Microsoftはセキュリティ対策をさらに進め、「Cyberspace2025」を発表した。文字どおり2025年のサイバースペースに関する予測をまとめたものである。

「Cyberspace2025」のトップページ。Windowsタブレットでも読みやすいレイアウトで構成されている

まずはMicrosoftのGlobal Security Strategy & DiplomacyシニアディレクターであるJ. Paul Nicholas氏はCyberspace2025の概要として、約10年後の未来を以下の3つにまとめている。

たとえば、インドはブロードバンド加入者が3,000パーセントにまで成長し、EUも現在の1億4,300万人といわれる加入者数は、2025年までに1億500万人が新たに加わり、2億4,800万人に増加。その結果としてデジタル格差が新しい局面を生み出すと予想している。

2015年の国際的なインターネット普及予想図

また、約50億人のオンラインユーザーと10億ものネットワークデバイスが世界にあふれ、一年ごとに約1,600万人のSTEM教育プログラム(サイエンスやテクノロジー、エンジニアリング、数学に重点を置いた教育)卒業者が生み出される。そのアンバランスな教育から、技術の才能と世界的な経済に関する激しい競争が発生すると予測。

そして最後は新興国の富は成長し、先進国の成長遅延が発生するという。2025年までに予想される人口統計学をベースにしたものだ断りつつ、先進国における高齢化と出生率低下、新興国の出生率向上と労働人口の増加を元に予測している。

2025年のサイバースペース予想図。今後ISP接続数が増える国や接続提供国に関する数値を図でまとめている

このような背景を元にCyberspace2025は、「PEAK」「PLATEAU」「CANYON」という3つのキーワードを掲げ、サイバーセキュリティ上の課題を検討したものだ。

1つめのPEAKは世界的革新を意味し、ICT(情報通信技術)を実現することで、ガバナンスモデルや経済そして社会を強化する。

2つめのPLATEAUは、古代ギリシアの哲学者プラトンの名前を用いていることから、ラテン語の"status quo(現状)"を示している。政治や経済、社会的な力はテクノロジーの発展を強化すると共に妨げる要素となるため、変わらないと予測したものだ。

3つめのCANYONは、"隔離いた世界"のメタファーとして、効果のない政府方針と規準が根付いた保護主義がテクノロジーの可能性を失敗させる危険性を示すシナリオである。

どちらかといえば暗い未来に聞こえてくるが、Cyberspace2025のテーマはあくまでもサイバーセキュリティのため、各シナリオに沿ったセキュリティ対策を提示している。

1つめは明確な政策の方向を設定し、サイバーセキュリティフレームワークを提供する国/地域のガバナンスモデルを開発しなければならないという。理想的には、オープンなプライバシー保護やフリーインターネットへのコミットと、法律・国際機関・外国政府による調和したルールが必要と予測。その結果グローバル自由貿易を支えることになるそうだ。

2つめは才能開発を有効にし、方策を通じてインフラへの投資や研究開発を行って、才能の流動性と保持のバランスを取ることが必要だという。その際に注意すべきは、イノベーションを維持する能力を持った、現在の労働力に対する教育に重点を置かなければならない点だと述べている。

そして3つめは、国内および国際的の利害関係者の間でサイバーセキュリティリスクに対する管理と調整を、国際的な協力で進めなければならない。そしてサイバースペース内のセキュリティと安定性をサポートする開発を他の政府が実施する必要があると述べた。

シナリオ予測の概要。例えば年間可処分所得は変化が乏しい場合は55億ドルだが、発展した場合は346億ドルまで増加している

10年前を思い起こせば、スマートフォンがここまで普及するとは思わなかったように、10年後の想像は難しい。だが、世界経済や政治情勢に影響されつつも、技術の成長や教育ニーズが重要であることは変わりないようだ。

阿久津良和(Cactus)