一方で、ODMのもうひとつの価値を考えると、VAIO Phoneのやり方はやっぱりよろしくなかった、と感じる。

ODM・OEMは「バッジビジネス」と言われることが多いが、現在、バッジを付けるだけで成立している製品は少なくなっており、きちんとしたブランドコントロールが重要視されている。

ここでいうブランドコントロールとは、質感や「梱包」の点だ。

デザインを大きく変えられない場合、素材や仕上げを変えて付加価値を付けることは多い。VAIO Phoneの場合も背面のカバーを変えているが、「ブランドの名前を全面に立てた製品」の割には、カスタマイズ幅が小さすぎる。

VAIO Phoneの背面。ガラスを張ったデザインだ

ODMでは製造だけでなく、手間のかかる梱包までも担当することが多い。VAIO Phoneにしても、オリジナルの「箱」が用意されていて、そこではブランド価値向上の試みがなされている。だが、スマホの梱包に使うビニール袋や、同梱品まではあまり気をつかっていないようだ。箱を開けた時の高級感を演出するため、でき合いのビニール袋を使わないメーカーもあるし、同梱品のケーブルやヘッドホンなどに、より良質なものをチョイスする企業もある。

デザインや箱を開けた時の感覚などは、「Out of the Box Experience」などと呼ばれ、商品性のうちとする声は大きい。アップル製品はその代表格だし、ハイエンドスマホでも、そうした部分での価値を追求するものは増えている。ODMと一緒に製品を作るということは、そういうところにも気をつかって管理するということなのだ。

そのため業界には、ODMとの折衝や生産管理を専門とするプロフェッショナルがいる。彼らに頼らなかったせいで余計な期間やコストがかかったメーカーも少なくない。ODMは優れた存在だが、任せてしまえば彼らの論理で品物を作られる。そこで交渉し、「より自社の求める製品」を作るよう交渉を重ねることが、今の家電作りの一つの形といえる。

今回のVAIO Phoneは、筆者も商品性に問題があると思う。課題はELUGA U2に似ていることでも、ハイエンドでないことでもない。「ブランドを重視したモノ作りを、ODMとともに行った」ように見えないことが問題なのだ。VAIOに人々が抱く期待がその程度だと思っているなら残念だし、そうでないなら、もっともっとやることはあっただろう。

VAIO Phoneとその箱