遠方の相手とのファイル共有や、大容量ファイルの送信、バックアップ用のストレージとして使用するケースなど、オンラインストレージの利便性は高い。今後も大いに期待されるオンラインストレージだが、先頃Microsoftはアップロードできる1ファイルあたりの容量を、それまでの2GBから10GBに拡大したことを発表した。今週はOneDriveの新たな改善に踏まえ、変更ポイントをレポートする。

オンラインストレージにおけるファイルサイズの制限は、物理的もしくは倫理的な問題が付きまとっていた。最近は個人でもギガビットの速度を持つネットワークインフラを利用可能になったが、それ以前は速くても数百メガビット。無線LANやLTEでネットワーク接続するスマートフォン/タブレットの場合はさらに遅くなる。これが物理的な問題だ。

倫理的にはブートレグ(不正コピーなど)の問題がある。著作権で保護された楽曲やアプリケーションを不特定多数に配布する場所として、古くは無料Webページ、最近はアップローダーと呼ばれる場所が用いられてきた。もちろんクレジットカードを紐付けるようなMicrosoftアカウントは匿名性が乏しいため、ブートレグの配布に用いることは少ないだろうが、国内外の状況を見ると決して皆無ではない。

それでもMicrosoftが1ファイルあたりの容量制限を緩和したのは、ファイルの肥大化が大きく影響しているのだろう。ビデオカメラで撮影した動画は10分で1GBを優に超える(形式や解像度によって異なる)。圧縮展開ツールを用いたバックアップファイルもGBクラスに達するようになった。このような背景と多くのフィードバックから、1ファイルあたりの制限緩和に踏み切ったのだろう。

OneDriveはWebページだけでなく、Windows/Mac OS X/各種モバイルのOneDriveアプリケーションで10GBのファイルアップロードを許可するという。そこで筆者は実際に10GBのファイルを用意し、Webページ経由でアップロードしてみたが、通常のファイルと同じく粛々とアップロードが始まった。

現在筆者はフレッツ光ネクスト ギガファミリー・スマートタイプを契約しているが、機材の問題なのかDNSクエリの応答がなくなるなど、Bフレッツほど安定していない。それでも平均送信速度は20Mbps。1時間超でアップロードを完了できた。

「fsutil」コマンドで10GBのファイルを作成し、OneDriveにアップロード

1時間強でアップロードを終えた10GBのファイル。OneDrive上でも問題なく操作できる

また、Windows/Mac OS XのOneDriveクライアントにおいては、同時ダウンロード/アップロード数を拡大したという。筆者が調査したところ、Windows 7の頃は最大3ファイルに制限されていたが、%LOCALAPPDATA%\Microsoft\Windows\SkyDrive\settings\ClientPolicy.iniファイルには、「NumberOfConcurrentUploads」の値は3と変化していない。操作可能なファイルの最大値を示す「MaxFileSizeBytes」は10737418240(10GB)に変更されていた。

Microsoft公式ブログにおけるJason Moore氏の説明にある「内部テストでは、同期速度が約3倍向上した」と異なるものの、同期タイミングなど各所をチューニングすることで、実現しているのだろう。もしくは前述した同時アップロード数の制限値を無視し、他の方法で管理するのかもしれない。

さらにOneDriveとローカルファイルの親和性を高める機能が加わった。エクスプローラーのコンテキストメニューを見直し、共有リンクの取得や共有設定を見直す項目が新たに追加されている。説明によればWindows 7/8を対象に先行して更新を進めているらしいが、手元のクライアント(ビルド番号は17.3.1171.0714)では確認できなかった。またWindows 8.1およびMac OS Xは今後改善が加わるという。いずれにせよシームレスにファイル共有設定を可能にするのは便利な機能だ。

現在のOneDriveフォルダーに対するコンテキストメニュー。<共有>や<OneDrive.comで表示>などを確認できる(画面はWindows 7 SP1)

新たなOneDriveクライアントでは、共有リンクを取得する<Share a OneDrive link>などが加わっている

そして最後の改善はフォルダーのアップロード。改称前の時代からOneDriveはフォルダー単独のアップロードに対応していなかった。もちろんOneDriveフォルダーのサブフォルダーは同期対象としてアップロードできたが、Webページからは直接できなかったのである。

Moore氏の説明には「フォルダーのドラッグ&ドロップをサポートするWebブラウザー(特にGoogle Chrome)」とある。筆者が普段使っているMozilla Firefox 32.0とInternet Explorer 11、および同Devloper Channel 1で確認したところ、フォルダーのアップロードは動作せず、Google Chorome 37.0.2062.103 64ビット版でアップロードの動作を確認できた。

Google Choromeを使用することで、新たにフォルダーのアップロードが可能になる

Mozilla FirefoxおよびIEで、フォルダーのアップロード機能は利用できなかった

今年6月、OneDriveは無料で使用できる基本容量を15GBに拡大(古くから25GBを与えられてたユーザーは、「ロイヤルティボーナス(原文ママ)」として10GB追加)し、Office 365ユーザーへは1TBの容量を付加すると発表。これに伴う約70%ダウンの価格変更は、Googleドライブの価格改正が大きく影響を及ぼしたものと思われる(100GB+約200円/月、1TB+約1,000円/月)。

さらに先頃はiCloudも新たなプランを発表。20GB+100円/月、1TB+2,400円/月で容量を拡大できる。Webブラウザーからアクセス可能なiCloud Betaに「iCloud Drive」を追加し、各種ドキュメントの管理やWindows、Mac OS Xからの操作も可能になるそうだ。

iCloud Driveにアクセスしてみたが、iOS7にない設定項目の変更を求められるため、現時点では使用できなかった

このように各社がファイルの保存先としてオンラインストレージサービスや、さらなる容量を提供している。冒頭で述べたとおりオンラインストレージはセキュリティ面の不安が残るものの、個人向け同サービスは今過渡期だ。お使いのプラットフォームによって選択するサービスは異なるものの、Windowsユーザーは今後も成長するOneDriveに期待していいだろう。

阿久津良和(Cactus)