなどを含めてトータル的なエンターテインメントだと考えていて、さまざまな事柄にインスパイアされて作られていくのだと思っているのですが、そうした方法論でクリエイトしていくようなタイプの人にはピッタリなのではないでしょうか。

iPad ProのGarageBandで描いたスケッチをMacのLogic Pro Xで膨らませていくということも

iPad Proは自分にとっては初代iMacが出たとき以来の革命的なプロダクトという感覚です。iMacも最初に発表時、モニタからCD-ROMドライブまで全部入っていて、その一方でフロッピーディスクを廃止したりと、大胆なアプローチをしていましたけど、あの感覚を思い出さずにはいられません。iMacの登場というのが、その後のデスクトップ/モバイルコンピューティングのベンチマークになったということに異論はないでしょうが、iPad Proもまさにそんなような存在になるのではないでしょうか。可搬性が高いと言ってもMacBookシリーズでは、ネットワークにつながるにはモバイルWi-Fiやテザリング端末を一緒に携行しなければなりませんでしたが、Cellularモデルなら、それらの必要もなくなりますし、先ほども指摘した通り、作曲はもちろん、ジャケットやアーティスト写真、MVの素材のチェックなどなど、一通りのことができますから、これ一台で仕事が完結しちゃいます。自分が検索したいこと、見たいもの、書きたいもの、作りたいもの、全部がiPad ProだけでOKとなるのです。思い描いたものが全てできてしまう、これはアップルが僕らに与えてくれたレッドカーペットなのだと思えるくらいの製品だと言えるでしょうね。タブレットはアップル以外からも、さまざまなメーカーからたくさんの機種が出ていますが、iPad Proはそのマーケットを圧倒的に支配していくのではないかと。iPad Proの登場で、iPadもよりその存在感を示すこととなる気がしています。ここへ来て、iPadはiPadになったと表現したら良いのでしょうか。いいんですか? 一つのものにこんなにあらゆるものを入れちゃって? アップルさん、自分でハードル上げてません? 次の製品、これを越えるのを作らなきゃいけないんですよ? と案じたくなるレベルです。

Apple Pencilでドラムパートを打ち込む、なんて使い方もお勧めです

思いついたことをパッと、Apple Pencilで書き留めておくこともできるし、音楽制作以前のスケッチや構想をまとめておくのも楽になったと感じます。これなら、浮かんだアイディアや湧き上がったインスピレーションを逃すこともなくなるでしょう。さらに言うと、iCloud経由でデータのやりとりが出来るので、モバイル環境で制作したものを、その他の環境に移動させるのもプラットフォームを気にせずに行えるようになったところは強調しておきたいですところです。先ほどの職人の要求にもしっかり応えてくれます。

エントリーユーザーからプロフェッショルまで、幅広いユーザーのニーズに応えてくれるのは本当に嬉しいですよね。いわゆる業務用のツールは「ポップさ」に欠けるところがあって、長時間の使用がしんどいこともあったりしますが、iPad Proはそれがなく、アミューズメントな部分とキッチリした仕事を行ったり来たりできるのも良いです。僕は遊びと仕事がシームレスになっているようなところがあるのですが、そういうワークスタイルの人には選択肢として大いにアリだと思います。本当にオールマイティなので、ファースト・コンピュータとしてお勧めできます。唯一、改善を望むとしたら、Apple Pencilを一緒に持ち運ぶためのホルダーが欲しいというとこでしょうか。失くしてしまいそうなので。これはサードパーティからLightningコネクタを利用するタイプのアタッチメントが発売されるようなので、あまり気にしなくても良いのかもしれませんが。それと、充電中のApple Pencilのキャップ部分、これも紛失してしまいそうなので、ここにGPSを仕込んで「Find My Cap」みたいなアプリができると安心かなと。半分冗談ですが、キャップについてもサードパーティから、あるいはアップル純正のApple Pencilに装着しておけるアタッチメントが出てくるのを待ってます。

ざっと、iPad Proの第一印象をお伝えしてきましたが、このレビュー、続きます。次回は実際に曲を作って、お聴かせしたいと思ってますのでご期待ください!!

(Photograph SHOWMOV)