米Cypress Semiconductorは米国時間の4月14日、エンド・ツー・エンドのBluetooth Low Energy(BLE)ソリューションを提供する「PRoC BLEモジュール(EZ-BLE PRoC Module)」を発表し、併せてプレス向け説明会を開催した。

CypressといえばPSoC(Programmable System-on-Chip)で有名などで有名であるが、2014年11月にはこのPSoCにBLEを追加した「PSoC 4 BLE」を発表している。実はこの発表の際に、PSoC 4 BLEからAnalog Blockを抜いたPRoC BLE(Programmable Radio-on-Chip)というラインアップも同時に用意されていることが明らかにされたが、今回のPRoC BLEモジュールは、このPRoC BLEに必要な外付け部品をモジュールの形で集約したものとなる。

この背景にあるのは、BLEそのものの需要が急速に増加している一方で、BLEチップのみを単体で購入して設計した場合、RF周りの設計や認証にかかる手間が馬鹿にならないから、という点だ(Photo01)。

Photo01:実はPSoC BLEについても、発表日はまだ技適が取得できておらずデモが行えない、なんて話があった。量産などで最後に立ちはだかるのが、この認証関係である

また、従来のモジュールではBLEチップとBLEモジュールの提供元が違うから、ソフトウェアスタックなどに関しての入手が面倒とか、必ずしもモジュールに準拠した形でのソフトウェアが提供されるとは限らない(Photo02)などの問題もあった。Cypressは、PRoC BLEという形ですでにBLEチップをラインアップしている訳で、これを自社でモジュール化することで、こうした問題を解決した、としている。特に認証に関しては、主要な国の無線規格認証を取得しており(Photo03)、モジュールをそのまま利用すれば再認証の必要がないのは大きなメリットである。

Photo02:冒頭に出てくるQDIDは、Bluetooth SIGから取得する「認証設計ID」の事で、QDIDそのものの申請費用は無償化されたが、製品化に必要な申告IDなどは引き続き結構な金額がかかる

Photo03:この原稿を書いていて気が付いたのだが、中国のCCC認証は今のところ取得されてない模様。ということで、グローバルではあっても全世界でOKという訳には行かない模様

モジュール化のメリットに関してまとめたのがこちら(Photo04)である。競合製品と比較すると、シリコン設計から一貫してCypressで行っていることがメリット、という訳だ。実際PSoC Creatorの場合、Component Configuration ToolでBLEを追加すると、自動的にファームウェアが生成されるので、あとはこれを呼び出すようにプログラムを書けば完了ということになる(Photo05)。BLE Stackそのものも付属しており、PSoC Creatorからこれを直接コンフィギュレーションすることも可能である(Photo06)。

Photo04:開発者にとっては、PSoC Creatorでそのまま扱えるのがメリットということになる

Photo05:3番は「開発」とあるが、実際にはPSoC Creatorが自動生成してくれるので、通常ここを書き換える必要はまず無い

Photo06:このあたりは当然アプリケーション要件によって変わってくる部分でもある

PRoC BLEモジュール自体は10mm×10mm×1.8mmという大きさで、アンテナを含めて全部実装されており(Photo07)、他社のモジュールと比較しても十分に競争力があると同社では考えているようだ(Photo08)。モジュール価格は8.29ドル(DigiKeyでの1000個ロットの価格)で、これを例えばパナソニックのモジュールと比較した場合、4.16ドルの節約になるとしている(Photo09)。

Photo07:業界最小という訳ではないが、かなり小さい部類であることは間違い無い

Photo08:余談だが、BLEチップの最大手はNordic Semiconductorで、同社の紹介ページには30製品ほどがラインアップされている。流石にこれを全部掲載するのは無理にしても、どれか製品を1つ入れておいて欲しかったところだ

Photo09:これはまぁ試算の前提が微妙なところではあるが

話をPRoC BLEモジュールに戻すと、PRoC BLEはアナログモジュールが欠けている以外はPSoC BLEと同じものなので、モジュールも単なるRFモジュールというよりは、むしろ10mm×10mm角のBLE搭載マイコンモジュールと考えたほうが良い。もちろん、これだけ小型のモジュールだとそう多くの信号ピンが使えるわけではないが、それでも14本の信号線が利用できるから、これを使ってSPI/I2C/UART/CapSense/ADC/PWM/GPIOなどを利用できる。線をどう割り当てるか、はPSoC Creatorの中で好きに構成できるから、自由度はかなり高い。評価アダプタもすでに準備できており、サンプル出荷も開始されている(Photo10)。

Photo10:個人的には、このプログラムな部分をもっと前面に押し出したほうがインパクトがあるのではないか? という気はした

ちなみに今後のロードマップであるが、現時点では8種類のモジュールが予定されている。今回発表されたのが左上の「CYBLE-022001-00」であるが、今年第2四半期には、今後はPSoC BLEを搭載した「CYBLE-024008-00」が予定されている。第3四半期には、Flash Memoryを256KBに増量したPSoC/PRoC BLEモジュールと、シリアル通信をそのままBLEにBridgeするようなEZ-BLE Serial Moduleも投入される。第4四半期には、拡張温度(-40℃~+105℃)対応PRoC BLEモジュールが追加され、2016年にはさらに2製品が追加される予定だ。繰り返しになるが、今回のPRoC BLEモジュールの出荷開始は5月頃になる見込みである。

Photo11:ちなみにこの表の時期は何れも「サンプル出荷開始」時期である。なので量産出荷開始は、さらに1四半期程度後になると考えるべきだろう

最後に質疑応答の中から一点。現状のCypressのPSoC BLE/PRoC BLEはいずれもBluetooth 4.1に準拠した製品である。ただBluetooth SIGはすでにBluetooth 4.2を発表している。このBluetooth 4.2への対応であるが、既存のPSoC BLE/PRoC BLEもほとんどの拡張機能にはファームウェアの更新の形で対応できる(例えばBluetooth Smartのパケットサイズを10倍に拡大するなど)が、ただし特に強化されたセキュリティ対応に関しては完全には対応し切れないと思う、との事。ただ同社はこれとは別に、現在Bluetooth 4.2に完全対応したチップの開発も進めており、こちらは時期が来たらまた改めて発表する、との事であった。ということで、今回発表のPRoC BLE Moduleや、続いて登場するであろうPSoC BLE Moduleも、ある程度まではBluetooth 4.2への対応が後追いで可能になると見ても良さそうである。