今回のプレスイベントは、過去に初代MacintoshやiMacといった歴史的な機種の発表に使われたFlint Centerを舞台に選び、さらにイベント用に仮設の発表会場を作り、米国外からも大勢のプレスが招待されるなど、過去に例がないほど盛大なものになった。IT関連のメディアだけでなく、ファッション関連のメディアやブロガーたちも招待されたという。おそらくアップルは、Apple Watchという新しいジャンルの製品について、IT業界でのお約束である「スペックで語る」ことではなく、見た目のデザインや使ったときの気持ちよさ、所有する歓びをこそ語ってほしいのだろう。それゆえ、新たな感性で製品を評価できる情報発信源として、ファッションメディアに白羽の矢を立てたのだと推測される。

会場となった"Flint Center for the Performing Arts"は、故スティーブ・ジョブズが初代MacintoshとiMacを発表した、アップルにとって歴史的な舞台。ティム・クックCEOがApple Watchにかける意気込みが感じられる

しかし、イベントとしては少々盛り上がりに欠けたと言わざるを得ない。事前のリーク情報が正確だったこともあり、Apple Watchのデザイン以外、目新しい情報はこれといって見当たらず、最後まで見ても気持ちがいまひとつ盛り上がらなかった。さらに、世界中の注目が集中してしまったためか、ネット配信がかなり不安定で、リアルタイムで見る興奮がいくぶん削がれてしまったのも残念だった。ティム・クックCEOは故ジョブズのように徹底した情報統制を行わず、情報リークをあえて野放しにしている節も見られる。贅沢を言えば、もう少し驚かせる仕掛けをしてほしかった、というのが正直なところだ。

はたしてApple Watchは、アップルが目論むように、新たな価値観で語れる製品に育っていくのか、今後も注目していきたい。