アルマ望遠鏡は6月18日、約4700万光年の距離にある棒渦巻銀河NGC 1097を観測した結果、その中心に位置する超巨大ブラックホールが太陽の1億4000万倍の質量を有することがわかったと発表した。

同成果は、総合研究大学院大学の大西響子氏らの研究グループによるもので、2015年6月発行の天文学専門誌「アストロフィジカル・ジャーナル」に掲載された。

今回、同研究グループは欧州南天天文台のデービス氏らが考案した、銀河中心部の分子ガスの動きからブラックホールの質量を求める方法で、超巨大ブラックホールの質量導出に挑戦した。感度が高く、ガスの速度を精密に測ることができるアルマ望遠鏡は、この方法に非常に適しているという。

観測ではまず、NGC 1097の中心付近に分布するシアン化水素とホルミルイオンが放つ電波を観測し、分子ガスの分布と運動の様子を精密に測定。次に、このガスがどのような重力のもとで運動しているのかを、天体モデルを作成して調査し、NGC1097の中心にある超巨大ブラックホールの質量は、太陽質量の1億4000万倍であることを突き止めた。

同研究グループは「アルマ望遠鏡は、わずか2時間ほどの観測でNGC 1097中心部のガスの運動データを得ることができました。銀河とその中心にある超巨大ブラックホールの関係を明らかにするには、多くの、そしてさまざまなタイプの銀河でブラックホールの質量を求める必要がありますが、アルマ望遠鏡を使えば現実的な時間で多くの銀河の観測を実行することができます。」とコメントしている。

アルマ望遠鏡で観測した、NGC1097中心部。シアン化水素の分布を赤色で、ホルミルイオンの分布を緑色で表現し、可視光画像に合成している。シアン化水素とホルミルイオンの両方が存在する場所は黄色になっている。(C)ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), K. Onishi (SOKENDAI), NASA/ESA Hubble Space Telescope