京都大学学術情報メディアセンター、京都市教育委員会、日本マイクロソフト(MS)、日本電気(NEC)の4者は6月2日、同センターが京都市教委と連携して京都市立西京高等学校附属中学校において、情報化社会に対応した1人1台学習環境を見据えた持ち帰り学習でのICT教育モデルを構築するため、大量の学習データから生徒の学びの変化を検証する実証研究(プロジェクト名「京都ICT教育モデル構築プロジェクト」)を開始したと発表した。

京都市立西京高等学校附属中学校での授業風景

研究テーマは「持ち帰り学習でのICT教育モデル構築 ~完全1人1台のタブレットPCを活かした『持ち帰り学習』と『学習データ分析』~」。1人1台のタブレットPCを活かして持ち帰り学習することで、学校と自宅での生徒の日々の学習の変化を捉えて分析し、持ち帰り学習でのICT教育モデルを構築するというもの。実施期間は2015年4月~2016年3月31日の予定で、研究実践校は西京高附属中の全119名、3クラス。

実験で使用するICT環境は、タブレットPCがWindows 8.1 Proを搭載するNEC「VersaPro J タイプVT」を140台、電子黒板はWindows 8.1 Proを搭載する同じくNECの「BrainBoard 65型」を3台、その他に無線LAN環境や充電保管庫、サーバ、デジタル小テストシステム、授業支援システム、技術・運用サポートなど。

同研究の開始にあたり、MSとNECは協力パートナーと連携し、学習データ分析などに利用するデジタル小テストシステムなどを提供する。また、生徒が利用するタブレットPCや電子黒板、クラウド・プラットフォームなどのICT環境整備も提供する。

西京高附属中の導入システム図

京都市教委は京都大学の実証研究に賛同すると共に、西京高附属中を実証研究校に指定する。同研究の成果を踏まえて、2016年度以降の市立学校におけるICT活用授業をいかに推進していくかを研究したいと考えているとのこと。

西京高附属中では、日々の自宅学習の記録やデジタル小テストの結果など大量の学習データを蓄えて分析した後、分析結果を指導に活かす教育を実践する。また、各教科や総合的な学習、部活動などにおいて、生徒が自分の意見を電子黒板で発表したり、生徒同士がグループで議論しながらタブレットPCでレポートを作成したりするといった、思考力・判断力・表現力といった「情報化で役立つスキルの向上」に主眼を置いた授業に取り組むという。

4者の役割分担は、京都大学は学習ログ・データの分析手法を開発し、学習ログ・データから生徒の学びの変化を分析する研究を行う。京都市教委は、実証研究に必要な環境や情報を提供し、研究成果を踏まえて市立学校におけるICT活用のあり方を検討していく。

MSは支援企業を取りまとめると共に、教育機関向けの統合型情報共有クラウド・サービスである「Office 365 Education」と、クラウド基盤「Microsoft Azure」を提供する。

NECはNECフィールディングと連携し、学習データ分析に関わるICT基盤の整備を行う。また、生徒が利用するタブレットPCや電子黒板などのICT機器の提供や、システム構築をトータルに行っている。さらに、ICT機器の保守を行うと共にICT機器に関わるヘルプデスクを開設、必要に応じて要員派遣も含む技術・運用サポートを行う。

今後は、教育関係者などに向けた公開授業と、実証研究成果の公表を予定している。