カシオはリスト型ウェアラブルデバイスに参入するのか

そして、2000年代に入って一気に普及率を伸ばしたスマートフォンが、スマートウオッチという新たな市場を構築する。だが、カシオはいわゆるリストデバイスとしてのスマートウオッチには安易に参入しないという姿勢を崩さなかった。それは、今まで見てきたように、すでに同様の技術やコンセプトを持つ製品群をリリースしてきた経験からの判断だったのだ。

増田氏「スマートウオッチには3つのスタイルがあると、私は考えています。ひとつは、メールのお知らせやスケジュール管理など、スマホと常時連携して使うもの。もうひとつは、スマートウオッチが収集したデータをスマホで蓄積、使用するもの。そして、時計が主となり、スマホが従となるもの。たとえば、位置や時刻の取得、時計操作のためにスマホを活用するといったようにです。

カシオの時計は「時計を主として、スマホを従とする」アプローチ

カシオは、この3つめのスタイルでしっかりとやっていきます。たとえば、当社の最新ヒット作のひとつ、EDIFICE(エディフィス)のEQB-510は、スマホからの位置、時刻取得、ワールドタイム設定などが大変簡単に行えます。おかげで、時計上に細かく世界の都市コードを書き込む必要がなくなりました。スマホ連携機能が、時計としてのデザインに自由度を与えたのです。これが『高機能』なんです」

スマートフォン連携機能を搭載、時計操作をアプリ「CASIO WATCH+」から行えるうえ、都市コード表記が不要になり精悍なデザインになったEDIFICE「EQB-500」

スマホ連携機能を持つEDIFICEの最新作「EQB-510」は、ダイヤルの視認性が大きく向上

とはいいつつ、カシオも「リストデバイス」の市場動向をただ指をくわえて見ているだけではない。上映されたスライドには、新規事業としてリストデバイスに参入すること、2016年のCES(ラスベガスで開催されるコンシューマー・エレクトロニクス・ショー)で何らかの発表がある旨が明記されていたのである。ちなみに、リストデバイス事業は時計事業部と完全に切り離されており、その詳細は増田氏もほとんど知らないとのこと。ただし、そのスタッフには、時計事業部の経験者もいるそうだ。

スマホとの連携は、時計ユーザーにも大きなメリットをもたらす

時計事業とは別の形でリストデバイス事業を立ち上げるという。2016年のCESで何らかの発表があるとのこと

ともあれ、今回の特別展示が単なる懐古アイテムの展示会にとどまらない、真の意味での特別展示であることがご理解いただけただろう。カシオの歴史の影に消えていった技術のあだ花。記念すべきモニュメント。早すぎた予言者。そのどれもが正しいといる、名機の数々、ぜひ実機をその目で見て欲しい。これを見逃すと、もう二度と目にする機会はないかもしれないぞ!

期間中に展示されている商品を一部ご紹介しよう!

世界初のオートカレンダー搭載時計「QWO2-10」。1974年発売で5万8,000円!

タッチセンサー採用のデータバンク「VDB-1000」(左)と漢字辞書搭載の「DKW-100」(右)は、いずれも1991年発売

英和・和英辞書搭載の「T-1500」(左)と「T-2000」(中央)は1982年、電話番号と名前を最大10組記憶できる「CD-401」(右)は1984年の発売

PCとのリンク機能を持つHBX-100(左)と、携帯電話の着信を振動で通知する「VCL-100」(右)は、いずれも1998年の発売

MP3プレーヤーを搭載した「WMP-1」。開発スタッフみんなで音を聴きながら音質を調整するほど、サウンドにこだわったという。2000年発売

プロのマジシャンとタイアップして開発したマジックウオッチ「MGC-10」は2006年発売。ユーザーが心の中に思った数字をいくつかの計算で当てるなど、数字遊び的なロジックを積んでいた

カラー表示・カラー撮影が可能なデジタルカメラを搭載した、その名も「WQV-10」! 2001年発売

世界初のデジタルカメラ搭載時計「WQV-1」。アタッチメントの望遠レンズまで用意されていた。2000年発売

放射温度計を搭載した異色作「TSX-1300」(左)とTSR-100(右)は1994年発売。これで天ぷらの温度を測るとか、カッコよすぎる!

赤外線で友達と対戦できるゲームウオッチ「サイバークロス JG-100」(左2本、1994年発売)と、相手の攻撃を振動で伝える「サイバークロス JG-200」、1995年発売

非接触型決済システム「スピードパス」(エッソ・モービル・ゼネラル系GSで使えるアレだ)に対応したG-SHOCK「GWS-900」。2004年にネット通販でのみ発売

健康・フィットネス系ウオッチに採用されていた血圧・心拍などの計測における基礎技術は、最新のスマートウオッチと同じ

今話題のGPSウオッチは、PRO TREK「PRT-1」が世界初の商品だった! ただし、このときは座標を取得して表示するのが目的。1999年発売

筆者も愛用していたマップメーター「MAP-100」。歯車を地図の上で転がすと、光センサーが距離を検知する仕組み。地点間の直線距離でなく、道路に沿って距離を測れるのがとにかく便利だった。1989年発売

ランナー用ウオッチ「CHR-100」。胸ベルトのセンサーで心拍を計測し、時計に転送、表示できる。2005年発売

1946年、カシオ計算機の基礎を築いた最初の発明品「指輪パイプ」。記念館では、懐かしいだけでなく、初めて目にするものも非常に多い

カシオ近年のヒット作が……と思いきや、左のPRO TREKはこれまた懐かしい!