米Venture Beatによれば、現在米Intelでは1000人以上の部隊が同社製モデムチップを2016年登場のiPhoneに搭載すべくAppleとの共同開発を進めているという。もしこれが実現すれば、現状で米Qualcommの独占となっているiPhone向けのモデムチップ供給がIntelを合わせたデュアルソース体制となり、iPhone 6sでSamsungとTSMCの2社供給体制となったSoCと合わせ、ほぼすべての主要部品のデュアルソース化を実現することになる。
Venture Beatでは今年2015年3月にもAppleとIntelの協業を伝えていたが、チップの出荷は年内で、搭載製品は来年登場という点は変わらず、より具体的な話が出てきた。それによれば、現在Intelは同社「XMM 7360」というLTEモデムをiPhone搭載用にカスタマイズしており、少なくとも来年発売のiPhoneの一部に搭載されての出荷が見込まれるという。XMM 7360はCat 10の450Mbps通信に対応したTDD/FDD-LTEモデムであり、TD-SCDMAサポートも可能など、中国市場での利用も可能になっている。
Intelは2010年に独Infineonの3Gモデム部門を買収したが、Infineonは翌年にAppleがiPhone 4Sをリリースした際、それまでの「iPhone向け3Gモデムチップ提供ベンダー」という地位を失っている。AppleはiPhone 4の世代までモデムチップにInfineon製品を採用していたが、米Verizon WirelessへのiPhone供給にともないCDMA対応版iPhone 4にQualcommを採用して以降、iPhone 4Sでは全面的にQualcomm製品へと移行して、現在でも同社の独占供給体制を維持している。もし2社の並行供給体制へと移行すれば、Intel (Infineon)は実に6年ぶりにAppleからの受注を取り戻したことになる。
現在、iPhone 6sの世代ではモデムチップにQualcommのGobi 9x45というLTE Cat 6の300Mbps通信対応製品が採用されているが、おそらくは2016年登場の次期iPhoneの世代でQualcommにおいてもXMM 7360の下り450Mbpsに匹敵する、Cat 9または10のモデムを採用することになるとみられる。なお、XMM 7360では現状で3GでのCDMAサポートが行われておらず、各国の携帯キャリアのネットワークでの検証等の問題から、iPhone 6sのSoCで行われたような異なる性能を持つ2社のチップを同じSKUに混ぜて出荷するようなことは難しいと考えられる。そのため、Venture Beatでも指摘しているように、「Intel製チップ搭載製品はアジアや南米など特定地域向け」という形でSKUを完全に分け、従来からあったように対応バンドやネットワーク違いという形で区別してくると予想される。