従来型ではコストが合わない、スマホ基盤で作り直しが必須に

では、なぜ今Androidなのか? 答えは両者とも同じ。「コスト」だ。

家電はそれぞれ、専用のSoC(System on Chip)を使って開発される。いままでは、フィーチャーフォンではフィーチャーフォン向けの、テレビではテレビ向けのSoCが使われていた。機能アップはそれぞれで行うのが当然でもあった。フィーチャーフォンやテレビに大きなニーズがあり、それらが独自の価値をもっていた時代は、それでも良かったし、うまくいっていたともいえる。

だが、いまや時代は変わった。

スマートフォンは年間に最低でも数億台生産される。半導体の技術開発も、それに付随するソフトウエア開発も、すべてスマートフォンを基準に進む。他の家電向けは圧倒的に不利な状況だ。

しかも、以前と異なり、「純粋な電話に近い機器」であってもSNSやリアルタイムメッセージングの機能は必要だし、「テレビという放送を受信する機器」においても、表示する映像はインターネット経由でやってくるものが増えた。とすると、そうした新しい環境に対応できるOSを準備する必要があるが、こちらも、もはや独自に開発を続けていくのが難しくなる。

世の中には、スマホ向けに作られたモダンなOSがきちんとある。AndroidやFirefox OSなどがそれだ。そうしたものは、スマホ向けのSoCを使って効率的に動作する。ならば、製品そのものも「求められる姿や使い勝手を実現したまま」スマホの技術をベースに作るほうが有利、という結論に至る。スマホの技術が未熟な頃は、そこから「スマホとは操作性が異なる機器」を作るのが大変だったが、今はそれも可能だ。とくにGoogleは、Android 5.0以降、スマホ・タブレット以外へのAndroid応用を進めており、Android TVはその成果である。

ARROWS ケータイの中身はスマホそのもので、形が二つ折りでUIがちょっと違うだけだ。新ブラビアは、スマホ・タブレット用SoCメーカーであるMediaTekと協業で作った「メインSoC」と、4Kの高画質化・高解像度化を担当するソニーオリジナルのLSIである「X1」を組み合わせて使っている。高画質化はX1が担当するので「ソニーのテレビ」としての独自性を保ち、Androidとしてのアプリの動作や開発の容易さはMediaTekと協業で作った「スマホライクなSoC」でカバーする構造になっている。

4Kブラビアは、高画質化を担う「X1」プロセッサーのほか、MediaTekと共同開発したSoCを搭載

スマホアーキテクチャによる二つ折りケータイ(ガラホ)はKDDIからも登場しているし、今後、日本で一定の数量を占める存在になるのはまちがいない。またテレビについては、今年登場する4K製品は大半が、2K製品でも低価格モデルをのぞけば多くがスマホ由来のモダンOSになっていく。日本メーカーとして、新しい器にいままでの良さ「だけ」をどう盛りつけられるかが、商品作りのキーになってきそうだ。

西田宗千佳の家電ニュース「四景八景」 バックナンバー 一覧へのリンク
http://news.mynavi.jp/tag/4k8k/