Appleの新型スマートフォン「iPhone 6」が発売され、早くも購入を済ませたり、機種変更を検討している人も多いかもしれない。スマートフォンが普及して数年経ち、最近ではフィーチャーフォン(従来型携帯電話)からではなく、スマートフォンから新たなスマートフォンへ機種変更するケースも増えてきた。そこで考えたいのは、機種変更で余った中古スマートフォンの使い道だ。

主要キャリアでは、機種変更の際に中古スマートフォンを下取りするサービスを提供しているが、iPhoneなどの一部機種を除くと、下取り価格は数千円程度。Androidスマートフォンなどの場合、下取りに出すメリットはあまり感じられない。使い古しとはいえ、高額な端末代金を支払って購入したスマートフォンであり、せっかくならば活用したいところだ。このような中、おすすめしたいのは、格安SIMカードで使わなくなったスマートフォンを再利用する方法だ。

使わなくなったスマートフォンを格安SIMで再利用できる?

キャリアよりも低料金で利用できることで話題の格安SIMだが、中古端末と組み合わせれば、初期費用も月々の料金もより安く抑えることができる。たとえば、子どもにスマートフォンを持たせたいときなどに最適だ。本稿では、格安SIMを使った中古スマートフォンの再利用について見ていきたい。

そもそも「格安SIMカード」って何?

まずは、格安SIMカードの基本をおさらいしておこう。格安SIMカードは、キャリアのスマートフォンよりも低料金でデータ通信を利用できるSIMカードのことだ。スマートフォンや携帯電話では、端末にSIMカードを装着することで、データ通信や音声通話が利用できるようになっており、通常はキャリアが提供するSIMカードを使うことになる。

このSIMカードのみを低料金で提供しているのが、格安SIMサービスであり、MVNO(仮想移動体通信事業者)と呼ばれる事業者が、キャリアのネットワークを借りてサービスを提供している。MVNOには、インターネットプロバイダや家電量販店をはじめ、様々な企業が参入しており、それぞれ独自の料金プランやサービス内容で格安SIMサービスを展開している。

格安SIMカードには、データ通信専用のものが多いが、最近では090/080/070番号で音声通話を利用できる音声通話SIMも増えてきている。代表的な音声通話SIMには、U-NEXTの「U-mobile 通話プラス」、BIGLOBEの「BIGLOBE LTE・3G 音声通話SIM」、IIJの「みおふぉん」などがある。データ通信に加えて音声通話も利用できるこれらの音声通話SIMは、キャリアのSIMカードとほぼ同様の使い方が可能で、なおかつ低料金なのが特長だ。

キャリアでスマートフォンを契約すると、月々の利用料金が6,000円以上になるケースも珍しくない。子どもにスマートフォンを持たせたいと思っていても、料金面で躊躇してしまう人も多いのではないだろうか。しかし、格安SIMの場合、データ通信専用SIMであれば月々1,000円以下から、音声通話対応SIMでも月々2,000円以下からの料金で利用可能だ。さらに、月間データ量などが異なるプランが多数用意されており、様々なサービスやプランから自由に選べるのも格安SIMの魅力。前述のような子どもにスマートフォンを持たせたいケースでも、気軽に利用することができる。

なお、格安SIMはキャリアのSIMカードとは異なるため、「@docomo.ne.jp」「@ezweb.ne.jp」「@softbank.ne.jp」などのキャリアメールや、auの「auスマートパス」やソフトバンクの「スマホとくするパック」といったキャリアが提供するサービスは利用できない。「LINE」や「Skype」などのメッセージアプリの普及により、スマートフォンでキャリアメールを利用する機会は減少してきたと思うが、この点は留意しておくとよいだろう。

格安SIMは、どんな中古端末で使える?

格安SIMを中古スマートフォンで利用する際に気を付けたいのは、その端末が格安SIMのネットワークに対応しているかどうかだ。基本的にキャリアが販売するスマートフォンには"SIMロック"がかかっており、特定のキャリアのネットワークしか利用することができない。そのため、auやソフトバンクのスマートフォンにドコモのSIMカードを装着しても、通信できない仕組みになっている。

しかし、前述の通り、格安SIMサービスはキャリアのネットワークを借りて提供しているため、当該キャリアの中古端末であれば利用することが可能だ。具体的には、NTTドコモのXi・FOMA回線を利用した格安SIMサービスが最も多く、それらのSIMはドコモの中古端末で利用することができる。そのため、格安SIMを利用する上で選択肢が多く、最も使い勝手が良いのは、ドコモの中古端末と言える。

また、SIMカードには、標準SIM、microSIM、nanoSIMという3種類のサイズがあり、端末に合ったサイズのSIMカードを選ぶ必要がある。格安SIMサービスに申し込む際は、あらかじめ端末に対応したSIMカードのサイズを確認しておくとよいだろう。

