Texas Instruments(TI)は9月1日、超低消費電力FRAMマイコン「MSP430」ファミリに、より大容量のメモリ、および複数の機能や統合性を提供する「MSP430FR69x」46品種を新たに追加したと発表した。

「MSP430FR69x」は、最大128KBの不揮発メモリを内蔵できるスケーラビリティを有する他、ESI(エクステンデッドスキャンインタフェース)や、200kSPS動作時に140μAと低消費電流の差動入力A/Dコンバータ(ADC)をはじめとした、スマートアナログペリフェラル群を統合している。また、内蔵の320セグメントLCDコントローラを活用して、開発中の製品にディスプレイを簡単に追加できるのに加え、256ビットAES(Advanced Encryption Standard)ハードウェアアクセラレータを内蔵したことで、データ伝送のセキュリティの強化が可能となっている。この高い統合性によって、総合的な消費電力やシステム内の冗長な部品を削減することで、製品サイズを最小化できるとしている。

さらに、超低消費電力と統合性を最適化することで、低い動作時電力、および低いスタンバイ時電力、ペリフェラル群の低消費電力化を実現した。また、組み込みFRAMメモリは、高速な書き込み速度とフラッシュメモリよりも100億回以上多い書き込み/消去サイクルを提供することから、消費電力の削減、時間経過に対するデータの正確さと、製品寿命の延長を可能にする。そして、非常に高い柔軟性や、各セグメントの事前消去が不要であること、ビットレベルでのアクセスが可能などの特徴を提供することから、一定周期のオンザフライのログ動作や、より高速かつ簡素なワイヤレスのファームウェアを更新できる。

この他、水、ガスや光熱などの計量向けのスマート流量計の設計に最適である。「MSP430FR69x」に搭載する流量計は、SimpleLink Sub-1GHzトランシーバ「CC1120」やワイヤレスM-BusコネクティビティソリューションなどのTIの補完製品を追加することで、スマートグリッドとも簡単に接続できる。消費電力に制約を持つ製品の開発には、昇圧型コンバータ「TPS61220」を使い、電池動作システムを最適化できる。加えて、TIのFlowESI GUIは、ソフトウェアによるセンサ設定を簡素化する。また、EnergyTrace++リアルタイムパワープロファイラテクノロジーは、機能レベルやペリフェラルレベルでの消費電力のデバッグ機能を提供する。さらに、「MSP430FR69x」をベースとし、統合されたESIモジュールを活用した3種類の包括的なTI Designs(リファレンスデザイン)を使うことで、流量計の設計を迅速に開始できる。これらの水量計向けのリファレンスデザインには、LC(誘導-容量)、 GMR(巨大磁気抵抗)や 各種の光センサ向けに、ブロック図、ユーザーガイド、原材料(BOM)リスト、設計ファイルやテスト・レポートなどが付属されている。

なお、「MSP430FR69x」は量産出荷中で、価格は1000個受注時で4.50ドル。また、開発の迅速な立ち上げに役立つデザインキット「MSP-FET430U100D」は175ドルで発売中。流量計評価キット「EVM430-FR6989」は300ドルで、10月より供給開始の予定。

TIの新たなFRAMマイコン「MSP430FR69x」のイメージ