急速に普及するクラウド環境。昨今では、国内外を問わずに数多くのクラウドサービスが登場している。その中でも、特に多くの実績を誇るサービスが、Amazonが提供するAmazon Web Services(以下 AWS)である。

多彩な機能と豊富な導入実績で、ユーザーから多くの支持を集めるAWS。ただその一方で、海外サービスならではの、扱い難さも存在する。そこでポイントとなるものは、用途やコストに応じたクラウドサービスの使い分けである。

本記事では、2015年4月16日に開催されたセミナー「AWSと国産クラウドの使い分けで無駄なコスト削減~80分でわかるあなたに最適なクラウド運用~」の内容をもとに、マルチクラウドによる業務効率の向上とコスト削減の方法について紹介する。

AWSとの競争によって向上する国産クラウド

AWSと国産クラウドの動向と賢い使い分け方について講演するGMOクラウド株式会社 営業部チーフ 西木 有理氏

クラウドが普及する昨今、国内外を問わず数多くのクラウドサービスが登場する中、各クラウドベンダーはこの淘汰圧に打ち勝つ戦略を続々と繰り出し差別化を図る。

「世界トップクラスの実績を持つAWSは、多彩な機能や導入ノウハウにおいて、やはり抜きん出たものがあります。ただ世界標準のサービスであるため、日本国内の利用においては、国産クラウドの方が適している部分もあります」と語るのは、GMOクラウド株式会社 営業部 チーフ西木氏である。

「現在、日本国内のクラウドサービスは、先行するAWSに対抗するために品質・価格の面で競争力をつけようとしています。また差別化を図るために、ゲーム開発に特化したり、Webサービス面を強化するなど、それぞれが特長を持つようになってきています。AWSも含め、これらの多種多様なクラウドサービスを環境や用途に合わせて上手に使い分けるマルチクラウドが、これからは求められるようになるでしょう」(西木氏)

クラウドサービスを選定する3つのポイント

1.サービス仕様・機能

様々な状況に対応しなければならない大規模環境であれば、AWSが持つ多彩なサービス仕様や機能が力を発揮するだろう。一方で、汎用的な機能が一通り揃っていれば良いのであれば、安価な国産クラウドサービスを利用するのも手だ。

2.コスト

AWSの利用において最も注意が必要な点のひとつが コスト面である。まず、転送量によって料金が変わる従量課金制であること、海外サービスであるため為替レートの影響を受けること。これにより海外サービスの場合、料金は常に変動し、月々の支払いを見通すことが難しい。またAWSの場合、支払いは基本的にクレジットカードで行われることも念頭に入れておく必要がある。

3.サポート

言語に関しては気になるところ。日本語コミュニティも多いので開発に際しては、さほど困ることはないだろう。ただ、実際に環境を利用するユーザーにとっては、英語の記述が多いと若干ハードルが高くなる。この辺りはしっかりと調べておこう。

用途に応じて使い分けるマルチクラウドでコストを削減

AWSは特に大規模環境において大きなポテンシャルを発揮する。一方、GMOクラウドが提供するクラウドサービスである「GMOクラウド ALTUS(アルタス 以下ALTUS)」では「特に個人から中規模レベルに向けたところに焦点を当てています。またAWSとの互換性もあるので共存も可能です」(西木氏)

ALTUSは国産初のリソース型パブリッククラウドである。一般的なプラン選択型の場合、CPU・メモリ・ディスクがセットになっていることが多い。この場合、例えばディスク容量が大きいプランを選ぶと、CPUやメモリのリソースが余剰となることがある。だが、CPU・メモリ・ディスクを自由に選択できるリソース型であれば、このような無駄を省き、コストの削減を図ることができる。

「例えばスケール変化が多い、または転送量が多いサービスの部分をAWSからALTUSに移行するなど、複数のクラウドサービスを使い分けるマルチクラウドによって、大きなコスト削減が図れるでしょう」(西木氏)

GMOクラウドが提供するクラウドサービスALTUSは、利用目的に合わせてリソースを選択することが可能

【事例】特長に合わせたクラウドサービスの選定によって新たなサービスを創出

株式会社ニッセイコム サポート&サービス本部 クラウドソリューションセンター 新井洋一氏

当日のセミナーでは、具体的な事例紹介として株式会社ニッセイコム サポート&サービス本部 クラウドソリューションセンター 新井洋一氏にて講演が行われた。

1974年に設立したニッセイコムは、製造業・流通業・サービス業から公共・文教分野などの様々な分野を手がけるシステムインテグレーターである。また学校向け財務会計システム、健康保険組合システムなど、自社開発パッケージにおいても多くの導入実績を誇る。そして現在同社が新たに開発を手がけているのが、クラウドを活用する、とあるシステムだ。基盤としてGMOクラウドが活用されている。

「このシステムはクラウドを利用した企業向けコミュニケーションツールです。場所やデバイスを問わずにアクセスして利用することを目指しています」(新井氏)

開発中のシステムのため、ここでは詳細に述べられないが、クラウドと連携することで、機能が大きく進化するものだ。

なお当初、このサービスはAWSを用いて検証を行っていたとのことである。機能、性能においては特に大きな問題はなかったが、一つだけ大きな課題が見つかった。それが従量課金の問題である。

「定額制と従量制を比べた場合、サービスとしての提供しやすさは間違いなく定額制です。お客様としても、気兼ねなく利用できる定額制の方が使いやすいでしょう。しかしAWSは従量課金制なので、定額制の料金設定が非常に難しい。ビジネスとして考えると、クラウドサービス側も定額制でなければ成り立ちません。そこで定額制でありリソースごとのスケールインやスケールアウトに対応できるGMOクラウドさんを選択しました」(新井氏)

組み合わせと使い分けによって最適なクラウドサービスを

多くの機能と実績を誇るAWSは、その利用環境が大規模であればあるほど大きなポテンシャルを発揮する。だが逆に小規模環境の場合は、そのポテンシャルを持て余すこともある。

また、ニッセイコムの事例のように、クラウド環境を基盤にサービスを展開する場合には従量課金と為替レートなどの壁が立ちはだかることとなる。だがこの部分を、例えばALTUSのような国産クラウドサービスに置き換えることができれば、これらの課題を解決に導くことができる。

今後、AWSと国産クラウドサービスは、単なる競争関係ではなく、システムの中で互いに助け合う共存関係ともなることだろう。そしてそれは、ユーザーにとって選択肢の幅が広がることにもつながるはずだ。

GMOクラウド パートナー制度

GMOクラウドでは、販売、開発、構築・運用、それぞれにおいてビジネス連携するパートナー戦略に注力しており、新規パートナーを募集している。パートナーには、開発環境の無償提供や技術支援、営業・マーケティング支援などのGMOクラウドからの様々なサポートの他、仕切り価格(割引率は要問合せ)でのサービス提供などの特典もあるとのことだ。ノルマも一切なく、他社クラウド・ホスティングベンダーとのパートナー契約の併用も可能だ。詳しくは以下のURLにて紹介されているので興味のある方は参考にして欲しい。 http://partner.gmocloud.com/