端末によって対応しているSIMカードの形状が異なる

実際に、インターネット上で格安SIMサービスを申し込む場合、各サービスのWebサイトから住所や氏名などを登録し、料金プランやSIMカードのサイズを選択することで申し込みが可能。そうするとSIMカードが送られてくるため、中古端末にSIMカードを装着し、端末設定を行うことで通信が可能になる。

必要な端末設定は、APN(アクセスポイント名)の設定で、Androidスマートフォンであれば、端末の設定画面から各サービスのAPN情報を登録する必要がある。格安SIMサービスを利用する際に、最もハードルが高いと思われるのがこのAPN設定だ。しかし、各サービスのWebサイトで、必要なAPN情報や手順などが紹介されているため、それらを参考にすることで問題なく利用を開始できるだろう。

格安SIMを利用するには、端末のAPN設定が必要

格安SIMを選ぶポイントは? おすすめは月額680円からの「U-mobile」

格安SIMサービスを選ぶ際に、まず考えるべきは、データ通信専用SIMと音声通話SIMのどちらにするかだ。音声通話SIMの場合、前述の通り090/080/070番号で音声通話を利用でき、キャリアのスマートフォンとほぼ同様の使い方が可能になる。ただし、音声通話基本料が月額1,000円程度、上乗せされる。

データ通信専用SIMでも、「SMARTalk」や「050 plus」などのIP電話アプリを使えば音声通話が可能だが、通話品質では通常の音声通話と比べて劣ってしまう。そのため、各自の音声通話の必要度に応じて、データ通信専用SIMまたは音声通話SIMを選択するのがよいだろう。なお、各社の格安SIMサービスでは、音声通話に対応せず、データ通信専用SIMのみを提供しているサービスもあるので注意が必要だ。

次にポイントになるのは、データ量と料金のプランだ。各社の格安SIMサービスで最もオーソドックスな料金プランは、月間1GB、3GB、5GBといった高速通信のデータ量ごとのプランを複数用意したもので、利用できるデータ量が多いほど料金は高くなる。各プランのデータ量を超過すると速度制限が行われるが、サービスによっては追加料金を支払うことで速度制限を解除できる場合もある。プランについては、データ量と料金のバランスをとりながら、各自に最適なプランを選びたいところだ。

上記のポイントを踏まえ、音声通話にも対応し、料金プランのラインナップが豊富なことから、おすすめできる格安SIMサービスは、U-NEXTが提供する「U-mobile」だ。データ通信専用の「U-mobile データ専用」では、定額制の月間1GB、3GB、5GB、7GBのプランと、2段階定額制のダブルフィックスプランを用意。このうちダブルフィックスプランは、月間1GBまでが月額680円、月間1GBから3GBまでが月額1,980円(いずれも税抜)となっており、あまりデータ通信を使わなかった月であれば、700円程で利用できるのが魅力だ。

月額680円から利用できる格安SIMサービス「U-mobile」

また、音声通話SIMの「U-mobile 通話プラス」でも同様に、定額制の月間1GB、3GB、5GB、7GBのプラン、2段階定額制のダブルフィックスプランというラインナップを用意している。たとえば、月間3GBのプランの場合、音声通話基本使用料を含めた月額料金は1,980円(税抜)で、キャリアのスマートフォンと比べるとかなり割安だ。なお、通話料は別途必要。

実際にキャリアと比べてどのくらい安いのかを見てみると、ドコモの新料金プラン「カケホーダイ」では、個人で契約した場合に最安となる月間2GBのプランで合計月額料金は6,500円(税抜)だ。カケホーダイでは国内通話が定額で利用可能となっているものの、それほど通話を利用しない人であれば、U-mobileのほうが料金を格段に安く抑えられるはずだ。

また、U-mobile 通話プラスでは、国内通話の通話料は20円/30秒(税抜)となっているが、同サービスでは格安通話アプリ「U-mobile 通話アプリ」(仮称)を9月30日より提供予定だ。同アプリを使って通話発信すれば、半額の10円/30秒の通話料で電話をかけることができる。なお、同アプリはIP電話ではなく、090/080/070番号で電話をかけられ、通話品質も良好という。この格安通話アプリを利用することで、さらに料金の節約が可能になるだろう。

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中古スマートフォンを格安SIMで再利用する方法について見てきた。キャリアよりも低料金で利用できる格安SIMは、必ずしもどの中古端末でも使えるわけではないが、とりわけドコモ回線を利用したサービスが多いため、ドコモの中古端末と格安SIMとの相性は抜群だ。もちろん、auやソフトバンクの端末に対応した格安SIMサービスもある。格安SIMサービスとしては、音声通話に対応し、ラインナップが豊富なU-mobileがおすすめで、格安通話アプリも活用すれば、料金をかなり節約できそうだ。iPhone 6などの新しい端末に機種変更したが、これまで使っていたスマートフォンも再利用したいと考えている人は、ぜひ格安SIMを検討してみてはいかがだろうか。