ヤクルトは6月11日、日本人2型糖尿病患者では腸内フローラのバランスが乱れていること、ならびに腸内細菌が血流中へ移行しやすいことを明らかにしたと発表した。

同成果は同社中央研究所ならびに順天堂大学大学院医学研究科・代謝内分泌内科学の佐藤淳子 医師、金澤昭雄 准教授、綿田裕孝 教授、順天堂大学大学院プロバイオティクス研究講座の山城雄一郎 特任教授らによるもの。詳細は米国学術誌「Diabetes Care」オンライン版に掲載された。

ヒトの腸管内には100兆個を超すさまざまな微生物種が複雑な生態系(腸内フローラ)を形成しており、その状況などがヒトの健康に影響を与えることが近年の研究から分かってきた。また、約1000万人と推定されている日本における糖尿病患者の約95%を占めると言われる2型糖尿病でも腸内細菌の関与が指摘されているが、その関係性はよく分かっていなかった。

そこで研究グループは今回、日本人の2型糖尿病患者50名と2型糖尿病に罹患していない被験者50名の腸内フローラの比較を実施したほか、腸内細菌の血流中への移行についての解析を、ヤクルトが開発した「腸内フローラ自動解析システム(Yakult Intestinal Flora-Scan:YIF-SCAN)」を用いて実施した。

その結果、2型糖尿病患者と対照者で腸内細菌の総数に大きな違いはなかったものの、腸内フローラを構成する腸内細菌の割合が異なることが判明した。また、血液中に含まれる生きた腸内細菌を解析したところ、対照者では50名中2名(検出率4%)の血液中に腸内細菌が検出されたのに対し、2型糖尿病患者では50名中14名(検出率28%)の血液中に腸内細菌が検出されたとのことで、これらの結果から、日本人2型糖尿病患者では腸内フローラが乱れていること、ならびに腸内細菌が腸内から血流中へ移行しやすいことが示されたこととなった。

なお、研究グループでは、今回の成果を受けた今後の研究で、腸内フローラの乱れや腸内から血流中に移行した腸内細菌が2型糖尿病に伴う炎症に関与することが示されれば、腸内環境の改善により2型糖尿病に伴う炎症を抑制することが可能になることが期待できるようになるとコメントしている。