10年使う前提で、思い切ってキーボードを選ぶ

そこで、Macに対応するキーボードを選ぶことにしました。デスクで利用する前提であるため、この際Bluetoothの無線接続でもUSBケーブルの接続でもどちらでも良い、という前提で。ちなみにキーボードの中にはUSBハブの機能を持っているものもあり、キーボードにUSB機器のケーブルを集めることで、「机に潜りたくない」回で紹介したMOSで固定し本体に差し込むUSBを1本にまとめることができます。

そうしたデスク上のケーブルの取り回しを横目で見つつ、ショップで一連のシーケンスの最後にリターンキーを「ターン」叩き比べた結果、最も好みだったのは、マットに光る黒いコンパクトなキーボードでした。

値札を見ると、2万円以上。パソコンの周辺機器としても高い部類に入ります。とはいえ、パソコン本体が変わっても、むこう10年使えると考えてみるとどうでしょう。ちょくちょく買い換えるよりも、同じ道具をできることなら長く使った方が手に馴染んでくるというものです。

この製品はPFUの「Happy Hacking Keyboard Professional 2」。

筆者が気に入ったのはPFUのHappy Hacking Keyboard Professional 2の墨色バージョン。白い無刻印モデルもあるが、墨は刻印されているものの、光りの加減によってはほとんど刻印が見えない

シリコンバレーでもエンジニアに人気がある製品で、静電容量無接点を採用した高い耐久性と内心地の良さに定評があります。製品名からは、オリジナルが存在し、初代Proがあり、その2代目Proと進化してきたことがわかります。

なお、Happy Hacking Keyboard Lite 2 for Macという、Mac向けの真っ白な製品も5,000円前後で発売されていますが、こちらはメンブレン式で、押し下げ圧がPro 2と比較して10g重たく、タッチもメンブレン式特有のぐにゃっとした感じがしていました。ネットを探すと、Lite 2のメンブレンに穴を開けてタッチを軽くし、Proの感触に近づける、といった改造をしている人がけっこういます。

さてこのキーボード、軽いタッチと深いストロークが非常に魅力的な製品です。MacBook ProやApple Wireless Keyboardと比較すると、キーそのものの厚さも全く違うし、底までの長さも非常に長くなっています。しかし、キーを指で軽く押し下げようとすると、「スコン」という音とともに下まで一気に落ちる感覚。大きな力も必要ありません。MacBook Proのキーボードの軽やかさと同じですが深さがあり、バネの跳ね返りの力を使って指が次のキーへとジャンプする感覚。

こうして何段も連続してジャンプし続けた指が、最後にリターンキーめがけて落ちていき、「ターン」と叩いて再び跳ねる。余計な音はなく、キーを叩いた音だけが響く。これはさすがに、心地よいとしかいいようがありませんでした。気持ちよくて、ずっとキーボードに触っていたくなるほどです。

ただし、このキーボードにはいくつか乗り越えなければならないハードルがあります。

まずは音。MacBook Pro本体のキーボードに比べても、非常に大きな音が鳴ります。確かにこの音がキータイプのテンポを作り、理想的なリターンキーへのアプローチを実現するのですが、家庭や比較的静かなオフィスだと、ちょっと気になる人もいるかも知れません。

続いて、ストイックなキー配列です。筆者はMacBook ProもワイヤレスキーボードもUS配列で使っており、Happy Hacking Keyboardシリーズにも二本用のJIS配列とUS配列がそれぞれ用意されていますが、前述の通り、テンキーもファンクションキーも、矢印キーもありません。そこで、「fn」キーを使い、矢印キーやファンクションキーを別のキーで代替する方式を採っています。使い始める際に、これに慣れる必要があります。

そして、筆者が選んだ墨色は、キートップや側面に印字はあるものの、少し暗くなってくるとパッと見ただけではほとんどその文字を読み取ることができません。記号も含めて、キーの位置を覚えてしまえば必要ないのですが、fnキーと組み合わせたキーのことを考えると、少し不安かもしれません。

理想のリターンキー「ターン!」の瞬間。とはいえ、あまり大きなアクションをするとそれだけストロークのロスになるため、見た目は地味だ

白くて刻印が見やすいモデルもあるのですが、食指は伸びませんでした。