MicrosoftはWindows Phone向けアプリケーションとして、「Messaging Skype Beta」をリリースした。このアプリケーションの特徴を述べるには昔話が欠かせない。
1990年代中頃は多数のIM(インスタントメッセンジャー)が登場し、中でも世界的にヒットしたのはICQだった。それを横目で見ていたMicrosoftは1999年にMSN Messengerをリリースする。後にWindows XP標準搭載のWindows Messengerや、MicrosoftのLiveブランド戦略に沿ったWindows Live Messengerをリリースするが、最終的に2011年に買収したSkypeを主軸に置いた。
だが、そのSkypeは迷走の気配を見せている。Windowsストアアプリ版を2015年7月に終了し、Windows 10無償アップグレード登場後もユニバーサルWindowsアプリ版をリリースせず、デスクトップアプリ版は32bit対応のままだ。アクションセンターとの連動も行われず、普段から仕事の連絡をSkype経由で行っている筆者としては違和感を覚えることが多い。
確かにWindows 10が過渡期にあるため、アプリケーションにまで手が回らない状況は理解できるが、後手に回った印象を受ける。このような状況では、快適な環境を作り上げたWindows 7ユーザーが、Windows 10への移行を決心できないのも仕方ないだろう。
さて、Windows 10 Mobileは2015年内のリリースに向けて鋭意開発中だが、先頃、公式ブログの記事でMicrosoftのGabriel Aul氏は「我々は高速リング向けリリースでも、スマートフォンでメッセージや通話、アプリケーションのインストールなど日々の活動を行えるようにしたい」と述べていた。その片鱗を感じ取れるのが冒頭で紹介したMessaging Skype Betaである。
Microsoftの公式ブログに掲載されたWindows 10 Mobileの開発状況を示した図。OSG(Operating System Group)の低速リングで問題が発覚すると、Windows Insider Program参加者へのリリースが遅れる仕組みだ |
そもそもWindows Phone 8.xやWindows 10 Mobile Insider PreviewにもSkypeや「Messaging(メッセージング)」というアプリケーションが用意されている。Messaging Skypeは、MessagingのSMSとSkypeのメッセージ会話や通話履歴機能を統合した存在だ。端的に述べれば「Skypeを統合した新Messaging」と言えるだろう。
Windows 10 Mobile Insider Previewのストア経由で開いた「Messaging Skype Beta」。ユーザーならお気付きのとおり、「Messaging」と同じアイコンだ |
Windows 10 Mobile Insider Previewビルド10512にMessaging Skype Betaをインストールし、起動してみると最初に「SMS送信に使用しますか?」という確認メッセージが現れる。SMS機能を既存のアプリケーションから切り替えるように促すメッセージだ。続いてアプリケーションの主な使い方を示した図が現れる。基本的なレイアウトは既存のSkypeと同じためボタンをタップして進むと、ようやくメイン画面が現れる仕組みだ。
Messaging Skype Betaの外観は、Windows Phone向けSkypeのテーマを黒色に切り替えた様に見えるが、基本機能も現時点では同じだ。ただし、Messaging Skype Betaから通話やビデオサービスを使おうとすると、一度Skypeを起動するが、すぐに元の状態に戻ってしまう。
ユーザープロフィールやアプリケーションのインストール履歴を確認すると、筆者の環境ではMessaging Skype Betaとともに「Skype vireo Preview」というアプリケーションがインストールされていた。アイコンをタップしても起動しないことから、何らかの不具合が発生しているのだろう。
Messaging Skype Betaから確認したSkypeアカウント。音声通話やビデオ通話用に「Skype video Preview」が選択されているが執筆時点では使用不能だった |
テキストチャットはMessaging Skype Beta内部で処理するためか、特に問題なく動作する |
アプリケーション名に「Beta」、説明にも「Preview」とあるように本アプリケーションは開発途上にある。だが、Messaging Skype Betaの存在は、Microsoftがデスクトップアプリ版のSkypeを改良していくのではなく、別プラットフォームで再構築するという意思を示したと言える。筆者としてはIM環境の改善に光明を見い出した気分だ。ユニバーサルWindowsアプリとして、Windows 10上で動作する日を気長に待ちたい。
阿久津良和(Cactus)