――どういうケースで利用されるのでしょうか?

Gould氏 : 先ほど申し上げたとおり、電話さえつながればいつでもどこでも利用できるので、利用シーンは非常に多岐にわたります。ビジネスや生活のほぼすべてのシーンと言ってもよいでしょう。

専門用語が多い特定業界向けのエキスパートも抱えています。公式に発表しているのは、公共セクター、旅行・レジャー、金融・法律、通信、製造業、防衛・司法、自動車、テクノロジー、ライフサイエンス、政府ですね。

本社のある英国では、国税庁(税務庁)などで公認サービスとして利用されています。英語を話せない移民が税務庁に来た際に、電話口から通訳を頼んでいます。同じように移民向けのサービスとして米国のニューヨーク教育庁などでも使われていますね。

印象的な事例としては、アフガニスタンで国際連合の兵士が現地の住民と電話通訳でコミュニケーションをとって一緒に仕事をしていたという活用例があります。また、医師が不足する地域で先進国の病院と電話をつなぎ、電話通訳を通じて出産の指導を行ったということもありました。また、ある国では首相の通訳として利用された実績もあります。

私個人としても、先日、中国でタクシーに乗った際に利用しました。英語の名刺を渡したところ、逆さにして読もうとするくらい英語が苦手な運転手で、住所を見せても理解してもらえませんでした。どうしても意思疎通がうまくいかなかったので、電話通訳を介してコミュニケーションをとり、なんとか時間通りに現地に到着できました。

――創業30年ということですが、振り返ってみて、どう感じていらっしゃいますか?

Gould氏 : 長い道のりだったという印象は、あまりないですね。むしろ、これからの数年のほうが、チャレンジの多い濃密な時間になるような気がしています。

というのも、言語テクノロジーはまだまだ発展しなければならない分野です。インターネットの普及でビジネスのグローバル化はずいぶん進みましたが、最後の障壁として言語問題が残っています。

ビジネスを各国で拡大するうえでは、ローカライゼーションは絶対条件でしょう。当社は、その一翼を担える技術を持っているという自負があります。

――最近では、スマートフォンに翻訳アプリが搭載されており、多くの人が翻訳機を手にして移動しています。そうした状況についてはどうお考えですか?

Gould氏 : 現段階の機械翻訳は、翻訳精度に問題があるなど、成熟していない印象です。弊社の場合、実際に人間が翻訳することでその点を補っています。通訳も翻訳も、正確さは非常に大切な要素です。

当社の場合、新たに登録してくださった通訳者に対しは、定期的なトレーニングを受けてもらっています。業界ごとのエキスパートも用意していますし、提供するサービスの質には自信があります。

――今回のアジア地域での事業拡大は、通訳サービスに重点を置いていると考えてよろしいでしょうか。

Gould氏 : そうですね。具体的には、東京・北京事業所にて行っているカスタマーサービス業務を、週末を含めた1日12時間対応にして、アジア全域での通訳サービス事業の拡大を目指します。

アジアの中でもこの2カ国は、特に他国との貿易などのビジネスが盛んです。そこには通訳が必要な場面が多く存在します。当社がお役に立てる機会も多いはずです。

また、日本に関しては、2020年に開催される東京オリンピックも意識しています。

――東京オリンピックには、どのように関わっていきたいと考えていますか?

Gould氏 : オリンピックの運営に携わる公共機関や民間企業はもちろん、試合観戦のために来日する観光客にも利用してもらいたいですね。

当社はロンドンオリンピック、北京オリンピックにおいて通訳サービスを提供した実績がありますので安心して利用してもらえると思います。

試合会場などへの通訳者派遣だけでなく、電話通訳サービスも積極的に提供したいです。通訳サービスは、病院や警察、ホテル予約など、個人法人を問わずに利用してもらえます。例えば、パスコードの記載されたプリペイドカードのようなものを購入することで、観光客でも手軽に電話通訳サービスが受けられる、みたいな構想もあります。

オリンピックに関しては、もちろん、大きな仕事がしたいという想いがあります。通訳サービスだけでなく、東京オリンピックの公式サイトへの翻訳サービスなども手がけられればいいですね。

――ありがとうございました。