NVIDIAブースでは、発表されて間もないハイエンドGPU「GeForce GTX 980 Ti」を使ったデモや、VRコンテンツの体験コーナー、G-SYNC対応ゲーミングノートPCの展示などが行われていた。展示の様子とCOMPUTEX TAIPEIに先駆けて行われた説明会の内容を合わせてお伝えしたい。

第2世代MaxwellアーキテクチャがサポートするDirectX 12の機能

GeForce GTX 980 Tiは、Windows 10で採用されるDirectX 12に対応することが表明されている。DirectX 12のAPI「Direct3D 12」は、AMDのグラフィックス向けAPI「Mantle」と同様に、ハードウェアに近い部分でグラフィックス処理を行うことで、オーバーヘッドを取り除き、パフォーマンスの向上を実現するとしている。

DirectX 12ではAPIセットのほかに、Feature Levelと呼ばれる機能群も用意され、「Feature Level 120」「Feature Level 121」という2段階に分かれている。第2世代Maxwellでは、「Direct3D 12」に加え、「Feature Level 120」と「Feature Level 121」をフルサポートするという。

DirectX 12のFeature Level。ちなみにFermiやKepler、第1世代MaxwellではFeature Level 12_0までのサポートとなる

ブースではDirectX 12の「Feature Level 12_1」で提供される「Volume Tiled Resources」と「Conservative Raster」を利用したデモが公開されていた。

「Volume Tiled Resources」だが、古典的なテクスチャは何か画面に変化がある度にすべてをストリームする必要があり、無駄が多かった。そこでDirectX 11.2で、テクスチャをタイルのように小さく分割して管理し、変更があったタイルだけストリームする「Tiled Resources」という技術が導入された。「Volume Tiled Resources」では、開発者が独自に3つ目のパラメータを設定して処理に利用できる。

Volume Tiled Resources

Volume Tiled Resourcesを使った煙の表現

ブースでデモを行っていた

「Conservative Raster」は、ラスタライズに関する仕組みだ。ある図形を表示する際、通常はピクセルの中に図形が50%以上あるかで、そのピクセルを塗りつぶすかどうか判断していた。この方法だと、レイトレーシングによる影を生成した場合、ピクセルが欠けて、影の一部が表示されないことがあるという。「Conservative Raster」では、ピクセル内に図形が少しでもあれば、そのピクセルを塗りつぶすように判断する。これにより、影が欠けてしまうことを防ぐ。

Conservative Rasterのイメージ。Conservative RasterがOFFの状態だと三角形の塗りつぶしに欠けがあることがわかるだろう

その結果、影を生成した際、Conservative RasterがOFFだと影に所々穴が開いてしまっている。Conservative RasterをONにすればこれが解消できる

ブースでのデモ

ブースにはMicrosoftのBuild 2015でスクウェアエニックスが公開したリアルタイムCG技術デモンストレーション「WITCH CHAPTER 0[cry]」も展示していた。Build 2015ではGeForce GTX TITAN Xだったが、今回はGeForce GTX 980 Ti×4の構成となっている。それでも高フレームレートを維持していた

VRコンテンツ向けにも新たに機能を提供

NVIDIAはGeForce GTX 980 Tiに合わせて、VRコンテンツの開発者向けにAPIやライブラリがセットになった「GameWorks VR」を発表した。この「GameWorks VR」に含まれる技術のうち、「Multi-res Shading」についての説明があったので、ここで紹介しておきたい。

Oculus Riftを使ったVRの体験コーナー。かなり没入感のあるデモだ。筆者は以前にも同様の映像ソースを体験したことがあるのだが、そのときよりも解像度とフレームレートが上がっており、より迫力のある体験となっていた

これはどういうものか説明する前に、OculusをはじめとするVR対応のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)では、ディスプレイと目の間に光学レンズを置いている。光学レンズには周辺に歪みがあるので、ディスプレイでは、レンダリングした画面に対して、レンズの歪みを打ち消す処理を行っているという。

