京都大学は5月26日、3D映像などを観ているときに発生する「映像酔い」時では、右脳と左脳の活動が乖離する現象を発見したと発表した。

同成果は同大学大学院人間・環境学研究科の山本洋紀 助教とキヤノンの宮崎淳吾 研究員、明治国際医療大学らの研究グループによるもので、国科学雑誌「Experimental Cell Research」に掲載される予定。

「映像酔い」は3D映像やドローン映像などを観て、目の痛みや吐き気、めまいといった症状が発生する状態のことで、医学的には車酔いや船酔いと同じ動揺病の1つとされている。その発生原因はよくわかっていないが、映像の動きを検出する脳部位であるMT+野が関与していると考えられている。

今回の実験では14名の被験者に映像酔いを起こしやすい動画と起こしにくい動画を6分ずつ見せ、その間の脳活動を測定した。その結果、映像酔いを訴えた8名の被験者のMT+野では、右脳と左脳の活動が乖離していることがわかった。一方、映像酔いにならなかった6名の被験者のMT+野では特に乖離は見られなかった。

MT+野の左右脳間の相関関係数。棒グラフが高いほど、左脳と右脳の脳活動の相関が高い、つまり、活動が似ていることを意味する。

MT+野は映像の動きの検出だけでなく、映像酔いの前兆である眼や身体の動きの制御・検出にも重要な部位であることから、今回の結果はMT+野が映像酔いに深く関わっていることを強く示唆するものとなった。

今後、研究を進めることで、映像酔いだけでなく動揺病が生じる仕組みの解明が期待されるほか、MT+野の乖離を減少させることで快適な映像を提供する技術の開発につながる可能性がある。