祝賀パーティーのあとは場所を会議室に移し、共同記者会見が行われた。前方に着席したのは、東芝 代表取締役社長の田中久雄氏、東芝 執行役専務 セミコンダクター&ストレージ社 社長の成毛康雄氏、東芝 セミコンダクター&ストレージ社 四日市工場長の渡辺友治氏、米国サンディスク コーポレーション プレジデント兼CEOのサンジェイ・メロートラ氏、サンディスク(日本法人)代表取締役社長および米国サンディスク コーポレーション シニアバイスプレジデントの小池淳義氏だ。

日本へ9,000億円を投資してきた米サンディスク

サンディスク コーポレーション プレジデント兼CEO サンジェイ・メロートラ氏

サンディスクのサンジェイ・メロートラCEOの発言から紹介すると、「東芝との協業により、世界最先端となる15nmプロセスNANDフラッシュメモリの生産ラインを活用することで、NANDフラッシュメモリのコストを大きく下げられる。さらに、三次元構造のNANDフラッシュメモリ(3Dメモリ)のパイロット生産を2015年下期以降に開始し、早い段階で量産化、引き続きこの分野でリーダーシップを発揮できる。

エンタープライズ向けPCI Express製品の大手である米Fusion-ioの買収(編注:2014年7月発表)によって、SAS、SATA、そしてPCI ExpressのSSDと、サンディスクのポートフォリオが広がり、エンタープライズ分野でのポジションを強固なものにできる。サンディスクは、エンタープライズビジネスにおける2016年度の売り上げとして10億ドルを目指す」(サンジェイ・メロートラ氏)と語った。

米サンディスクの概要

一方で、サンディスクの事業内容についても説明。「サンディスクは、26年前となる1988年に設立以来、フラッシュメモリおよびストレージのパイオニアとして市場を牽引し、フラッシュメモリではナンバーワンブランドとなっている(編注:特にコンパクトフラッシュやSDといったメモリカードでサンディスクを身近に感じる人も多いだろう)。

2013年7月から2014年6月期の1年で65億ドルの売上高を達成し、全世界に8,500人以上の従業員を擁する。スマートフォンやタブレット、ノートPCといったコンシューマ、そしてモバイル、コネクトデバイス、クライアントコンピューティング分野に加えて、エンタープライズおよびハイパースケールデータセンター分野も注力領域に捉えている。これらは東芝との協業によって実現したものである。1999年に東芝と協業を開始し、この15年間で11世代ものNANDフラッシュメモリのプロセス微細化を図った。

日本におけるサンディスクの概要

東芝とサンディスクが協業してから、NANDフラッシュメモリを11世代、進化させてきた

日本においては、2002年から今までの累計で、投資額が9,000億円を超えた。日本に対して、最も投資額の大きい米国企業のひとつのサンディスクであり、3つの300mmウエハ製造施設を四日市工場に持っている。日本国内では600人以上のエンジニアをかかえ、今年はサンディスクイノベーションセンターを開設し、すばらしい環境のなかで仕事ができるようになった。

四日市工場で手がけるNANDフラッシュメモリが次のステージへ

そして今回、最先端である15nmプロセスNANDフラッシュの生産を開始でき、テクノロジーリーダーとしての地位を確固たるものする。同時に、3Dメモリへの転換期においても、東芝と協力して踏み出すことができる。今後の四日市への投資の継続、ならびに東芝との協力関係を強めていく」(サンジェイ・メロートラCEO)。

補足すると、米サンディスクはマレーシアにも工場を建設中だ。同社は、フラッシュメモリの市場規模が2017年には4兆1,000億円になると予想しており(2013年は2兆9,000億円)、特にSSDの需要が今後さらに高くなると考えている。マレーシアの新工場は、SSD専用のアセンブリ工場となる予定だ。それに伴い販売力も強化しており、2016年にはエンタープライズビジネスの売り上げとして1,000億円以上(現状の約3倍)を見据える。

ストレージ分野へ年間2,000億円規模の投資を続けていく東芝

東芝 代表取締役社長 田中久雄氏

東芝の田中久雄社長は、ストレージ事業への取り組みについて説明した。

「東芝は市場の成長に過渡に依存せず、東芝ならでは方法で自ら成長の原動力を創り出す創造的成長を目指している。安心、安全、快適な社会であるヒューマンスマートコミュニティの実現に向けて、エネルギー、ストレージ、ヘルスケアの3つの分野を強化。

