Red Hatの元マネージャをCEOに招聘
こうして、ロシア国内を中心にユーザーを集め始めたNginxだが、創業者のSysoev氏とAlexeev氏はともにエンジニア。営業やマーケティングといったビジネスのキャリアはなかった。そこで、より多くの人に製品を使ってもらうため、Red Hatでアジア・パシフィック担当マネージャを務めた経験を持つGus Robertson氏をCEOに招いた。
米Nginx CEOのGus Robertson氏 |
Robertson氏は、Nginxの印象について「インタラクションが良く、ユーザーコミュニティが活発で、優れたエンジニアがいる企業」と話す。
「AWS re:Inventで、ユーザーの声を直接聞いた。Airbnbの担当者からは、Nginxがなかったら自分たちのビジネスが成り立っていなかった、命を助けられた、と非常に感謝された。そんな企業は滅多にない。一緒にやらないという選択肢はなかった」
Robertson氏は、ユーザーが製品に何を求めるかも直接聞いてまわった。すると、ユーザーのなかには、Nginxと一緒に、OSSのロードバランサHAProxyや、プロキシサーバVarnishを組み合わせてシステムの可用性を高めている企業がいた。
「そうしたユーザーから、Nginxに機能を統合できないか、エンタープライズクラスのサポートサービスはないのか、という要望を多くもらった。もともと、Netflixなど初期からのユーザーにはサボートを提供していた。それらを拡張して、商用版にしたのがNGINX Plusだ」
Nginxから声がけ! 初の海外パートナーがサイオス
NGINX Plusは昨年8月に米国で提供され、10ヶ月で約200社が契約に至ったという。海外初のパートナーとしてサイオスを選択し、日本での展開を進めたのもRobertson氏だ。
「サイオスとはRed Hat時代から一緒に仕事をしており、OSSに強いパートナーだと知っていた。先行して日本の顧客にもサポートサービスを展開しており、海外展開するなら、まず日本と決めていた」(Robertson氏)という。
なお、Nginxという名称は、「エンジン」という言葉の響きの良さに、Linux/Unixなどの「X」を組み合わせて決めたものだという。「名前を決めるまでに1年ほどかかった。"ダイナミック"という言葉も好きで、候補の1つになっていた。製品のなかでもっとも時間をかけたのが命名プロセスかもしれない(笑)」とSysoev氏。
今後の展開としては、機能追加を挙げる。具体的には、スレッドプールのサポート、スクリプティング機能の強化、スクリプトを使ったダイナミックな設定変更などだ。
6月18日には、サイオステクノロジーのバックアップを受けて、日本Nginxユーザ会も発足した。すでに国内でもWeb系を中心に利用が進んでいる。エンタープライズクラスのサポートの提供も開始したことで、国内での普及に弾みがつきそうだ。