Latticeの社長兼CEOであるDarin G. Billerbeck氏

Lattice Semiconductorは10月2日、都内で会見を開き、2014年5月以来の来日となる同社社長兼CEOのDarin G. Billerbeck氏が、同社の現在のビジネスの状況ならびにシチズン時計がGPS電波腕時計に同社のFPGAを採用したことの背景などを説明した。

同氏は、「この4カ月の間、iCE40 Ultraファミリを発表し、MachXO3の量産を開始したほか、Cypress SemiconductorとUSB 3.0オーディオ/ビデオブリッジ開発キットの共同開発やUSB 3.1 TypeCソリューションなどを発表し、コンシューマならびに通信、産業市場などで我々のFPGAが好評を得ている」とこれまでの推移を説明。その結果として、売り上げも6四半期連続で増収を実現しており、iCE40シリーズも2012年の発売以来、累計2億個の出荷を達成したとする。

同社の考え方は従来どおりだが、簡単におさらいすると、市場は低消費電力化、省スペース化、低コスト化、そしてモバイル分野の成長に対応したいというニーズがあり、FPGAもそれに対応する必要があるというものだ。同じFPGAベンダで、大手であるXilinxやAlteraがロジックの規模を増やし、性能を向上させていくのに対し、Latticeはそうしたハイエンド・ハイパフォーマンスよりも、省電力や多数のIOを安価で実現したい市場などにフォーカスした戦略を採用しているといえる。

そうしたニーズを受ける形で現在、同社は「ECP5」、「MachXO3」、「iCE40」の3シリーズを展開している。ECP5は同社の最大論理回路規模のFPGAだが、その規模は他社のハイエンドとは大きな隔たりがある100K LUT未満であり、トランジスタも小型のものを採用するほか、DSPブロックも改良するなど、省電力、省スペースニーズが強い、例えば自動車の衝突検知のようなシステムを2W以下で実現させるために採用されているとする。また、パッケージにも0.8mmピッチを採用しつつ、4層プリント基板で配線が可能なため、基板コストの低減も実現しているとする。

Latticeの3つのFPGAシリーズ。いずれも低消費電力/サイズ/コストの要求が厳しい分野での活用を見込んだ製品群となっている

またMachXO3は産業機器からモバイル機器まで幅広く市場をカバーしたFPGAで、I/O関係への対応を強化した製品シリーズとなっており、I/O単価は業界最低とする。I/O数以外にもパッケージもWLCSPなどの小型なものを用意しており、システムの小型/省スペース化ニーズへの対応を可能としている。MIPIなどのハードIPも用意されており、1400万画素、30fpsのイメージセンサでの撮像を実現しており、将来的には2000万画素オーバーの高精細度のスポーツ向けカメラなどにも対応できる予定だとする。

そしてスマートフォンやタブレット、IoTといったセンサなどが活用される分野をターゲットとしているiCE40シリーズは、iCE40 Ultraが最新世代だが、2015年には引き続き40nmプロセスを採用した次世代を、2016年には28nmプロセス品を発表する予定だとしており、非常に引き合いが強いシリーズだとする。WLCSPからucBGAまで幅広いパッケージを用意する一方、多数のハードIPや赤外線リモコン機能/LED電流シンクを1チップ上に集積しており、コンシューマ製品で必要とする多くの機能を容易にカスタマイズして実装することができるようになっており、「最近、他社が最小のフォームファクタをうたう製品を発表したが、我々の49 ucBGAサイズであり、そこはすでに1年前に達成している地点。小型、低消費電力では我々が他社よりも一歩先を行っている」(同)と、小型化分野で一日の長があることを強調する。

iCE40シリーズが提供するパッケージ各種。最小のもので1.40mm×1.48mmの16 WLCSPとなっている。2016年に提供予定の28nmプロセス製品については、前回の会見で同氏が答えた回答とほぼ同じであったが、今回はファウンドリに対して、さらなる低消費電力プロセスの提供を強く要求していく、という点がより強調されていた

そんな同社がFPGAの次のフロンティアとするのが「ウェアラブル技術」だ。ウェアラブル機器向けコンポーネントの必要条件として同社は、低消費電力や小フォームファクタ、低コストのほかに短期間での市場投入というものがあり、そうした開発容易性の観点でFPGAは最適だという。

ウェアラブルにおけるFPGAの用途

ではウェアラブルでのFPGAの具体的なメリットは、というと、例えばある機能を実現しようと思った場合、ハードで実現するか、ソフトで実現するか、という問題から始まるが、往々にしてソフトで処理を行う場合、電力消費が問題となる。そこでハード側でそういった処理を行わせることで低消費電力化を実現できるようになるが、それを実現するための開発ソリューションを用意する必要がある。「Latticeとしても、従来はハードの開発が中心であったが、最近は使い勝手が高いソリューションの開発に注力をしており、その結果が、シチズン時計が発表した3秒でGPS衛星の時刻情報を受信可能な『エコ・ドライブサテライトウエーブF100』として結実した」とする。

シチズン時計がエコ・ドライブにiCE40を採用した。実は同社、以前のシリーズでもFPGAを採用している(当時はLattice買収前のためSiliconBlue TechnologiesのFPGA)

また、「FPGAの価格として我々は5ドル以下の製品に注力しているが、それでもDFEスモールセルやHDRイメージングまでカバーできる製品を提供している。イメージングの要求は特に重要だと考えており、そうしたニーズへの対応は今後も強化していく」とするほか、「第3のFPGAベンダとして市場を支配的に動かせる分野にフォーカスしていく戦略は変わらない。ただし、数を求めるのではなく、イノベーションが求められる分野でリーダーシップを発揮することを追及していく。そのためには日本は民生品の市場が他の地域に比べて大きいほか、産業機器などの市場も強く、将来的にそうした産業機器の市場もコンシューマ的なトレンドに向かっていくが故に、非常に重要な地域」と、コンシューマだけでなく、産業機器や通信関係にも注力しており、そうした市場で強みがある日本は重要な地域とし、日本における可能性は非常に大きいとする。

そのため日本でのFPGAのビジネスチャンスも大きいという。これは、日本の顧客とパートナーを組んで成功するという意味だとしており、Latticeの成功を左右するような重要な市場という位置づけとしており、日本の顧客が国内はもとより海外で成功していくための技術支援を行っていく用意があるとし、様々な省電力、小型化ニーズが高いアプリケーションへの搭載を積極的に行っていくとした。

かつてFPGAをスマートフォンで使うことは考えられていなかった。しかし現在、FPGAがスマートフォンに搭載される時代となった。こうした流れはほかのアプリケーションでも適用できると思っている。

エコ・ドライブサテライトウエーブF100の実物