シルベスター・スタローンをはじめ、アーノルド・シュワルツェネッガー、ドルフ・ラングレンらハリウッドのアクションスターが一堂に集結したアクションムービー『エクスペンダブルズ』シリーズの最新作『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』(11月1日 日本公開)がいよいよ公開される。同作は第27回東京国際映画祭特別招待作品にも選ばれたことでも注目を集めた。さらに、この作品で注目してほしい点がもうひとつ。監督を務めたパトリック・ヒューズが2010年にサスペンス映画『レッド・ヒル』で長編映画監督デビューしたばかりの新進気鋭の監督であることだ。テレビコマーシャルの監督としてカンヌ広告大賞でゴールドライオンも受賞しているパトリック・ヒューズに話を聞いた。

『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』のパトリック・ヒューズ監督

――長編デビュー作であるサスペンス映画『レッド・ヒル』(2010年)を観たスタローンが惚れ込んで、今回の監督オファーがあったと聞きました。

彼は非常に素晴らしい人で、とてもチャーミングで面白い人だよ。僕のエージェントから「スタローンがあの映画が好きで、君とミーティングをしたいと言っているんだ」と電話があったんだ。そのとき僕はオーストラリアでテレビCMを撮っていたんだけど、すぐにロサンゼルスに飛んで彼と会った。1時間半くらいのミーティングの予定だったんだけど、会って30秒くらいで意気投合し、4時間くらいミーティングをしていたね。結局、そのミーティングで僕がこの作品の監督をすることが決まったんだ。

――そのミーティングを行ったのはいつ頃ですか?

そうだね、2013年の2月か3月だったと思う。それからは本当にあっという間だったよ。そのときに撮っていたテレビCMの撮影を終わらせて、次の週にはこの映画の製作に参加していたね。ただ、そのときはまだ脚本もなくて、プリプロダクションの段階だったので、スタローンがなんとなく「こういう作品を作りたい」というだけだったけど。その後、ブルガリアなどへロケハンに行き、美術担当のスタッフと打ち合わせをしたりと。とにかくあっという間だった。

――この作品の話を聞いて、どういったシーンが撮りたいなどのイメージは湧きましたか?

スタローンと話をしていたときに、アクションシーンをできるだけ多用し、ダイナミックにしようという話をした。どのシーンもそれぞれユニークで違うものにしたいとね。今回登場する若いチームの場合であれば、これまで以上に最新テクノロジーを巧みを使うアクションを取り入れたりと、とにかくすべて違うものにしたいと思ったんだ。ただ、ひとつの映画としてのトーンは統一したかった。ユーモアとアクションとドラマのバランスをとりながら、ストーリーとして一環したものを作らないといけないからね。あと、ハリウッド界のスターがたくさんいるので、それぞれのスケジュールを組むのが難しかった。彼らのスケジュールを把握し、うまく撮影できるように脚本をデザインしなければいけないからね。この映画を作る上でスケジューリングが一番大きな課題だったよ。

――監督自身、これまで『エクスペンダブルズ』シリーズにはどういった印象を抱いていましたか。またその印象をこの作品でどう変化させたいと思いましたか。

最初にスタローンと会ったときにお互いに同意したのが、このシリーズの1作目は暗すぎる、2作目はコメディが多すぎるということだった。だから、今回はそのバランスをうまくとった方がいいねという話をしたよ。

――なるほど。監督はテレビコマーシャルの監督としても大きな成功を収めていますよね。その経験が今回の映画制作にも活きていると思いますか?

僕はこれまでに映画学校にも行き、そこでストーリーテリングや、俳優とどう付き合うかということを習い、短編映画をたくさん撮った。だけど、短編映画は、バジェットが低い。その点、テレビCMの場合は、かなり大きなバジョットのものもあるので、大きなプロダクションを経験できる。また美的要素も映画とCMでは違ったものを経験できるんだ。その両方の経験があったから、今回の作品の制作に入ったときにもプロダクションの大きさに圧倒されなくてすんだと思っているよ。

――シルベスター・スタローンをはじめとした、錚々たるハリウッド俳優たちとの撮影はいかがでしたか?

彼らのスケジューリングには本当に圧倒されたよ。でも、スターたちと仕事することは本当に楽しかった。彼らがもっている知恵や経験は一緒にいて楽しいものだったよ。

――知恵や、経験とは具体的にどういったものだったのか、教えてもらえますか。

実際に彼らの動き方をみていて学んだことがあるんだ。例えば、スタローンの場合、彼はとても本能的なんだ。彼はキャリアを通して、自分の本能や勘を信じていたと思う。このシリーズの1作目を作ったとき、周りは「そんなの売れないよ」と言っていたが、実際には成功してシリーズ化されているし、映画『ランボー』や『ロッキー』にしても、大ヒットさせるのが難しいテーマでありながら、それを成功させている。彼は観客が求めているものを分かっているんだと思うね。

――CGでなく、"ガチ"がアクションのこのシリーズのテーマになっていると思うのですが、このシーンは危険だった!というものはありますか。

全部のシーンが危険だった。だから現場では”安全第一”を掲げて撮影を行ったよ。それでもジェイソン・ステイサムが死にかけたりしたけどね。スタントマンもたくさんいたけど、彼らにも当然、奥さんや家族はいるから。大規模な爆発シーンを何度も撮影するので、ちょっとでも俳優が立ち位置を間違えてしまうと危なくなってしまう。毎回、失敗が許されない撮影だったよ。

――このような超大作の監督を務めた今、監督は今後どういった作品を撮っていきたいですか。

この業界では、次にどんな作品を撮るか分からないんだよ。色々なプロジェクトに関わっているけど、実際に撮影するまで、どうなるか分からないものなんだ。今回のようなアクション映画は楽しいし、この作品に携われたことも素晴らしいと思っているよ。ただ、ものすごく大規模な作品なので、自分が機械の一部になったような気がするんだ。だから、次回はもうちょっと小さい規模のリアリズムに近いような作品を撮ってみたいね。

――今後、ハリウッドで活躍したいと思う日本の若きクリエイターにアドバイスをもらえますか。

とりあえず短編からでいいから映画を作ってみてほしい。いまならiPhoneひとつで作品が作れるから。そして、この世界は非常にクレイジーな世界で、もの凄く競争が激しいので、とても大きな情熱が必要だ。僕は30本以上短編映画を作ったし、テレビCMもたくさん作った。最初に作った短編映画なんてひどいものだったよ。だけれども、誰が何を言おうが気にしなかった。なぜなら"今、学んでいるから"。映画は作ることでしか学べないんだ。撮影現場にいるからこそ、分かることばかりだから。監督の仕事は本当に幅が広い。ストーリーを作ること、俳優とのコミュニケーション、現場での様々な調整など。だから、まずは作ってみてほしい。それについて話し合うだけではどうにもならないから。

(C)EX3 Productions, Inc. All Rights Reserved.