そのうちのひとつであるストレージにおいては、最重要事業が四日市工場で生産するNANDフラッシュメモリである。東芝は1987年に世界で初めてNANDフラッシュメモリを開発し、現在まで技術開発と市場開拓を先導してきた。携帯電話、ノートPC、タブレットといった時代の最先端機器に使用され、データセンターや大型サーバー、エンタープライズにも対応している。

今回、四日市工場の第5製造棟第2期分をスタートさせ、さらに次世代の3Dメモリの足場も着々と築き始めており、世界最先端の効率的な製造ラインに磨きをかけていく。日本の半導体業界は衰退しているともいわれるが、厳しい競争に打ち勝つために、東芝は世界最先端の工場において、技術開発と設備投資を続けている。ストレージ分野においては、市場環境を見極めつつ毎年2,000億円規模の設備投資を継続的に行う予定であり、世界市場へと供給し続けていく。サンディスクとのパートナーシップを強化して、この事業に全力を尽くす」(田中社長)と意気込みをみせた。

田中社長は、年率30~40%増でNANDフラッシュメモリの市場成長を予測する。この市場成長率に合わせた増産体制を敷き、東芝全社では今後3年間で1兆5,000億円という投資計画のなかで、今年は4,500億円の投資を計画。そのうち東芝 セミコンダクター&ストレージ社で2,000億円の投資を予定しており、その大半が四日市工場への投資になるとした。「四日市工場の建屋や土地は東芝の投資。製造設備などへの投資はサンディスクと東芝が半分ずつ投資する。東芝は効率的で大きな投資を行う」(田中社長)。

東芝 セミコンダクター&ストレージ社では今年度1,800億円の営業利益目標を掲げるが、田中社長は「これは、セミコンダクター&ストレージ社によるコンサバティブな数字であり、私は2,000億円を目指すことを提示している」とした。

韓国サムスンとの競合についも言及し、「目的はシェアや売上高を高めることではなく、利益を拡大させることにある。付加価値の高いものを提供することが大切であり、特に我々の注力分野のひとつであるエンタープライズ領域は、付加価値が重要視される市場。新たな生産設備の導入によって付加価値を提供でき、利益成長を高めることによって、売り上げやシェアはあとからついてくる。ナンバーワンにはそんなにこだわってない。確実な成長、確実な利益をあげていくことが最大の主眼点。市場のボリュームを超える投資はしない」とした。

なお、一部報道にあった四日市市における新たな用地買収については、「そうした事実はない」と完全否定。構造改革に取り組んでいるディスクリートについては、「事業売却や工場閉鎖は考えていない。よりコスト競争力があるものを開発し、事業展開を図っていく」とした。

東芝 執行役専務 セミコンダクター&ストレージ社 社長の成毛康雄氏

一方、東芝 セミコンダクター&ストレージ社 社長の成毛康雄氏は、東芝 セミコンダクター&ストレージ社事業計画について説明。「新たなスマートフォンの登場もあり、メモリおよびストレージは成長を持続している。ディスクリート、システムLSIは固定費削減などの取り組みは終わり、これから成長路線へと取り組む。

また、2014年度はさらなる上積みを目指して、プロジェクトGAINを展開している。2014年度以降も年間2,000億円規模の設備投資を継続していくほか、技術開発においても、メモリ技術に加えて、SSDの集積を支えるコントローラ技術などが差異化につながると考えている。3Dメモリ技術はコストが下がらないという問題があったが、エッチング技術の改善などによって、コスト競争力を持った3Dメモリの生産が可能になった。今後はさらなる微細化に向けて次世代の露光技術を開発していく」と語った。

サンディスクとの協業についても触れ、「半導体製造アライアンスのなかでは世界で最も成功した事例であり、当初の200mmウエハから始まり、2004年には300mmウエハでの生産を開始。10年以上にわたり、ボリュームメリットの追求と、効率的な共同開発を継続してきた。NANDフラッシュメモリ市場の拡大および発展に大きく寄与している」と振り返った。

ストレージ分野の業績推移

設備投資の計画

ストレージ事業の概要

プロセスルールの微細化

四日市工場の概要

3Dメモリの生産を本格化

3Dメモリの構造と生産工程

東芝とサンディスクのパートナーシップ

ストレージ事業の方針