タムロンは9月2日、一眼レフ用の新作交換レンズ2本の発表会を開催した。この日発表されたのは、「SP 35mm F/1.8 Di VC USD」(Model F012)と「SP 45mm F/1.8 Di VC USD」(Model F013)。会場内には、さっそく試写を行えるタッチ&トライコーナーも設置され、その画質やフォーカスフィーリングなどを体験できた。
タムロンの顔、SPレンズ
最初に登壇したのは、タムロン 専務取締役の大瀬英世氏。2015年で65周年を迎えるにあたり、タムロン製品の中でも秀でた光学性能と高機能、持つ喜びを満たす「SP(=SUPER PERFORMANCE)レンズ」を刷新すると発表した。
タムロンのSPレンズ、と聞いて誰しも思いつくのが90mmマクロだろう。1978年登場の「SP90mm F2.5(Model 52B)」以来、90mmマクロはタムロンを代表するレンズとなった。また、2012年以降には、F2.8シリーズを発売。MTF(レンズ性能を評価する指標のひとつ)の全数検査を行うなど、品質への徹底した姿勢が好評を博した。そのSPシリーズを今回リニューアルする理由を、タムロン 上席執行役員 千代田路子氏は次のように語る。
「現在、市場におけるデジタル一眼レフカメラの高画素化といった性能向上やユーザーの裾野の広がりに伴い、光学性能、アクチュエーターの進化、防振など新機能の搭載、デザインの向上といった開発課題がより重要性を増しています。そこで、SPレンズの強化をさらに推進する必要があると考えました」(千代田氏)
また、「今後はSPの称号を高性能レンズとして確たるものにしたい」とも。そのため、今回のリニューアルでは外観にも力を入れたという。10年間にわたって親しまれたトレードマークの金リングも、意匠を変えた。
「タムロンは他にないレンズの開発を常に念頭に置いています。オリジナリティを尊重し、写真ファンに新たな選択肢を提供することがレンズ専門メーカーの役目だと思っています」と、千代田氏は語る。確かに、35mmと45mm、それもF1.4ではなくF1.8のレンズを同時発売するなど、前代未聞かもしれない。
3つの特長「キレイ、寄れる、ブレない」
続いて、タムロン 商品企画部 部長の佐藤浩司氏が登壇。各製品について説明した。まず、今回発表した「SP 35mm F/1.8 Di VC USD」と「SP 45mm F/1.8 Di VC USD」に共通する特長として「開放から使える高い描写性能」「新しい映像表現を可能にする短い最短撮影距離」「高画素機で目立ちやすいブレを抑える大口径用手ブレ補正機構の搭載」の3点を挙げ、佐藤氏は「キレイ、寄れる、ブレない」と言い換えてみせた。
続いて、35mmと45mmという近い焦点距離のレンズを同時発表したことについて、以下の3つの理由を挙げた。
タムロンはこれまで標準域の単焦点レンズを開発してこなかった。そこで、基本に立ち返ろうと考えた
単焦点は標準域がほしいという要望が多かった
フルサイズ用として考えると広角好き、標準好きどちらのユーザーにも常用レンズとして選んでもらえる。APS-C機で使えば、35mmは54mmの標準レンズとして、45mmは72mmの中望遠ポートレートレンズとしておすすめできる
余談だが、質疑応答で千代田氏は、45mmという珍しい焦点距離について「50mmはすでに銘玉が数多く存在するが、他にないレンズの開発を目指しているタムロンとして、45mmのレンズを開発した」「開発者が45mm好き、というのもある」と、半分ネタのようなコメントも述べている。
また、開放絞り値をF1.4ではなくF1.8とした理由について、佐藤氏は以下のように述べた。
「前出の特長(キレイ、寄れる、ブレない)と、使いやすいサイズをベストなバランスで作り上げるためF1.8としました。特に防振については、大口径用の手ブレ補正ユニットをいかに収めるかに苦心しました。光学設計と機構設計のせめぎ合いを、工夫を重ねて乗り切っています。結果、非常に実用性の高いレンズとして仕上がったと思います」(佐藤氏)。
手ブレ補正の効果については、SP 35mm F/1.8 Di VC USDが3.0段、SP 45mm F/1.8 Di VC USDが3.5段(ともにCIPA基準)とのこと。各製品の詳細な仕様等については、こちらの記事をご参照いただきたい。
新しいアイコン、ルミナスゴールドのリング
千代田氏の言葉にもあったように、今回のSPレンズのリニューアルでは、その外観デザインも重要な要素となっている。デザインを担当したタクラム デザイン エンジニアリング代表 田川欣哉氏は、タムロンの開発者約50人と密に対話を繰り返し、以下の3つのポイントを導き出したという。
高品質でトータルバランスの良いデザイン
ひと目見てタムロンの製品と判るアイデンティティ
レンズキャップやボックスも含め、統一された世界観の構築
特に、2つめのアイデンティティについては、ユーザーにお馴染みの金リングを一歩進める形で新たなデザインに昇華。新たなルミナスゴールドのリングとして、レンズ下端(マウント縁)に配置し、新たな意匠とした。
「普通、こういったブランドリングは4~5mm幅ですが、今回はこれを8mmとしました。このブランドリングは、SPレンズの新たなアイコン(象徴)であると同時に、その位置からカメラとの結合性や、ユーザーとタムロンの契約、クオリティなどを表現したものでもあるんです」(田川氏)
なお、このリング部分にはわずかに丸みを帯びた逆テーパーが付けられている。カメラを構えてレンズに左手を添えたとき、この逆テーパーが気持ちよく指に沿うのだ。また、AF/MF切り替えスイッチと手ブレ補正のON/OFFスイッチも親指の幅に合わせており、今までにない形であるだけでなく、ファインダーをのぞき込んだままのブラインド操作も可能にしている。
タッチ&トライ
会場にはタッチアンドトライコーナーが設置され、多くの試用実機が用意された。筆者も実際に試写させてもらったが、フォーカスの迷いのなさ、静音性、手ブレ補正効果ともに十分納得できるレベル。開放値のピントに関しても、会場に用意されたフルサイズ機では見事な精度を見せてくれた。装着したカメラ個体とのマッチングによる精度アップの可能性を差し引いても、その実力は十分に期待できそうだ。