Microsoftは5月13日(現地時間)、Windows 10のエディション構成を明らかにした。先週は「Skype Translator Preview」のパブリックリリースなど興味深い話題も多いが、やはり多くの読者が興味を持つであろうWindows 10のエディションを整理し、報告する。

コンシューマー向けエディションは3種類

ここ数年のWindowsにおける混迷はエディションにも影響を及ぼしてきた。Windows VistaはStarter / Home Basic / Home Premium / Business / Enterprise / Ultimateの6エディション。Windows 7も基本的には同じだが、新興市場向けだったStarterとHome Basicの役割が入れ替わっている。

そして、Windows 8 / 8.1は無印 / Pro / Enterpriseの3つに整理されたが、Microsoftの戦略的理由でリリースしたWindows 8.1 with Bingや、厳密にはWindows 8.xファミリーではないものの、ARMアーキテクチャとなるWindows RTも存在した。

そして、Windows 10はデスクトップPCからモバイルデバイスまで1つのOSでカバーする「One Windows」を掲げて来たが、ようやくエディション構成が判明した。ここではWindows 8.xと比較しながら、Windows 10の各エディションを解説しよう。

さまざまデバイスで同一のOSを提供するスタイルを指して「One Windows」を標榜してきたMicrosoft。そこには1つのプラットフォームや1つのストアも含まれる

Windows 8.xの無印版に相当するのが「Windows 10 Home」だ。基本的な機能に加え、音声パーソナルアシスタントのCortanaや、Windows Helloに代表する各生体認証などにも対応する。大多数のユーザーは本エディションで問題ないだろう。

次に、Windows 8.x Proに相当するのが「Windows 10 Pro」。ビジネス用途を想定し、リモート管理やCYOD(企業が認可した複数のデバイス候補から従業員が使用するデバイスを選択する仕組み)を想定した機能、Windows Update for Businessなどをサポートする。

なお、同社公式ブログでWindows and Search Marketing担当CVPのTony Prophet氏は、Cortanaに関して「各市場でローンチした時点で利用可能になる」と説明し、日本語による音声コントロールにも対応する可能性は高まった。

虹彩認証でWindows 10のロック解除やWebサービスへのサインインを実現する「Windows Hello」

ファイル検索や情報収集、メール作成など多様な場面に利用できる音声パーソナルアシスタントの「Cortana」

この説明だけでは、個人ユーザーがWindows 10 Proを選択するメリットは少ないように見えるだろう。だが、リモートアクセスなど非ビジネスユーザーにも便利な機能をエディションの差別化に用いてきた過去を踏まえると、個人ユーザーでもWindows 10 Proを選択肢に加えるべきだ。

そして、Windows 10 for Mobileなどさまざまな呼称を用いてきたモバイルデバイス向けは「Windows 10 Mobile」に決定した。こちらはWindows Phone 8.1の後継OSにあたる。Windows 10 Mobileに関してはBuild 2015で披露した「Continuum for phone」が目新しい(タブレットモードとデスクトップモードをシームレスに切り替えるWindows 10のContinuumと差別化するため、改称したようである)。

「Continuum for phone」で起動したExcel Preview。キーボードやディスプレイをスマートフォンやタブレットに接続して使用する

「Continuum for phone」のデスクトップ。スタートボタンを押すとWindows 10 Mobileのメイン画面が現れる

Windows 10 Home / ProはWindows 7もしくはWinodws 8.1から、Windows 10 MobileはWindows Phone 8.1から、リリース後1年間に限り、無料アップグレードが可能となる。ここまでは個人向けエディションだ。

教育関係者向けや企業向けモバイルエディションも登場

大量のライセンス購入を求める大手企業向けには、「Windows 10 Enterprise」を用意する。先のブログ記事ではEnterpriseエディション関して目を引く機能は紹介されていないものの、クライアントOSですべての機能を欲する方は今後の情報発表に注目すべきだろう。

企業向けエディションはEnterpriseに限らず、教育関係者向けの「Windows 10 Education」が新たに加わった。一般的な教育関係者向けソフトウェアと同じく、教師やスタッフなど学校関係者、学生を対象にしたAcademic Volume Licensingを適用。ちなみに機能差は存在せず、Windows 10 HomeやWindows 10 Proのアップグレードパスとなる。

スマートフォンおよび小型タブレットを利用するビジネスユーザー向けには、「Windows 10 Mobile Enterprise」を用意した。VL(ボリュームライセンス)ユーザーに提供し、セキュリティやデバイス管理面の強化を図っている。

そしてIoT用のWindows 10として「Windows 10 IoT Core」をエディションに加えた。こちらもすでにInsider Preview版を公開しているため、予想の範囲内だが、MicrosoftはATMやPOSデバイスでの利用や、Raspberry Piのようなシングルボードコンピューターでの利用を想定している。

「Windows 10 IoT Core Insider Preview」を試すには、Raspberry Pi 2やMinnowboard Maxに加えて、Visual Studio Community 2015 RCとWindows 10 開発者ツールが必要となる

以上がWindows 10における7エディションの概要だが、気になるのはアップグレードパスである。例えば32ビット版Windows 7から64ビット版Windows 10へアップグレードできるのか。Windows 8.1無印からWindows 10 Proへアップグレードできるのか、といったシナリオだ。

前者はアーキテクチャの問題があるものの、各プレビュー版でWIM(Windowsイメージ)ファイルを用いたアップデートを繰り返してきたことを踏まえると、可能性は残されいてる。後者も単なる機能差であり、Windows 8.1なら「Windows 8.1への機能の追加」が示すように、上位エディションへのアップグレードも可能だ。

Windows 8.1無印の「Windows 8.1への機能の追加」を実行した状態。もちろん有償だがWindows 8.1 Proへのアップグレードが可能である

加えて、32ビット版OSにユーザーをとどめるメリットは少ない。もちろん予測の域を超えないため、Microsoftの公式発表を待つしかないが、Windows 10の無料アップグレードは64ビット化するよいタイミングとなるはずだ。

阿久津良和(Cactus)