国際電気通信基礎技術研究所(以下、ATR)、NTT、島津製作所、積水ハウス、慶應義塾大学は12月4日、一般の利用者が日常的に生活する場において、その活動を支援するための新たなインタフェースとして「ネットワーク型ブレイン・マシン・インタフェース」とその周辺技術の開発に成功したと発表した。

同研究開発は、高齢者や体の不自由な人の自立社会の実現に役立つ基本技術として、実験室環境だけで使えるBMIを実際の生活環境で利用できるようにするための技術の実現を目指してきたもの。

同研究開発で実現するネットワーク型BMIは、人の日常生活の場である自宅や診療所などで、脳情報、環境情報などを携帯型の脳活動計測装置および各種センサーで取得し、ネットワークを通じて大規模なデータとして伝送・解析することで、一般の生活環境において、特別な訓練や負担なしに利用できるBMIの実現を可能にする。

今回、一般の生活環境において、高齢者、要介護者に加え、一般の人に対し、その意図を脳活動から読み取って家電の操作や環境の制御を行ったり、その情動状態を相手に伝えたりするなど、生活支援サービス実用化のための基盤技術を確立した。

「ネットワーク型ブレイン・マシン・インタフェース」の仕組み

一般の人が自宅などで利用可能な小型・軽量の「携帯型脳活動計測装置」「ネットワークエージェント基盤技術」「実環境実験設備(BMIハウス)」「 脳情報解析技術」「移動支援機器の安全制御技術」の開発に成功することで、ネットワーク型BMIが実現した。

携帯型脳活動計測装置は、脳波計測(electroencephalography; EEG)と近赤外分光脳計測(near-infrared spectroscopy; NIRS)の組み合わせによるもの。ネットワークを介してクラウド上あるいは環境内に置かれた脳活動データベースと計測された脳活動を照合する脳情報解析技術により、利用者の動作意図・情動状態(不快感など)を読み出す。

島津製作所は、生活環境で利用者の脳活動を計測可能にするため、NIRS装置をバックパック型ベストに収納、コンパクトかつ軽量化、また、脳活動計測データを無線で送信できるようにした。慶應義塾大学は、脳活動を長時間かつ簡便に計測できるEEG装置を開発した。

「携帯型脳活動計測装置」

ネットワークエージェント基盤技術は、BMI利用者の位置情報などを用いることでプライバシーやTPOに配慮したBMI支援を実現する。具体的には、NTTがプログラムやそれが用いるデータを「エージェント」と呼ばれる部品に分割し、エージェントがどこのコンピュータ上に配置されていても、利用者の利用形態や状況に応じて、動的に組み合わせ・活用することができる情報処理基盤を開発した。

「 ネットワークエージェント基盤技術」の仕組み

実環境実験設備(BMIハウス)は脳情報を活用した日常生活を再現可能な環境であり、ATRと積水ハウスが共同で開発した。各種センサーとアクチュエータ(生活支援機器)を配備し、日常生活の場を想定した実証実験が行われた。

BMIを日常生活において利用するためには安全性の確保が不可欠だとして、ATRがネットワークが断絶、あるいは、脳活動の解析結果が誤った場合でも安全に機器を制御するための技術を開発した。これは、機器自身に搭載されたセンサーによる安全性、環境側に設置してあるセンサーによる安全性、さらに遠隔モニタリングによる安全性の3段構えによるもの。