台湾TSMCが20nm世代の最新プロセスで製造されたプロセッサを米Appleへと供給するという話が話題になっている。すでに出荷が開始されており、おそらくは今秋にAppleが発表すると噂される「iPhone 6」といった未発表の製品群での採用が見込まれている。米Wall Street Journalが7月10日(現地時間)に関係者の話として報じている。これまでiOSデバイス向けのプロセッサ供給は韓国Samsung Electronicsが独占しており、今回の話題はAppleのSamsungへの依存度が下がったことを意味する。これが何を意味し、ユーザーにどのような影響を与えるのかを考察する。
WSJが報じたTSMCによる次世代iPhone向けプロセッサ供給
まずは簡単にWSJの報道内容を整理してみよう。AppleがTSMCと半導体部品供給で提携したという話は昨年2013年から出ており、これは3月にiPhone 6の予想記事でも紹介した通りだ。最新の20nm製造プロセスで生産されるプロセッサは「A8」とみられ、現行の64ビットSoCである「A7」の後継となる。WSJではA8の詳細については触れていないものの、以前までの予想記事での情報を参考にすればCPU部分とGPU部分ともにクァッドコアになるとみられる。A8の出荷時期は今年第2四半期となっており、すでに製造が開始された状態だ。
これだけをみるとAppleがプロセッサ製造で委託先をSamsungからTSMCに乗り換えたような印象を受けるが、実際には「次世代プロセッサの製造」をTSMCに委託したのであって、おそらくはA7やA6といった旧世代のプロセッサはそのままSamsungからの供給が続くとWSJでは説明している。
AppleとTSMCはすでに16nm製造プロセスでのプロセッサ製造に向けた提携を進めているという話もあるが、まずはSamsung 1社への依存体制を見直し、TSMCとのマルチサプライヤ体制へと移行して価格交渉力を持つことが主眼にあるという分析だ。一時期、iOSデバイスの主要部品でSamsung製品が席巻していたほか、完成品のスマートフォン/タブレットの世界ではAppleとSamsungは競合関係にあり、いまなお裁判での争いが続いている。Samsungは部品供給を盾にAppleとの交渉を優位に進めるような直接手段は取らなかったものの、Appleにとって頭痛の種の1つだったことは想像に難くない。