フルモデルチェンジとなった「うるさら7 Rシリーズ」の2016年モデル

ダイキン工業は10月1日、フラッグシップモデルのルームエアコン「うるさら7 Rシリーズ」の2016年モデル新製品を発表した。うるさら7シリーズとしては約3年ぶりのモデルチェンジとなる。同日に開催された新製品発表会では、新機能の説明のほか、実機を使用したデモなども行われた。

新モデルは暖房性能を強化

うるさら7シリーズは、同社ルームエアコンのフラッグシップモデル。「うるさら」という名の通り、加湿や除湿といった湿度コントロール性能の高さが特徴。とくに、水を補充しなくても湿度を保つダイキン独自の「うるる加湿(無給水加湿)」機能は人気が高い。

新製品発表会の冒頭では、ダイキン工業 空調営業本部 事業戦略室 住宅用事業推進課長の谷内邦治氏が登壇。市場動向や製品開発の経緯について説明した。

ダイキン工業 空調営業本部 事業戦略室 住宅用事業推進課長の谷内邦治氏

谷内氏は「家庭用ルームエアコンは、近年の猛暑などの影響で順調に出荷台数伸ばしている」とコメント。2014年こそ消費税の増税影響によって出荷台数が減ったものの、家庭内における保有台数の増加や買い替え需要などで、今後も安定した需要が見込めると語った。

2014年度のモデルチェンジでは、温度と湿度をコントロールする「プレミアム冷房」や、天井に沿って冷気を循環させることで、風を感じることなく冷気が天井から降り注ぐ「サーキュレーション気流」の搭載など、さまざまな方法で冷房性能を向上させた。そのため、今年は暖房性能を重視したモデルチェンジとなっている。

同社でリビング用エアコンに関するアンケートを実施したところ、エアコン暖房使用時の不満点に「肌の乾燥」や「風が直接あたる不快感」を挙げるユーザーが多かった。そこで、今年のモデルチェンジでは暖房性能の快適性を重視したという。

【左】近年の猛暑や、家庭内におけるエアコン保有台数の増加といった要因により、エアコンは今後も安定した需要が見込める。【右】ダイキンの調査では、暖房時の肌の乾燥や、身体に風があたる不快感などがエアコンの不満点に挙げられた

温風が壁と床を伝って足元からポカポカに

新製品でこだわったのは「暖房時の風を身体にあてない」技術。最近は、人の場所をカメラなどで検知し「風を直接人にあてない」エアコンも増えている。しかし、足元を暖めるために強めの気流を吹き出すと、その気流が床などに反射して風が舞い上がる。このため、温風を避けても、反射する風が身体にあたるという弊害があった。肌に風が触れると不快なだけでなく、「肌の乾燥」も促進させてしまう。

そこで、新しいうるさら7シリーズでは、風を壁から床に沿って広げる「垂直気流」機能を搭載した。垂直気流機能は、気体などが壁に引き寄せられる「コアンダ効果」を応用したものだ。壁や床表面近くだけを暖気が流れることで、身体に風をあてることなく、冷えやすい足元から身体を温められる。

一般的なエアコンは、風が舞い上がることにより部屋中に風を作ってしまう。一方、垂直気流は足元以外はほとんど風が起こらない

垂直気流は壁や床に沿う性質を利用しているため、部屋中に温風を拡散させるよりも少ない風量、吹き出し温度で部屋を暖められる。そのため、従来よりも高い静音性と節電効果も実現。2014年発売のAN40SRPと、新製品AN40TRPを比較した結果、人の感じる運転音は従来の約50%、節電効果は従来比で約30%減にもなった。

発表会では実機を使用した「垂直気流」の実験も行われた。エアコン上部でスモークを焚き、レーザーをあてることで気流の動きを目で確認。気流の通り道にソファーを置いても、冷房の風は巻きあがることなく床面に沿って流れている。実験用ブースは長さが6mあるが、ブースの端までしっかりと気流が届いているのも見て取れた

コアンダ効果を応用したフラップ

分解したところ

気流を壁に沿わせる「垂直気流」を生み出すため、補助フラップで風を風向板に誘導する「デュアルコアンダフラップ」機能を開発

効率よく部屋を暖めるため、暖房スタート時は床全体を暖める「床温コントロール」で暖房。写真右の床温度センサーによって、部屋が温まったことを確認してから垂直気流運転に移行する

風を直接あてないだけでなく、ダイキンの独自技術である無加水加湿機能「うるる加湿」も併用する。肌が乾燥しにくい環境を作れる

寒冷地でもパワフルに暖房

新製品のもうひとつの特徴が、寒冷地でも高い暖房性能を保持する「タフネス暖房」機能。なかでも、暖房性能の向上に力を発揮したのが熱交換器エリアの拡大だ。旧モデルでは、「加湿ユニット用外気取り込みファン」と「室外機本体ファン」がそれぞれ独立して搭載されていた。しかし、新製品ではひとつのファンを共有することで、加湿ユニットのサイズを約50%小型化。空いたスペースを利用して熱交換器エリアを拡大している。

左が新型加湿ユニットで右が旧モデルの加湿ユニット。ファンがなくなることで、加湿ユニットのサイズは半分ほどになっている。ユニットサイズを縮小した分、熱交換器のサイズを拡大して効率的に暖房できるようになった

そのほか、従来モデルでは直径105mm、長さが643mmだった室内機クロスフローファンを、直径116mm、長さ673mmまで大型化。加えて、室内機のモーターや圧縮機の高効率化によって、高い暖房性能を実現した。これらの改良により、外気温-15℃でも定格以上の暖房能力を発揮できるようになったほか、同社の試験では昨年モデルAN40SRPと比較して2倍の速さで14畳の部屋を暖められている。また、外気温2℃の環境において、最高60℃の「高温風モード」が使用できるようになった。

寒冷地での使用を想定した機能も搭載。室外機内の水が落ちる部品下に、比較的温度の高い冷媒を循環させることで霜つきを防止。排水性能の向上や着雪防止機能、低温に強い電子機器を搭載することで、これまで-20℃だった暖房運転可能範囲は、-25℃まで拡大した。

【左】室内機に搭載されているクロスフローファンを大型化することで、風量をアップ。【右】霜をつきにくくするなどの改良で、従来より5℃低い-25℃までの外気温で暖房運転が可能となった