クラウディアンは2014年6月2日、東京・溜池山王にて「Cloudianセミナー2014」を開催した。

「Cloudianセミナー2014」の様子

クラウド、モバイル、ビッグデータ分析やディザスタリカバリ(DR)、事業継続計画(BCP)といったITトレンドは、いっそうのデータの肥大化を招き、いかに効率よく保管するかという新たな課題を生み出している。この解決策の1つとして考えられている技術が「オブジェクトストレージ」であり、クラウディアンの提供するオブジェクトストレージソフトウェア製品が「Cloudian」である。

今回のセミナーでは、Cloudianのアップデートや新製品紹介のほか、オブジェクトストレージが求められる背景から技術・市場動向に至るまで、統括的な内容の講演が行われた。会場には多くの聴講者が集まり、オブジェクトストレージ技術とCloudianへの注目度・期待度の高さが伺えた。

幅広いストレージ分野で有効なCloudian

クラウディアン株式会社 代表取締役社長 太田洋氏

まず開会に先立ち、クラウディアンの代表取締役社長 太田洋氏が挨拶し、Cloudianの紹介と情報アップデートを行った。太田氏は、Cloudianが登場した2011年には、オブジェクトストレージということばすら広く知られていない状況であったことを振り返った。

Cloudianは、この3年間で、「クラウドストレージ」や「仮想ストレージ」「ビッグデータストレージ」「Amazon S3互換・ハイブリッドクラウドストレージ」「広域・分散ストレージ」などと、さまざまな呼ばれ方・捉え方をされているという。これは逆に、こうしたキーワードに幅広く適用できるストレージであることを示している。

まず、フラットなオブジェクト構造をとるため、階層型ファイルシステムの複雑さや拡張性の問題は存在せず、ファイルの移動や複製が非常に容易である。インターネットとの親和性が高いプロトコル(HTTP REST)を用いるため、クラウドのようなリモートアクセス環境に適している。

さらに、数百台のコモディティサーバをクラスタ化して1台の仮想的なペタバイト級ストレージとして扱うことができるほか、たった2台のサーバから始めることも可能なほど拡張性に富むという特長も持つ。

クラウドストレージ分野では事実上の標準とされているAmazon S3互換のAPIを備えているため、さまざまなサービスやハードウェア/ソフトウェアと連携可能で、ハイブリッドクラウド環境を構築できるのも利点の1つだ。

また、オブジェクトは複数のノードに分散格納されるため、高い冗長性と可用性を実現している。遠隔地のデータセンターを活用してストレージクラスタを構成すれば、DR/BCP対策済みの環境も手に入る。

「Cloudianは、国内外の多くの企業・サービスで採用事例が増えてきています。国内では、ニフティクラウドやCloudn(クラウド・エヌ)などのクラウドサービスのほか、石川コンピュータ・センターのように、医療・自治体向けBCPクラウドサービスのストレージ基盤として採用された例もあります。日本発のCloudianですが、国外展開にも注力しており、欧米・アジアなどでの採用が進んでいます」(太田氏)

Cloudianを容易に導入できるアプライアンス

続いて太田氏は、Cloudianのコアエンジン「HyperStore 4.0」に搭載された新機能について紹介した。

1つは、ストレージ効率を大幅に向上させる「Erasure Cording」だ。通常のレプリケーション方式では、1つのオブジェクトのレプリカを複数のノードに配置するため、そのぶんオーバーヘッドが大きくなる。Erasure Cordingの場合、データ自体を分割して分散格納するため、オーバーヘッドを4分の1に縮めることが可能である。

もう1つの「自動階層化(Auto Tiering)」機能は、Amazon S3やGlacierへのティアリングを、オブジェクトの使用頻度やストレージ容量の状況に応じて実行してくれる機能である。使用頻度が高ければオンプレミスのCloudianへ、使用しないが保存が必要なデータは安価なGlacierへ、データバーストなどで一時的に容量不足に陥った場合には、AWSのようなクラウドサービスを活用するといった具合だ。

