VAIOブランドのPC事業を引き継ぐ新会社「VAIO株式会社」の設立会見が1日、15時より開始された。同社代表取締役社長の関取高行氏は、「VAIOはどのような会社になっていきたいのか、どう進んでいくのかをお知らせしたい」として会見を開始。新会社のコンセプトや方向性、新製品について、「本質+α」と「選択と集中」という2つのキーワードを用いて紹介した。

VAIO代表取締役社長の関取高行氏(写真中央)、赤羽良介取締役副社長(写真左)、花里隆志取締役執行役員(写真右)

「本質+α」は、VAIO株式会社のコンセプト。この言葉には「PCの本質を追及し続け、ユーザーに付加価値(+α)を提供する」という意味が込められ、同社の戦略や製品すべてに共通する"フィロソフィー"となる。

VAIO株式会社のフィロソフィーを具現化する言葉「本質+α」

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制約に縛られず、VAIOのDNAを継承する

関取氏は1984年にソニーに入社。エレクトリクス商品全般に携わり、2003年から2006年にVAIOで経営企画部門を担当した。その後ソニー本社で役職を務め、今回VAIO取締役に就任した

VAIOにおける「本質」とは、例えば包丁で言えば「切ること」、掃除機で言えば「ゴミを吸うこと」という、それがなければ成り立たない道具の本質のこと、と関取氏は説明。

そして「本当に必要な機能と性能を持った商品を作る。難しいことで簡単にはできないが、でもやる」と決意を表明し、「VAIOは小さな会社。だからこそ『本質の追求』『制約に縛られない』『VAIOのDNAを継承する』という3点を追求する」と自社のコンセプトを紹介した。

新会社の本社は長野県安曇野市に置かれる。安曇野はもともとVAIOブランドPCの生産拠点で、VAIOの設計製造から量産までの全工程が基本的に集約される。新会社では「組織」「設計製造」「商品」「販路」という会社全体においても、「本質+α」のコンセプトを軸にする。

本質+αのコンセプトは、事業全体に関わるものだ

まず「組織」では、240人という「小さな会社」で、製品作りに関するしがらみや制約をなくし、今やらないことを決めやることに集中するという「選択と集中」を進めるとした。「この規模なら組織と組織ではなく、社員一人ひとり、現場と現場のコミュニケーションがとれる。その中からあっと驚く+αが生まれる」(関取氏)。

「設計製造」については、安曇野で商品企画、設計製造から試作、量産までの全工程を担当。OEMモデルも含めたVAIO全モデルの最終仕上げ、品質チェックの実施を安曇野で行う「安曇野FINISH」(あずみのフィニッシュ)体制で製造に臨む。

全てのモデルで「安曇野FINISH」(あずみのフィニッシュ)を実現

「商品」に関しては、今まで顧客が求めることを気にしすぎたりグローバルの局地的な意見を取り入れすぎたため「全部足して4で割るという感覚。機能過多になっていた」という。商品開発でも「きちんとした選択と集中を繰り返すことで無駄なものが削ぎ落とされ、結果としてシンプルなものが残る。その上で大事な部分をより尖らせると、+αが浮き彫りになった『VAIOらしい製品』が出せる」と説明した。

1日より取り扱うプロダクトと展開する販路

新プロダクトとしてはまず、軽量モバイルPC「VAIO Pro」シリーズ(11.6型「VJP1111」シリーズ/13.3型「VJP1311」シリーズ)、15.5型の「VAIO Fit E」をソニーから引き継ぎ販売する。主な仕様はソニー製モデルとほぼ同等ながら製品から「SONY」ロゴを省き、内部のソフトウェアもブラッシュアップした。

「販路」については、コンシューマ向けには販売総代理店を務めるソニーマーケティングの「ソニーストア」、ソニーストア直営店舗「ソニーストア 銀座」「ソニーストア 名古屋」「ソニーストア 大阪」のほか、e-ソニーショップ、そして一部の量販店を予定する。

ビジネス向けにはECおよび電話(相談デスク)、訪問営業のほか、大塚商会、シネックスインフォテック、ソフトバンク コマース&サービス、ダイワボウ情報システムのディストリビューター4社を通じ、約3,000店の販売店で取り扱う。年間の計画販売台数は、コンシューマ向け・ビジネス向け合わせ、2015年度を目標に30万から35万台を予定する。

今後予定する、いわば"VAIOオリジナル"の新製品について具体的な言及はなかったが、関取氏は「安曇野のひたむきな開発者、技術者によるあっと驚く新モデルを予定している。乞うご期待、です」と自信を見せた。

会見会場で展示していた新しい「VAIO Pro」シリーズおよび「VAIO Fit 15E」。従来「SONY」のロゴが配されていた液晶画面下のロゴスペースは「VAIO」のロゴに変更されたが、キーボード左下の「VAIO」ロゴは従来通り残っている

会見では、インテルの宗像義恵取締役副社長、日本マイクロソフト 業務執行役員 コンシューマ&パートナーグループ OEM統括本部の金古毅統括本部長ら関係者も登壇した。宗像氏は「VAIOのDNAを持った『これがVAIO』といえる製品が市場に登場することを期待する」と述べ、1997年に登場した「バイオノート505」の薄さに感動したという金古氏は「ソニー時代とかわらず、VAIOは大事なパートナー。VAIOの第2章を楽しみにしている」と、それぞれ祝辞を贈った。

インテルの宗像義恵取締役副社長

日本マイクロソフト 業務執行役員 コンシューマ&パートナーグループ OEM統括本部の金古毅統括本部長

1日からはvaio.comのURLで公式サイトもスタート。公式サイトでは、VAIOからのメッセージが表示されたあと、各プロダクトや事業紹介、販売サイト「ソニーストアオンライン」などが案内される。

VAIOのコーポレートカラーは、「理性の青」と「感性の紫」をイメージした褐色(かちいろ)。古来からの伝統色で、音の響きから「勝色」として武士に親しまれてきたという。会社ロゴは、従来製品ロゴとして使用してきた「VAIO」ロゴを継承する。

VAIOのコーポレートカラーは褐色(かちいろ)


「PCはなくならない」 - 関取代表取締役社長

関取氏は会見で、現在のPC市場を成熟した市場と評しながらも「PCはなくならない、という強い信念を持っている」と自身の考えを強調した。

「VAIOは今日スタートを切ったばかりの会社。ソニーと離れて大丈夫なのと不安な人もいるかもしれないが、だからこそ本質+αの原点に立ち返り、愛されるブランドになっていきたい。遠くを見ながら夢も見ているが、まずはしっかりと地に足をつけ、PCの本質を追求し続けることで、新たな+αの提供にチャレンジしたい」と締めくくった。

こんなところまでVAIO! な名刺ケースも配られる

発表会では、プレス関係社向けにVAIOのノートPCを模した名刺ケースがノベルティとして配られた。ケースには天板、底面、側面、内部にいたるまで細かくノートPCを模したデザインが施されており、中にはVAIO発足を記念したメッセージカードが11枚入っていた。11枚目のカードには「困難がなければ、VAIOは進化しなかった。だから、また。きっと。」と記されている。