VR対応のHMDに表示する画面についての概念

レンズの歪みを打ち消すように画像を処理すると、画面端がつぶれてしまう

これまでのVR対応のHMDでは、画面全体を同じ解像度でレンダリングしていた。しかし、レンズの歪みを打ち消す処理を行うと、画面の端はつぶれてしまう。また、VR対応のHMDでは中心を見ることが多くなる。そこでは、画面の中心部分を通常の解像度、画面の端の部分を低解像度でレンダリングすることで、処理の負荷を低減し、パフォーマンスを向上させるのが「Multi-res Shading」だ。これにより、シェーダのパフォーマンスを1.3倍から2倍に向上させることができるという。

画面をいくつかのビューポートに分けてレンダリングを行う。視線が行きにくい端の部分は低解像度でレンダリングすることで処理の負荷を下げる

第2世代Maxwellでは複数の解像度を同時に処理できる

これにより、シェーダーのパフォーマンスを向上させることができるという

ノートPC向けG-SYNCも発表

NVIDIAはCOMPUTEX TAIPEI 2015に合わせて、ノートPC向けのG-SYNCを発表した。ブースでも各PCベンダのG-SYNC対応ゲーミングノートPCが展示され、実際にゲームを体験することができた。また、これまで明かされなかったG-SYNCの機能について解説があった。

G-SYNC対応ノートPCの展示

まずはG-SYNCについて、簡単におさらいしておくと、GPUが画面を描画するタイミングとディスプレイのリフレッシュレートを合わせることで、カク付きやティアリングを押さえて、なめらかな表示を可能とする技術だ。利用に当たって、NVIDIA製GPU搭載のグラフィックスカードと、専用モジュールを搭載した対応ディスプレイが必要となる。

ここまでは、これまでにも何度もお伝えしてきた内容だが、今回新たに2つの内容が説明された。まずは画面のちらつきを抑える技術だ。ディスプレイの場合、最大リフレッシュレートに加えて、最低リフレッシュレートが設定されている。

GPUによる画面の描画が、この範囲内に収まっているときはいいが、最低リフレッシュレートを割り込んでしまった場合、次に画面が更新されるまで何もない黒い画面が表示され、ちらつきの原因となるという。G-SYNCでは、GPUの描画が最低リフレッシュレートを下回ったときに、おなじ画面の複数回送出して、ちらつきを軽減する。例えば最低リフレッシュレートが40Hzのディスプレイの場合、GPUの描画が20fpsまで割り込めば2回、15fpsまで割り込めば3回画像を送出する。

fpsが最低リフレッシュレートを割り込んだ際に同じフレームを送出する

もう1つは「Variable Overdrive」だ。NVIDIAによると、ディスプレイの応答速度とリフレッシュレートが合っていないと、正しく色が表示されないのだという。リフレッシュレートが一定ならば問題無いが、G-SYNCの場合リフレッシュレートが可変なので、「Variable Overdrive」により、リフレッシュレートに合わせて応答速度を最適化し、正しい色を表示するという。

次のフレームでGrey2という色を出したいとき、リフレッシュレートが一定であればそこに向けて調整すればいい

しかし、リフレッシュレートが可変だとタイミングによって、Grey2よりも明るい、あるいは暗くなってしまう。そこでVariable Overdriveによりこれを最適化する

また、Windowモードでゲームをプレイする際にもG-SYNCを利用可能になった点も細かいが非常に重要なアップデートといえる。

Windowモードでのゲームプレイ時にも対応するようになった

競合となるAMDのFreeSYNCでは、以上のような機能には対応していないとして、これをアドバンテージとして攻勢をかけたい考えとみられる。

さて、ノートPC向けG-SYNCに話を戻す。ノートPC向けGeForce GPUで採用される「GM204」コアには、G-SYNCモジュールの機能が実装されており、専用のモジュールが不要で、対応パネルと組み合わせることでG-SYNCの機能を実現するという。

ノートPC向けG-SYNCではモジュールを必要としない