Cloudian HyperStore 4.0

「Cloudianのパッケージソフトウェアは、どちらかと言えばプロバイダー市場向けで、IAサーバを用いて自由に構築していただくものです。しかし当社は、エンタープライズ市場も大きな命題として注力しています。一般企業においてもターンキーで運用を開始できるハードウェア・アプライアンスのシリーズを展開しています」(太田氏)

Cloudianハードウェア・アプライアンスは、1U/2Uサイズのオンプレミス環境向けのものから、サービスプロバイダーにも適した5Uの大型機まで、幅広いラインアップがそろっている。さらに今回、太田氏は、まもなくリリース予定のSMB向けの小型モデルも紹介した。

SMB向けエントリーモデル

オブジェクトストレージというとペタバイト級の非常に巨大なものを想像しがちだが、Cloudianは1~2テラバイトのサイズから始めることができるのが特長である。各地にある小規模な事務所に極小型のミニサーバを設置して、ストレージの分散配置やDRを実現する新製品だ。

「Cloudianは、バックアップやアーカイブ、ファイル共有、NASバックアップ向けのストレージ基盤として活用することができます。さらに最近注目されているIoTやM2M、O2Oの分野において、各種センサーやスマートデバイス、ソーシャルメディアから集められる膨大なデータの格納先として、Cloudianを活用する例も出ています」

具体的なCloudianの活用例については、下記のインタビュー記事を参照していただきたい。

NASとクラウドストレージで低コストかつ堅牢なデータ保護を実現
http://news.mynavi.jp/articles/2014/01/24/iodata/
利便性に特化したクラウドストレージサービスをプライベート環境へ
http://news.mynavi.jp/articles/2014/02/24/fileforce/
ビッグデータをリアルタイムに“回す”3つの“仕掛け”とは
http://news.mynavi.jp/articles/2014/04/28/sis/

容易かつ迅速に導入できるCloudianハードウェア・アプライアンス

クラウディアン株式会社 営業ダイレクター 石田徹氏

今回のセミナーでは、営業ダイレクターの石田徹氏による、Cloudianハードウェア・アプライアンスに特化した講演も行われた。

石田氏によれば、これまでCloudianの導入を検討したユーザーから、「どんなハードウェアを選択すべきか」「ハードウェアの調達に時間がかかる」「パラメータをチューニングしたい」「担当者が忙しい」など、さまざまな要望・質問を受けたという。

「当社では、こうした導入のハードルを下げる方法を検討した結果、Cloudianハードウェア・アプライアンスを開発しました。テスト済みのハードウェアをセットとし、最適なチューニングを施した状態で販売するため、購入・導入が非常に容易で、迅速に運用を開始することができます」(石田氏)

Cloudianハードウェア・アプライアンスは、さまざまなソリューション/サービスと組み合わせて提供することも可能だ。例えば、クラウドゲートウェイの「Twinstrata CloudArray」を活用すれば、サーバとの接続はiSCSIを用い、ストレージ(Cloudian)との接続はS3を用いるといったプロトコル変換を容易に実現できる。「Maginatics MagFS」を活用すれば、Cloudianをストレージ基盤とし、複数の遠隔拠点間でリアルタイムなデータ共有を実現できる。

「パッケージソフトウェアとしてもハードウェア・アプライアンスとしても、クラウドバックアップ型NASやクラウドストレージサービス、ビッグデータ解析システムなどにおいても、バックエンドに設置される広域共有ストレージとしてCloudianは最適です」

Cloudianソリューションマップ

Cloudian導入の検討にあたっては、クラウディアンが提供する無償のハンズオン講座や30日間の評価ライセンス、PoC(Proof-of-Concept)ライセンスなどを積極的に活用したい。講座の受講や評価ライセンスの活用3カ月で導入に至った国内ユーザーや、評価ライセンスの利用から2週間で採用に至った欧州ユーザーなど、短期間でCloudianの魅力を確認できた事例も多いためだ。

「用途や規模によって、必要となるノード数やデータ容量は大きく異なります。ベストプラクティスやガイドライン、運用トレーニングや拡張計画などの支援を提供するプロフェッショナル・サービスもオプションで提供しています。ぜひご相談ください」