既報のとおり、Windows 10などMicrosoftの次期製品・サービスを発表するメディアブリーフィングが開催された。ここでは、当日のレポート記事を補足するべく、もう少し詳しい内容を述べておきたい。なお、1月23日に公開されたWindows 10の新ビルドについては、こちらの別記事を参照いただきたい。

Windows 10やSpartanと融合する「Cortana」

まず、Windows 10に関しては大方の予想どおりパーソナルデジタルアシスタント「Cortana」が統合されることになった。音声による操作やWeb上の情報検索、ローカルファイルの検索など自然な対話で情報やデバイスを制御することを目的としている。同機能はWindows Phone 8.1に引き続き、Windows 10 for phones(仮)も同様のUIも実装することとなった。

Windows 10上で動作するCortana。タスクバー上の検索ボックスがメインUIとなる

Windows 10 for phones(仮)で動作するCortana。ユニバーサルアプリの強化により、ルック&フィールは同じである

Cortanaは新しいブラウザ「Spartan(開発コード名)」でも使用できる。Spartanはキーボードやペンを使ってWebページに直接注釈をつける機能や、クリッピングにコメントを加えてOneNoteや他のユーザーと共有するといった機能を搭載する予定だが、ポイントはCortanaによる検索だ。デモンストレーションを行ったOSグループCVPのJoe Belfiore氏によれば、メールやメッセージから蓄積したデータをもとにユーザーのアクションを想定し、音声入力を行う際に適切なアクションを提示するという。

新レンダリングエンジンを搭載した開発中のWebブラウザー「Spartan」。クリッピング機能を強化し、手書きコメントや付箋によるコメントを追加・共有できる

Webページに直接コメントや絵図を書き込むこともできる。タブレットを手帳やノートのように使うユーザーには便利な機能となるだろう

疑問が残るWindows 10のXbox Oneサポート機能

XboxとWindows 10の関係についても補足しておこう。そもそもXbox OneにはGame DVRと呼ばれるプレイ映像を録画し、編集・共有する機能が備わっている。新たなWindows 10が備えるWindowsストアアプリ「Xbox」は、このGame DVRをサポートし、Xbox Oneでプレイした結果を共有できるというものだ。

Windows 10デバイスからアクセスしたGame DVR。ゲームのアクティビティや動画編集などが可能だ

正直なところGame DVRのサポートは、さほど驚くことではない。また、今回発表したストリーミング機能はLANを経由し、Windows 10デバイス上でXbox Oneゲームをプレイ可能にするというものだ。Wii UとWii U GamePad、PlayStation 3とPSPにおけるリモートプレイのように、ストリーミング機能を用いたゲームプレイはすでに一般化していると述べても過言ではない。

ゲームタイトルはストリーミングにとどまるが、Xbox One関連機能は各デバイスから参照可能になる

さらに、このクロスデバイスプレイはDirectX 12対応ゲームに限られ、現時点では一部のゲームに限定される。さらに有償のXbox Liveゴールドメンバーシップの契約が必要なため、コアなゲーマーでない限り、Xbox OneのサポートはWindows 10のチャームポイントとはならないだろう。

80インチ超の4Kディスプレイを搭載した「Surface Hub」

今でも多くの会議室にはホワイトボードが設置されているが、近い将来は「Microsoft Surface Hub」に置き換わるかもしれない。端的に説明すると、55インチまたは84インチの4Kディスプレイを備えたSurfaceだが、独自のロック画面を持ちつつもタッチ操作や内蔵カメラ、マイクといったSurface Pro 3と同じ機能を備えたデバイスである。

会議室の"顔"になりそうな「Microsoft Surface Hub」。55インチモデルと84インチモデルの2種類をリリースする予定

MicrosoftはSurface Hubを、「インスタントリモート会議やデジタルホワイトボード機能を持ち、会議参加者のデバイスにコンテンツ転送も可能になる」と説明した。このあたりはWindowsの共有機能やリモート操作機能を踏まえれば、容易に想像がつくだろう。もっとも、Surface Hubは今日明日リリースされる製品ではなく、公式サイトには今後開催するIgniteやWPCといったイベント名が並んでいる。

Microsoftが作成したイメージカット。Surface HubにはLyncと思われるビデオ会議システムとタッチ操作によるコンテンツ説明が両立している

これらのことからSurface Hubのリリースは、2015年後半から2016年前半あたりになりそうだ。2013年にMicrosoft創業者のBill Gates氏が、自宅にある80インチのPerceptive Pixelディスプレイを指し、「そのうち価格もこなれて普及するよ」とネットで語っていたことを思い出す。

魔法の瞬間を体現する「Microsoft HoloLens」

個人的に今回の発表で本命となったのが「Microsoft HoloLens」だ。Microsoftは仮想空間と現実世界を融合する試みを続けており、2013年には「IllumiRoom」も発表し、2014年はパワーアップした「Kinect for Windows v2センサー」をリリースしている。そして2015年はHoloLensだ。内蔵レンズでユーザーの視線を追いかけ、その先にあるホログラフィーが発する音を内蔵スピーカーで聞き取る。これらの処理に必要な専用ユニットを搭載し、PCやクラウドサーバーといったユニットを必要とせず、単独で数TBの処理を可能とするデバイスだ。

ディスプレイの周りにFPSゲームの背景や敵からのビーム残像をリアルタイムで描く「IllumiRoom」

Microsoftが発表したホログラムインターフェース「Microsoft HoloLens」

1月21日のプレスブリーフィングでは、OSグループのテクニカルフェローであるAlex Kipman氏がHoloLensの説明を行い、同グループの開発メンバーが「HoloStudio」と呼ばれる仮想ツールボックスでホログラフィーによるオブジェクトを作るデモンストレーションを披露している。

OSグループのテクニカルフェローであるAlex Kipman氏

開発チームのメンバーが使用した「HoloStudio」で作ったオブジェクト。映像を見る限りHoloStudioと他のデバイスをつなぐケーブル類は見当たらない

Kipman氏はWindows 10と同じマイルストーンで開発が進むと述べ、Windows 10にはHoloLensを制御するAPIを組み込むという。前述したIllumiRoomはいまだ世に登場していないが、HoloLensは2015年内には現実のものとなりそうだ。すでにOculus Riftなど仮想ヘッドマウントディスプレイ(HMD)は存在するが、いまだSDKを利用したサンプルの域を脱せず、我々の生活やUX(ユーザーエクスペリエンス)を変えるに至っていない。

HoloStudioを装着したイメージカット。タッチ操作をデバイスから空間に移行させている

HoloStudioの応用イメージ。3D CADで作ったオブジェクトを立体化し、視覚的に確認している

Windows 10のAPIサポートおよびSDKのリリースによって、HoloLensは他社の追従を許さない重厚なプラットフォームになる可能性がある。HoloLensはMicrosoft CEOであるSatya Nadellaが言うように「これらは我々が享受する魔法の瞬間である」を体現する存在となるだろう。

阿久津良和(Cactus)